ショーメの『ヴェジェタル』展で、植物の美を散策する。

Paris 2022.07.13

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じっくりと観察し、フォルムだけでなくその生命感をとらえて、植物の美しさを永遠に残すショーメ。ジュエリーは左からカーネーション、ドングリ、鳥の羽根。

ヴァンドーム広場のジュエラー、ショーメ。その創造にインスパイアを与え続けている自然を芸術的、学術的な面から讃える展覧会『Végétal -ヴェジェタル-』をパリ6区のボ・ザール校にて9月4日まで開催している。世界中の美術館からのアートピースなどを含む約400点の作品が展示され、そのうちジュエリーはショーメのアーカイブとほかのメゾンからの合計80点くらいということからもわかるように、これは単なるジュエリー展を超え、美に昇華した自然を讃える展覧会として企画されたものだ。まるで巨大な植物図鑑の中に入り込んだような気にさせる展覧会である。絵画、デッサン、オブジェ、標本、写真、テキスタイル……古くは5000年前に遡る作品というバラエティ豊かな展示で、ル・コルビュジエ、エヴァ・ジョスパンを始め20~21世紀の作品も含まれている。点数が多くないとはいえ植物をモチーフにしたジュエリーは宝飾芸術を愛する人々を驚かせ、うっとりとさせる美しさをたたえた例外的な品ばかり!

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地上階では人間の手が関わらない野生の自然、上階の2フロアでは人間の手が加わった自然を取り上げている。2フロアを繋ぐ階段では、英国の植物学者で写真家のアンナ・アトキンスによる植物のシアノタイプの写真を展示。photo:(中)Mariko Omura

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1780年創業のジャン・エティエンヌ・ニトの時代からショーメにとって植物は常にメゾンのクリエイティビティを刺激する存在で、植物学者的視点で視線を自然界に向けてジュエリーを創造し続けている。そのショーメがボ・ザールの協力、自然史博物館、ルーヴル美術館、オルセー美術館の援助を得てこの展覧会を実現したのだ。キュレーションを任されたマーク・ジャンソンは、かつて国立自然史博物館のハーバリウムの責任者を務め、現在はモロッコのマラケシュにあるマジョレル庭園の植物学ディレクターである。この展覧会について、彼はこう語った。「ショーメの鋭い洞察力と膨大な遺産を生かし、いまの時代にふさわしい大胆な方法で自然を称賛するのです」と。

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野生の自然からテーマ「森」の会場。左:キヅタのジュエリー。ル・コルビュジエによるキヅタの葉の5点のクロッキーも展示されている。 中:アンタイユのメダイヨンとイチョウのジュエリー。 右:植物のジュエリーを語るのに不可欠なルネ・ラリック。photos:Mariko Omura

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テーマ「潮間帯」。左:潮が満ち引きする海の世界が青い空間に広がる。 中:アクアマリンの石をくわえているのはジョルジュ・フーケによるとされる海龍のブローチ(1900年ごろ)。日本のアルビオン・アート・コレクションより。 右:ドム・ロベールのタピスリー『人魚たちの庭』(1960年)とジョゼフ・ショーメによる1920年のパールのネックレス。photos:Mariko Omura

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テーマ「アシ原」。昆虫、ナンフェア、鳥……沼地の物語だ。ジュエラーのピエール・ステルレがショーメのためにデザインしたカワセミのブローチ(中)は見逃せない。1階の散歩はクロード・モネの睡蓮で終わる。上階では彼が描いたアイリスが展示されている。photos:Mariko Omura

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サブタイトルに“エコール・ドゥ・ラ・ボーテ”とつけられた展覧会の会場は、上下2フロアに分かれている。下のフロアが扱うのは野生の自然。テーマは「洞窟」「森」「潮間帯」「アシ原」と続く。上のフロアが扱うのは人間の手が介入した自然で、展示作品保護のため照明が落とされた会場には静けさが漂い、図書館的雰囲気だ。ここのテーマは「人間が手を入れた中世の領地」とされ、1万年前に遡る農業の開始以降の穀類、ブドウ、野菜がモチーフ。それに続くのは、カーネーション、パンジー、チューリップ、バラといった花をモチーフにした豊かな展示作品が彩る「人間が手を入れた庭」。最後の小部屋は「ミル・フルール」と題されていて、視覚的にも内容においてもゴージャスな締めくくりである。

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左:18世紀の穀類の標本は自然史博物館から。 中:フランソワ=ルニョー・ニトによる麦穂のティアラ(1811年頃)©️Claessens & Deschamps-Chaumet 右:ジャン・ヴァランティン・モレルによるブドウのジュエリー。1850年頃。会場中央にはサンリスのセラフィーヌとして知られるセラフィーヌ・ルイによる絵画『ぶどう』(1930年)が。

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左:クリスチャン・ディオールによる鈴蘭を刺繍したクチュール・ピース。 中:ギュスターブ・カイユボットの絵画『白い菊』(1893年)。 右:Nitot & Filsによる彫刻的な紫陽花のブローチ(1807年頃)。photos:Mariko Omura

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最後の小部屋「ミル・フルール」。左: 上はFondazione Pistoia Museiが所蔵するウールとシルクで織られたタピスリー『Millefiori』(1530〜1635年)、下は鉱物のマルケトリーによる花々のテーブル。photo:Mariko Omura 右:ジュゼッペ・アルチンボルドの『春』と『夏』(1573年)。

『Végétal - l’ecole de la beauté』展
開催中~9月4日
Beaux-Arts de Paris
13, quai Malaquais
75006 Paris
開)12:00~20:00
休)月火
料:2ユーロ、5ユーロ、10ユーロ
予約:www.chaumet.com/fr_fr/vegetal

editing: Mariko Omura

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