冬のパリ、美術館とギャラリー巡りなら寒い日も楽しい! モード展、エルザ・スキャパレリとイヴ・サンローラン。

Paris 2022.12.29

1. モード美術館でスキャパレリの「ショッキング」展

名称未設定1.png

左: Horst P Horst が1937年に「ヴォーグ」誌用に撮影したエルザ・スキャパレリ。 右: Marcel Vertesによるコラージュ『Schiaparelli, 21 place Vendôme』(1953年)。©︎Archives Schiaparelli

モードとアートを結びつけたクリエイションの先駆者であるクチュリエのエルザ・スキャパレリ(1890~1973年)。彼女の周囲にはサルヴァドール・ダリ、ジャン・コクトー、マン・レイ、レオノール・フィニ……といった綺羅星のシューレアリストのアーティストたちが集まっていた。パリ・モード美術館で開催中の『ショッキング! エルザ・スキャパレリのシューレアルな世界』展は、1920~30年代に前衛芸術家たちとの交流に多くのインスピレーションを得ていた彼女のクリエイションにフォーカスが置かれている。彼女の名前を世に知らしめたトロンプルイユのニットやアーティストに彼女が依頼したボタンやジュエリーも含め、これほど多数の彼女のクリエイションにまとまって出合えるチャンスはそうないだろう。

名称未設定2.png

左: 会場に入ると、1937〜38年冬のクチュールコレクションのショッキングピンクのケープ「Phoebus」、そしておびただしい数のデッサンに迎えられる。 右: アルベルト・ジャコメッティ、メレット・オッペンハイムほか大勢のアーティストが彼女のためにボタンやジュエリーをデザインした。photos:Mariko Omura

名称未設定3.png

左: アーティストの中でもとりわけサルヴァドール・ダリと親しかったスキャパレリ。ダリとのコラボレーションによる1938年の真っ赤なロブスターのドレスは、王冠をかけた恋で知られるウォリス・シンプソンがウィンザー公爵夫人となる直前に着用した。 右: 1938年夏、サーカスがテーマのコレクション。アルベール・ルサージュによる刺繍が圧巻だ。ジャン・コクトーがスキャパレリのために描いたポエティックなデッサンもルサージュが刺繍でジャケットに! photos:(左)©︎Les Arts Décoratifs/ Christophe Dellière、(右)Mariko Omura

名称未設定4.png

左: 32歳で子どもを抱えて離婚したスキャパレリ。その5年後、彼女のアイデアによるトロンプルイユのセーターが爆発的ヒットとなり一躍有名人に。 右: ダリによる電話器のダイヤルをもじったコンパクトをはじめ、ビューティ関連の品にもスキャパレリは遊び心を発揮していた。photos:(左)Mariko Omura、(右)©︎Les Arts Décoratifs/ Christophe Dellière

1954年に彼女はクチュールメゾンをクローズしたけれど、所在したヴァンドーム広場には看板が掲げられたままで、長いこと“眠れる森の美女”状態だった。2006年にトッズのディエゴ・デッラ・ヴァッレ会長がメゾンを購入し、2012年からクチュールメゾンの活動が再開されたのだ。3人目のアーティスティック・ディレクターとして2019年にアメリカ人デザイナーのダニエル・ローズベリーが就任して以来、まるでエルザのDNAを受け継いだかのようなコレクションによってメゾンは再びクチュール界の第一線へと。バイデン大統領就任式でレディー・ガガが国家を斉唱した際のドレスが彼によるスキャパレリのドレスだったことからも、さらに知名度はアップ。展覧会はエルザ・スキャパレリによるクチュールピースとダニエル・ローズベリーのクリエイションが混在してひとつの世界を作り上げるという趣向である。ちょうどこの展覧会の開催開始時に発表された彼による2022~23年秋冬クチュールコレクションから、大げさなボリュームやだまし絵などのシュールなピースも早速展示に取り入れられて、合計520点という見ごたえたっぷりの展覧会となっている。ちなみに“ショッキング”というのは彼女が思い出を綴った自伝のタイトル『Shocking』から(邦題は『ショッキング・ピンクを生んだ女』)。

名称未設定5.png
名称未設定6.png

現アーティスティックディレクターのダニエル・ローズベリーによるスキャパレリも展示され、ショッキング度が盛り上がるモード展。Agence NCによるパワフルな会場構成もひと役買っている。 photos:(上)©︎Les Arts Décoratifs/ Christophe Dellière、(下)Mariko Omura

