2023年春夏パリ・コレクション、気になるエトセトラ セドリック・グロレのパティスリーと3.パラディのショー。
Paris 2022.10.17
オペラ通りで行列ができるパティスリーとして有名なセドリック・グロレ。9月27日はちょっと様子が違って、店の周りにはカメラを抱えた人たちが集まった。LVMHプライズの2019年度のファイナリストに選ばれている「3.Paradis(トロワ・ドット・パラディ)」のショーが、この店の2階ティールームにて開催されたのだ。エムリック・チャチュアがカナダのケベックで2013年にスタートしたハイエンドでパリシックなストリートウエアのブランドの、初のレディスコレクションの発表である。自由と希望と統一をすべての人々にもたらすことを使命とするブランドにとって、ごく自然の進化としてレディスが生まれたと、彼は説明する。
左: 2階でのショーに際して、セドリック・グロレのブティック1階に、3.Paradisのスローガン“Freedom Hope Unity”が掲げられた。 右: 各人のテーブルにはセドリック・グロレの人気作「Fleur de Vanille」(写真手前)を含む4品が用意された。photos:Mariko Omura
人気あるブランドだけあって、ショーに集まった大勢が3.パラディを着ている……白い鳩がブランドのシンボルなのでわかりやすい。この初のレディスのショーでも黒い透明素材のロングドレスに黒い鳩が飛翔する連続モチーフのシアーの黒いロングドレスがファーストルック。その後も23の全てのルックにレースのモチーフ、プリント、アプリケ、デニムの模様とさまざまなテクニックでコロンブがちりばめられていた。キッチュになることなく、どのアイテムにもテクニックを違えて鳩を巧みに溶け込ませるクリエイションはなかなかのもの。こぢんまりと効果的に構成され、誰もが自分のコロンブを見つけられるコレクションだ。
photos: (上段・下段)3.Paradis、 (中段)Mariko Omura
ティールームのテーブルの上、セドリック・グロレのパティスリーに添えられた鶴ならぬ鳥の折り紙。中には「パラダイスから下りてきた鳩のダンスが、この世を喜びで輝かせる」というメッセージが。その詩情が感じられるメンズもミックスされたショーで、本物のコロンブが登場してショーを締めくくった。
さて、ここで気になるのはなぜショーがここで開催されたのかだ。エムリックの回答は次のとおりである。「この2023年春夏コレクションは僕の子ども時代に目を向けたものなので、セドリック・グロレで、と決めました。というのも、両親は子どもたちが学校で良い点数をとると、そのご褒美にパティスリーを買ってくれてたんです。スイートなパリでの子ども時代を思い出させる場所であり、またとてもポジティブな気持ちをくれる場所がお菓子屋さんなので、それをショーを見に来てくれる人たちに伝えられたらって思ったので、ここに。それにこのセドリック・グロレ・パリは僕がパリに来た時によく行く場所なので、彼の素晴らしい作品をみんなに分かち合うのは僕にはすごく大きな喜びでもあったからです」
左: ラストルックはファーストルックの白バージョン。 右: ブランド創設者のエムリック・チャチュア。photos:3.Paradis
editing: Mariko Omura