パリの手仕事が生まれるアトリエへ。 残布や端切れが生まれ変わったカラフルなバブーシュが、パリで大人気!
Paris 2023.01.28
ずっと大切にし続けたい素敵なものが出来上がる背景には、手仕事を大事にするクリエイターと情熱あふれる物語がある。彼女たちを訪ねて、パリの小さな仕事場へ。
CASE #02 カーラ・ヘインズ
自宅で椅子のためのロープを作る。細く裂いた布地を、ほつれが出ないよう丁寧に捻り、縒り合わせる。作れるのは1時間で1mほど。
カーラ・ヘインズのアパルトマンでは、たくさんの布地が生まれ変われる日を待っている。プレタポルテを発信していたカーラがブランドを休止したのは2015年のこと。
「たくさん残っていた布地を使って何かしたい」と考えた彼女が辿り着いたのは、大好きなモロッコ風ラグを作ることだった。デザイン画を描き、色に合わせて布地を選び、現地工房に送る。切り裂いた布地から色合いも楽しいラグを生み出すのは、マラケシュに近い工房で機を織る女性たちだ。いまでは、ハイブランドから排出される裁ち落とし布や、プリント工場から出る試し刷り布がカーラのもとに集まるようになった。
布たちから生まれたもうひとつのプロジェクトは、オーダーメイドの椅子。布地を手で細く裂いて縒り合わせたロープは、幼なじみの家具職人、ピーター・クーリカンが作るスツールやベンチの座面になる。オーダーの色に合わせて布を選び、ロープを手作りするのはカーラの仕事だ。
そして、3つめのアップサイクルアイテムがモロッコ風バブーシュ。
「故郷カナダの百貨店でラグのフェアをした時に、買いやすいアイテムを、とヴィンテージラグでバブーシュを作ってみたの」
作った60足は、1時間で完売。以来、マラケシュ周辺のスーク(市場)で買い付けるヴィンテージラグから生まれるバブーシュが、彼女のヒット作になった。デザイナー、カーラのセンスが繰り出すアップサイクルは、インテリアにノマドな気分を加えつつ、クールな表情も併せ持つのが魅力だ。
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モロッコでラグを作る女性たち。当初は互いに手探りで始めたけれど、1年半ほど協働するうちに、二人三脚でスタイルが出来上がったという。
こちらは椅子のためのロープ。ブルー系のロープにも、プリントと無地を合わせることで柔らかなグラデーションが生まれる。
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ラグの工房に、デザイン画を送る。工房の女性たちのクリエイティビティも尊重したくて、デッサンはわざと大雑把にしているそう。
ラグのために、布を並べて色合いを吟味。こうして選んだ布とデザイン画をモロッコに送って、織ってもらう。
ハイブランドの布地から生まれ変わったラグ。バブーシュは、モロッコのスークで選ぶヴィンテージラグを使っているので、一足ごとに表情が違う、一点もの。FIGARO Marchéにてバブーシュを販売。
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バブーシュになるのを待つ、ヴィンテージラグたち。
ラグもバブーシュも、モロッコ伝統の手仕事から生まれる。
*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋
photography: Mana Kikuta editing : Masae Takata (Paris Office)