「Shocking!Les mondes surréalistes d’Elsa Schiaparelli」展
会期:開催中~2023年1月22日
Musée des arts décoratifs
107, rue de Rivoli
75001 Paris
開)11:00~18:00(火、水、金〜日) 11:00〜21:00(木)
休)月
料:14ユーロ
https://madparis.fr/

---fadeinpager---

2. イヴ・サンローラン「ゴールド」

名称未設定7.png

1966年秋冬クチュールコレクションのゴールドのジュエリー・ドレス。「ヴォーグ」誌のためにこのドレスを撮影したのは、英国のカメラマン、デヴィッド・ベイリーで、サンローランにカトリーヌ・ドヌーヴを紹介したのが彼女と1965年に結婚した彼である。 photos:(左)Mariko Omura、(右)(c) David Bailey - Vogue Paris

イヴ・サンローランが最初のオートクチュールコレクションを発表してから、今年はその60周年にあたる。そしてイヴ・サンローラン・ミュージアムの創立から5周年という年でもある。というわけで、このふたつを記念して彼が“太陽の色”と愛したゴールドにフォーカスした展覧会が開催中だ。写真家デヴィッド・ベイリーが「ヴォーグ」誌のために撮影した1966年秋冬コレクション中のジュエリー・ドレスや、ジジ・ジャンメールが着たゴールドのスパンコールドレス……プレタポルテとクチュールから40点のドレスが集められ、ゴールドの表情の豊かさに圧倒される。エピキュリアンのサンローランがパーティを楽しみ、当時のセレブリティの夜の社交場だったクラブ「LE PALACE」の華やぎを写真で紹介し、よりゴージャスにゴールドを輝かせる演出がなされている。

また小物についてはキャビネ・ドゥ・キュリオジテを思わせる雰囲気の展示法だ。4つのウィンドウにクロード・ラランヌによるゴールドの指先ジュエリー、帽子や香水のボトルなどが並び、中にはアトリエの指ぬきやハサミなども。

名称未設定8.png

1962年春夏クチュールコレクションで目を奪ったのはウールのジャケットについたゴールドのボタン。展覧会はここからスタートし、5つのテーマに分けてゴールドの服を展示している。photos:Mariko Omura

名称未設定9.png

2階では、クチュールとリヴ・ゴーシュをミックスして、1970〜90代の16体を展示。パリ9区にあったクラブの「Le Palace」の時代である。ミック・ジャガーやアンディ・ウォーホルなど海外のセレブが集まり、サンローランだけでなく、高田賢三、カール・ラガーフェルドなどモード界の常連も多数だった。こうした著名人に混じって、まだ10代半ばのクリスチャン・ルブタンの姿も……。ティエリー・ミュグレーがショーのキャスティングを深夜にここで行ったこともあったそうだ。photos:Mariko Omura

展覧会のメインキュレーションは美術館のエルザ・ジャンセンが担当したが、サンローランのミューズであり右腕、そして伝説のナイトクラブのパラスでの時間を共に過ごしたルル・ドゥ・ラ・ファレーズの娘であるアナ・クロソフスキーもキュレーションに参加。彼女はまたゴールドのジュエリーを300点近く並べたふたつのウィンドウのインスタレーションも担当していて、この展示は幻想的でとても美しい。最上階、イヴ・サンローランのアトリエも通常どおり訪問できる。展覧会のテーマに合わせて、ゴールドのジュエリーや刺繍などについて仕事中というシーンが演出されていて、サンローランとルルのやりとりが目に浮かぶようだ。なお、サンローランの才能が現代のアーティストと対話するという発想から、ヨハン・クレテンによるゴールドに輝く作品が3点壁を飾っている。

名称未設定10.png

左: ジュエリーの展示。 中: ルサージュなどの刺繍見本も。 右: 40時間をかけて刺繍を施したゴールドのジャケット。同じスペースに、シルヴィ・ヴァルタンのゴールドのコンビネゾンも展示されている。photos:Mariko Omura

名称未設定11.png

最上階に保存されているサンローランのアトリエは見学可能。毎回展覧会のテーマに合わせてディテールを変えている。今回はテーブルにゴールドのボタンや刺繍などを配し、カトリーヌ・ドヌーヴのゴールドジャケットを展示。

GOLD, Les ors d’Yves Saint Laurent
会期:開催中~2023年5月14日
Musée Yves Saint Laurent Paris
5, avenue Marceau
75116 Paris
開)11:00~18:00(火〜金、日) 11:00〜21:00(土)
休)月
料:10ユーロ
https://museeyslparis.com
@museeysl

editing: Mariko Omura

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
Figaromarche
あの人のウォッチ&ジュエリーの物語
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories