9月のパリ、街中にデザインがあふれる 再生/仏革命下に生まれた磁器工房クルゥーヴルに救世主現れる。

Paris 2022.09.19

9月のパリは月末のファッションウィークに先駆けて、デザイン&インテリアでスタート。8日から12日まではパリ郊外で恒例の国際的トレードショー、メゾン・エ・オブジェが、そして同時に始まったパリ・デザイン・ウィークは9月17日まで開催された。これには多くのギャラリーやブティックが参加し、パリ市内がデザイン色に染まった。


磁器工房クルゥーヴルは1789年からの歴史を閉じざるをえなくなったところを、若きソフィー・サラジェが2021年に登場し、現代に蘇らせた。クルゥーヴルというのはアリエ地方の村の名前なのだが、蛇を意味する。村でカオリンの層が見つけられた際に、レヴィス侯爵とアンドレ・ドゥ・シネティによって磁器の工房が作られたのだ。それは1789年、パリとヴェルサイユが騒ぎ立つフランス革命の年だ。クルゥーヴルがほかの工房と差をつける特徴は磁器のレリーフと色。1万㎡の工房に残されていた35万の型と6500点の磁器はフランスの装飾芸術の歴史を辿れる貴重な財産である。

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クルゥーヴル工房を復興したサラ・サラジェ。アートディーラーからの転身だ。

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フランス中央部に位置するアリエ県クルゥーヴル村に生まれた工房。その地には「蛇が振り落ちる地に国があり、磁器が生まれ、芸術が生きる」という古い言い伝えがあったそうだ。創業の1789年から20世紀半ばまでの多数の型が残されている。

長い歴史の間、19世紀は白を専門にし、1930年代は当時のアーティスティック・ディレクターのアルベール・ローランの指揮のもと、より芸術的でリュクスな品を製造するようになったことから国際的名声を得たそうだ。コラボレーションも行われ、その中にはジャン・コクトーの名も。当時は工房に170名の職人たちが働いていたほど栄えていた。サヴォワールフェールの継承を目指し、現在ソフィーは昔を知る7名の職人たちと働いている。新しい章を開くにあたり彼女は工房にクリエイションスタジオを設け、デザインウィーク中にふたつのコレクションを発表した。ひとつは1930年代のモチーフを生かしたコレクション「Les Perles(レ・ペルル)」。パールと命名されているように小さな粒の連続が特徴である。その姿はウニを連想させるけれど、とても優雅だ。もうひとつは「Les Ecailles(レゼカイユ)」。こちらは鱗を意味し、工房の名前にオマージュを捧げる新しいコレクションである。バロック調の持ち手の水差しはブロンズ職人との共同制作で、水差しといえどアートピース的だ。

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コレクション「レ・ペルル」より。photos:(左・右)Raphaele Kriegel

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左::蛇を意味する村名にちなんだデッサンのサイン。 中・右:蛇の鱗を名前にとったコレクション「レゼカイユ」はブロンズ職人との共同制作だ。

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クルゥーヴル村のアトリエから生まれる日常使いのうつわの販売が待ち遠しい。

こうした例外的な仕事だけでなく、新生クルゥーヴルは日常使いのコレクション「Lucy(ルーシー)」も発表。これらは工房の色付け師の仕事が生かされたプレートだ。優しい色なので、色違いをミックスさせて使う楽しみが待っている。近々パリにブティックもオープンするということなので、その日を楽しみにしよう。

editing: Mariko Omura

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