ルーアン美術館で「アートと素材、お触り下さい」展。えっ!

Paris 2022.04.04

パリのサンラザール駅から1時間20分、駅から徒歩5分で到着する行きやすいルーアン美術館。そこでユニークな展覧会が3月26日から始まった。美術館では基本的に作品に触れることがことは禁じられていて、「prière de ne pas toucher(触らないで下さい)」と書かれている。それをもじって、この展覧会は「prière de toucher(触ってください)」というタイトルなのだ。目が不自由な人、盲目の人だけが対象ではなく、誰でも体験できる。しかも、これまでしたことのない体験が。アイマスクをつけ、目ではなく、手と指で展示作品を鑑賞するのだ。一目瞭然ということばがあるが、これまで展示されている芸術作品を見て、その題を見て、わかった!という気になっていただけだったのではないか。そんな気にさせる、新しい感覚による鑑賞法を我々は体験するのである。大理石とブロンズの違いを手に感じ、また、時には彫刻家の指の跡に気が付いたり……。

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手の感覚を頼りに作品を鑑賞するという新しい体験ができる。image©️Lyon MBA  -photo Stéphane Degraisse

最初のスペースには、カーテンで隠された中にジャン=バティスト・カルポーの『笑う女』(1870年)が配置されている。これはカーテンの2カ所のスリットから手を入れて、手で彫刻を触れることに慣れるための装置。目をアイマスクで隠しても、隠さなくてもいいので、まずは両手で作品の鑑賞を試してみよう。

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左: カルポーの『笑う女』。カーテン越しに手で触る練習を。photo:Mariko Omura 右: この展覧会は子供たちも大歓迎。 image©️Lyon MBA - photo Stéphane Degraisse

モンペリエのファーブル美術館による企画で、5つの美術館が参加している巡回展である。2019年にリヨン美術館で開催された後、新型コロナ感染症予防対策として美術館は閉鎖されていて、やっと今年ルーアン美術館での開催が実現したのだ。この後、2024年までの間にリル、ボルドー、ナントを巡回する。10点近い展示作品のオリジナルは、ファーブル美術館と参加美術館から、彫刻の歴史を物語るという視点と、素材のバリエーションということから選ばれているそうだ。会場内で来場者が触れる彫刻は、コンピューターを用いて作られた精巧なレプリカである。

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左・中: モンペリエ美術館所蔵のジャン=アントワンヌ・ウードン『冬あるいは寒がりの女』(1783年)のレプリカ。女性のポーズはともかく、水瓶のひび割れでも寒さを物語っていることまで、目で見た時に注意が向くだろうか……。オリジナルは大理石。 右: エミール=アントワンヌ・ブールデル作『雄弁の顔』(1913〜23年)。オリジナルはブロンズ。実物以上に大きな頭部を触ると、頬骨があがり、唇が開いていることから、演説中であることがわかるだろう。photos:Mariko Omura

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会場では目を隠してさまざまな素材を手で感じることができる。photos:Mariko Omura

会場の展示作品については、オーディオガイドが用意されている。展示彫刻のひとつひとつの作品について作者についての解説があり、どう触ってゆくか、何を感じるのかといった導きを耳にしながら、目をマスクで覆って鑑賞するのだ。なお、会場ではアイマスクを着けた人に着けない人が付き添う、という形となる。ひとりの来場でも会場には付き添いの担当者がいるそうだ。目の不自由な人は盲導犬とともに来場可能とのこと。

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中庭にも作品を展示しているルーアン美術館。カルダーのモビールが置かれた広場に面している。photos:Mariko Omura

『L’art et la matière,Prière de Toucher』展
開催中~9月18日
Musée des Beaux Arts
Esplanade Marchel Duchamps
76000 Rouen
開)10:00~17:15
休)火
料:無料
https://mbarouen.fr/fr

editing: Mariko Omura

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