オ・プティ・リッシュでオーセンティックなおいしい時間。
Paris 2022.07.21
オ・プティ・リッシュ。日本人がパリのレストランに思い描くすべてが外観にもテーブルの上にも。photos:Mariko Omura
ナポレオン3世による第二帝政が始まった年、パリ9区に著名なオークションハウス「Drouot(ドゥルオー)」が生まれた。その2年後の1854年、お向かいにレストランの「Au Petit Riche(オ・プティ・リッシュ)」がオープンした。レストランができたル・ペルティエ通りにはパリ・オペラ座があり、オ・プティ・リッシュは当時の社交界、演劇界、芸術界の人々が集う流行りの店となった。ブルジョワ階級が台頭し贅沢を享受し始めていた時期で、独立したルイ・ヴィトンが初めてブティックをパリに開いたのもオ・プティ・リッシュと同じ1854年のことだ。
168年前に生まれたオ・プティ・リッシュはいまも健在である。火事によって1880年に建て直されたレストラン内、ベル・エポックが香る内装もそのままに常連や観光客を迎えている。彫り模様を入れたガラスの仕切り、赤いベンチ席の上の荷物置き用の真鍮のバー、ビストロおなじみの丸いランプシェード、モザイクタイルの床、19世紀の絵画……レストラン内はいくつかのスペースに分かれ、常連たちは自分のお気に入りの場所へと。
左: バーカウンターのある最初のスペース。 右: 奥の広いスペースまで複数の小部屋が続く。photos:(左)D.R、(右)Jordan Sapally
---fadeinpager---
昔ながらといっても、歴史を持つメゾンの秘訣は根をキープしながらも刷新を続けること。オ・プティ・リッシュも同様で、いまの時代に合わせ、最近はテラス席を設けアフターワークのアペリティフの提案を始めた。ロワール地方のワインのセレクションに長けたレストラン。パテ・アン・クルートやチーズの盛り合わせなどとワインを、テラス席や店内のバーカウンター、あるいはその裏手の改装が終わった小部屋の3つの場所がこのために用意されている。
アペリティフは18時30分〜20時。ワインのお供に、パイ皮包みのパテ、チーズやハム類の盛り合わせなどを味わって。photos:Alice Huynh
こんな楽しみ方もいいけれど、このレストランにたまにしか来られない観光客なら、素晴らしいインテリアを料理と一緒に堪能できるランチかディナーの時間を、ワインとともに過ごしてみたいものだ。オ・プティ・リッシュでは昔からずっとメニューにあるクラシックな料理も、いまの時代に合わせて軽めに仕上げられている。季節の素材にこだわるのはもちろんのこと、近隣の産地という地球への配慮も忘れていない。フレンチ・ガストロノミーを支えるサヴォワール・フェールを駆使し、かつ味も良い料理に出合うのは、パリに山ほどのレストランがあっても簡単ではないだけに、このオ・プティ・リッシュは貴重な存在である。
前菜にはビストロ料理の定番のウフ・ミモザ(左)もあれば、ヨーグルトをベースにした複数色のビーツのサラダ(右)という最近の傾向を取り入れた前菜も。フォアグラ、エスカルゴ、レンズ豆のサラダなどもあって選択が難しい。photos:Mariko OMURA
左: 蒸したタラと野菜のアイオリソース。ニンニクがほどよく利いた軽いマヨネーズソースが絶品だ。26ユーロ 右: 魚や肉料理に交じってメニューのメインには、フライドポテトとサラダがセットされたクロック・ムッシュ(19ユーロ)も。photos:Alice Huynh
デザートはシャンティクリームを添えたババ(9ユーロ)をはじめ、クラフティやクレームブリュレなど。ランチセットは前菜+メインかメイン+デザートで26ユーロか、前菜+メイン+デザートは31ユーロ、これに250mlワインとミネラルウォーターのハーフボトルとカフェをセットすると37ユーロ。日替わりのメインは曜日によって23〜28ユーロ。photo:Aurore Deligny
---fadeinpager---
4つの個室とトイレのある上のフロアへの階段の壁をぎっしりと埋めるのは、店を訪れたセレブリティたちの写真だ。これまた昔ながらである。黒い蝶ネクタイとエプロンをつけたギャルソンたち、仕立てのよいスーツに身を包んだマネージャーのダヴィッド・トマシニ。彼らの行き届いた感じの良いサービスも、料理、内装にプラスしておおいに評価したい。
古き良き時代の内装は、ウディ・アレンの映画『ミッドナイト・イン・パリ』の世界に入り込んだみたい。photos:Mariko Omura
25, rue Le Peletier
75009 Paris
営)12:00~14:30、19:00~22:30
休)日(夏季は土、日)
Tel 01 47 70 68 68
www.restaurant-aupetitriche.com/en/
Instagram: @aupetitriche
editing: Mariko Omura