2023年春夏パリコレクション、気になるエトセトラ 雨にも負けず開花した、セシリー バンセンのロマンティックな夢。

Paris 2022.10.20

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左:ショーのフィナーレ。右:セシリー・バンセン

コペンハーゲンからショー発表の場を1年前にパリに移したデンマークのブランド「Cecilie Bahnsen(セシリー バンセン)」。2015年にセシリーが創設したブランドで、2017年にはLVMHプライズのファイナリストに選ばれた注目の若手デザイナーのひとりである。2023年春夏コレクションの発表会場は貨幣博物館の中庭で、ここがショー会場として使われたのはこれが初めてとのこと。中庭にはセシリーの長年のコラボレーターであるMoonによるインスタレーションで、250本の吹きガラスの透明ボトルが並べられていた。そのインスピレーション源としてセシリーはその昔デンマークの美術館で見たオノ・ヨーコのインスタレーション『We're All Water』を語る。棚に並べられたさまざまな容器には水が満たされていて、それぞれの容器にはデヴィッド・ボウイ、シンディ・シャーマンといった有名人の名前がラベルに書かれていたそうだ。サイズやシェイプは違っていても、人間はみんな核の部分で基本的に同じであるというメッセージ。それを前にした彼女の心に、この統一性のメッセージは響くものがあった。異なる個人が人間のコミュニティーとしてひとつになる。中庭に並べられたガラスボトルは2023年春夏コレクションのために協力し、ショーに命を吹き込んだ人々それぞれを表していたのだ。

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いまにも崩れそうな空模様の会場に並べられた250本のガラスのボトル。アーティストのNina Norgaardに特注したものだ。photo:Mariko Omura

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ショーが開催された9月28日水曜日は天候に恵まれず。ショー開始時間が近づくにつれ雨模様となってしまい、その雨の中を白、黒、ラベンダー、ブルー、グレー、アップルグリーンなどの1色で統一されたルックで装ったモデルたちが次々と登場。彼女のブランド名にいまやしっかりと結びつくパフスリーブ、丸みを帯びて揺れるスカート……パンツルックもあるけれど、コレクションはクチュールライクのファンシーなドレスがメインで、それにスニーカーという組み合わせをすることでセシリーは日常性を強調した。プレシャスな何かをデイリーライフのためにクリエイトできることがとてもうれしいと語る彼女。スニーカーはアシックスとのコラボレーションである。アトリエのストックの素材を用いて手作業で施された装飾がチャーミングだ。雨にもかかわらず、明るい希望を漂わせたコレクションだった。

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editing: Mariko Omura

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