2023年春夏パリコレクション、気になるエトセトラ クレージュのデフィレ、丸い砂浜はいつしか巨大な砂時計に。
Paris 2022.10.19
パリ郊外。クレージュの2023年春夏コレクションの発表会場は、今回もまた一般交通機関利用者にはいささか不便な場所が選ばれた。努力の甲斐あり!というショーが期待できるので、人々は胸を弾ませて会場に向かってしまうのだけれど……。
左: パリコレ大活躍のモデル、ベラ・ハディッド。 右: ニコラス・デ・フェリーチェ。
クリエイティブディレクターのニコラス・デ・フェリーチェが会場のセットを依頼したのはフランス人アーティストのThéo Mercier(テオ・メルシエ)。直径10メートル近くある環状のビーチの砂を素足のモデルたちが歩いてゆく……その数分後、ふと気がつけば高い天井から一直線を描いて砂が降り、ビーチに砂山を作っている。さらに時が少し流れ、砂山は姿を消しビーチにできた巨大な穴に向かって砂が降り注ぎ、徐々に力強さを増して太い砂の束のようになり……モデルたちは未来を見据えるかのように前に視線を向け、靴を手に持ち、コートを肩に抱えてその砂時計の周囲を進んでいったのだ。約10分のショーが終わった後も降り続けていた砂。ちなみに100%再生可能な材料から得られたナッツの殻でできた植物性の砂だそうだ。
photos:Mariko Omura
時間の経過の比喩としてセットされた砂時計。ニコラスのコレクションは、経過した時間、未来への視線、過去への振り返りという説得力ある概念に着想を得ている。砂と波は進化を表現し、デニムは洗われて、クレージュおなじみのダブルギャバジンは時の経過でほつれて、というように。職人技とテクノロジーの融合はたとえばスキューバ素材をクチュール的技術で形にするといった服に見られ、また1974年のジッパー付きドレスや1981年のウエットスーツなどアーカイブからのアイテムは現代的に解釈されて。ニコラスは未来へのアイデアを探すように過去を振り返り、そしていまを想像するのだ。白、黒、ブルーマリン、ベージュ、デニムのブルーといった色がメインの中、一瞬、太陽のようなオレンジのルックが登場した。フレッシュで現代的なコレクションだった。
editing: Mariko Omura