夏の太陽が輝く、エクス・アン・プロヴァンスを訪ねて 建築+アート+自然+食+ワイン=シャトー・ラ・コストへ行こう。

Paris 2022.08.05

直島に地中海美術館が2005年にオープンした頃から、フランス人観光客たちは交通の不便にもめげることなく直島を目指すようになった。島を歩いていてアート作品に遭遇! フランスにこんな場所はない、と興奮し、口コミで直島の名がパリのアート好きの間で広まったのだ。まだ日本でも直島が何か知らない人が多かった時代である。

エクス・アン・プロヴァンスから約15kmの村ル・ピュイ=サント=レパラードにあるシャトー・ラ・コスト。直島を思い出させる場所である。といっても、こちらは島ではなく広大なブドウ畑が舞台。ビオ栽培の130ヘクタールの畑とアート、建築が共存しているのだ。一般交通機関で行きつける手段はないけれど、シャトー・ラ・コストは南フランスを訪れる機会があったら、タクシーを使ってでも一度は歩いてみたい21世紀の名所といっていいだろう。

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安藤忠雄によるセンターの建物(2011年/写真左)と建物内からも眺められるルイーズ・ブルジョワの『Crauching Spider』(2003年/写真右)。オープンエアのアートセンター内、建築物とアート作品の多数の展示の中には見逃すものもあるかもしれないけれど、このふたつを逃すことはまずないだろう。photos:Andrew Pattman (右)©️ADAGP Paris, The Easton Foundation New York

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シャトー・ラ・コストのワイン。敷地内、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、シャルドネ、グルナッシュなど7品種のブドウとオリーブ畑が広がる。アクセスはエクス・アン・プロヴァンス市内からタクシーで20〜30分(約30ユーロ/要確認) photos:(左)Richard Haughton、(右)Mariko Omura

1682年に歴史を遡るシャトー・ラ・コストのワイン。21世紀の始めにシャトーのオーナーとなったのはアイルランドの実業家パトリック・マクミランで、彼はワイナリーの建築をジャン・ヌーヴェルに任せた。これが始まりだ。古い醸造庫のひとつは、ジャン・ミシェル・ヴィルモットによってアート展示会場へと変身。ブドウ畑の中の音楽シアターがフランク・ゲーリーによる建築で……。このオープンエアのアートセンターの一般公開が始まったのは約10年前である。その際、来場者を迎え入れるレストラン、書店を備えた建物、チャペル、そしてコンクリートのゲートが安藤忠雄によって設計された。敷地内、それ以前に造られた彼の「Four Cubes」(2008年)も見学できる。敷地内には杉本博司、ルイーズ・ブルジョワ、アレクサンダー・カルダー、ソフィ・カル、アイ・ウェイ・ウェイ、ジャン=ミシェル・オトニエル……日本でもおなじみの現代を代表するアーティストたちの作品が年を追うごとに増えている。野菜畑はフランス屈指の造園家ルイ・ベネシュによるもので、そこにはジャン・プルーヴェのプレハブ建築が並んでいる。運よく見ることができたという声もあるが、野菜畑はプライベートスペースだ。

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左: ジャン・ヌーヴェルによるワイナリー。 右: リアム・ギリック 『Multiplied resistance screened』(2010年) photos:Andrew Pattmann

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左: フランク・ゲーリー『music pavillon』(2010年) 右:隈研吾『Komorebi』(2017年) photos:(左)Andrew Puttman(右 )D.R.

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安藤忠雄の『Pavillon Four Cubes to Contemplate our Environment』(2008年)の外観と4つのキューブが並ぶ内部。photos:(左)Andrew Pattman、(右)Mariko Omura

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左から、Guggi『Calix Meus Inebrians』(2009年)、シーン・スキャリー『Wall of Light Cubed』(2007年)、リチャード・セラ『Aix』(2008年)

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左から、ペール・キルケビー『Labyrinth』(2018年)、アレクサンダー・カルダー『Small Crinkly』(1976年)、トゥンガ『Psicopompos』(2011年) photos:(左)D.R. (中・右)、Mariko Omura

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昨年はリチャード・ロジャースの遺作となった宙に浮かぶようなガラス張りの展示会場が生まれ、2022年はブラジルの建築家オスカー・ニーマイヤーのこちらも遺作となったパビリオンが完成した。内部で開催されるアート展のトップバッターは英国のアニー・モリスによる彫刻だ。石膏とピグメントを混ぜた砂を素材に、女性の身体、妊婦のカーブを描いた作品群である。レンゾ・ピアノによる展示パビリオン(2017年)で8月15日まで開催されているのはボブ・ディランの『Drawn Blank in  Provence』展で、フランスで初めての彼の絵画展である。ピカソ、シャガール、ピサロ、ルノワールといった20世紀絵画の巨匠たちの作品と対峙させての展示だ。また、ディランによる彫刻Rail Carの常設展示も今年から始まった。中に入ることもできる鋳鉄の列車ワゴンで、その一部はディラン本人が鋳造したとか。

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今年オープンしたオスカー・ニーマイヤーによる展示会場。初の展覧会はアニー・モリスの彫刻展。photos:Mariko Omura

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左: ブドウ畑の真ん中に、レンゾ・ピアノによる展示会場。ほかの建築物同様、全景を眺めるには近付かず遠くから。 右: 内部で開催されているボブ・ディランの絵画展。photos:(左)Stephane Aboudaram、(右)Mariko Omura

チケット購入時に渡される地図に記されているアート作品と建築物は合計41カ所。希望者は予約制の2時間のガイドツアー(英・仏語)に参加できるし、自由に歩くことも可能である。敷地内のアート、建築物をもれなく鑑賞し、目を自然で和ませて、レストランで食事をして……とフルで楽しもうとすると2時間以上が必要だ。木陰はあるものの夏の日差しは強い。歩きやすい春や秋の訪問を考えるのがいいだろう。

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シャトー・ラ・コストはワインノシャトーである。ワイナリーの訪問と試飲もでき、併設のブティックではもちろんワインの購入が可能だ。ここで販売されている珍しい発泡ロゼのLa Bulleが気になる! レストランは敷地内に3カ所あり、高級アルゼンチン料理レストラン「Francis Mallmann(フランシス・マルマン)」のペルゴラはダニエル・ビュランによるものだ。せっかくここまで足を運んだのだから、シャトー・ラ・コストを存分に味わいたいという人はスパとレストランを備えた「Villa La Coste(ヴィラ・ラ・コスト)」に宿泊するのもいいだろう……これは予算が許すなら、の話だが。ちなみに京都・祇園のホテル「ザ シンモンゼン」はこのヴィラ・ラ・コストの姉妹ホテルである。

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アルゼンチン料理のレストランはシェフの名を冠し、「Francis Mallmann Provence」。ダニエル・ビュランによるペルゴラだけでなく、調理場も見事である。photos:Mariko Omura

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地元の自然素材を用いて建築されたヴィラ・ラ・コストは28のスイート・ヴィラで構成されている。そのうち10のヴィラはプライベートプール付きだ。photos:Richard Haughton

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スパ、レストラン、プール、庭、ロビー・ギャラリーを備え、寛ぎの宿泊を提案する。リュベロンの眺めに目が癒やされる。宿泊予約はcontact@villalacoste.com photos:Richard Haughton

なお南フランスにはリュベロンにラコストという名の街がある。ここにもシャトーがあるが、こちらは18世紀に『悪徳の栄え』を書いたサド侯爵が暮らしていた城だ。ラコストのシャトー(Château de Lacoste)とシャトー・ラ・コスト(Château La Coste)を混同しないように。

Château La Coste
2750, route de la Cride
13610 Le Puy Sainte Réparade
Tel 04 42 61 89 98
www.chateaulacoste.com
開)10:00~19:00(3月1日〜11月1日、11月2日〜2月29日の土日)、10:00〜17:00(11月2日〜2月29日)
料)15ユーロ 〜。
予約 reservation@chateau-la-coste.com

 

editing: Mariko Omura

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