パリの手仕事が生まれるアトリエへ 手刷りのドミノペーパー、その美しさの秘密。

Paris 2023.01.31

ずっと大切にし続けたい素敵なものが出来上がる背景には、手仕事を大事にするクリエイターと情熱あふれる物語がある。彼女たちを訪ねて、パリの小さな仕事場へ。

CASE #05 ジャン=バティスト・マルタン/ヴァンサン・ファレリー

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こぢんまりしたパリのアトリエは、ドミノペーパーの制作が行われる、ブランド発祥の地。大きなサイズの印刷は、ブルターニュに移転したデザインアトリエで行っているのだそう。

Jean-Baptiste Martin(左)Vincent Farelly(右) ジャン=バティストはソルボンヌ、ヴァンサンは国立文化財研究所卒業。修復家としてオーベルニュ地方の歴史建造物を手がけている時に、ドミノペーパーを発見。2012年、ア・パリ・シェ・アントワネット・ポワソンを設立。www.antoinettepoisson.com

ヴァンサン・ファレリーとジャン=バティスト・マルタンは、歴史建造物を修復していた時に、18世紀の壁紙、ドミノペーパーを発見した。その美しさに魅せられ、当時の手法のままに蘇らせたのがこのメゾン。彼らが発信する18世紀の美意識をたたえたデザインはたちまち評判を呼び、モチーフを印刷した文具や布地、陶器へとラインナップが広がった。メゾン発祥のアイテムであるドミノペーパーは、変わることなくバスティーユのショップに隣接するアトリエで一枚一枚制作されている。

メートル・ダールの称号を持つ職人がフランス・シャラント県で作る麻繊維の紙は、透かしで制作日とマークが入っている極上の品。その紙を濡らし、丁寧にインクをのせた金属製の版材に置いて、印刷機にセットする。大きな取っ手を手で回し、手のひらで優しく撫で上げて、一枚ずつ擦り上げてゆく様子は、まるで時が止まったかのよう。ポショワールの手法で行われる色付けでは、図案によっては最大6枚もの型紙を使って色が重ねられ、フリーハンドで仕上げる部分もある。全工程が手作業なだけに、微妙な版ずれや濃淡の差があって、それがまた美しい。

このアトリエで生まれるドミノペーパーは月に300枚ほど。2012年以来、デザインは70種ほどにも膨らんだ。瀟洒な邸宅の内装に壁紙として使用されることもあるけれど、額装してインテリアのアクセントとして楽しむ顧客も多いそう。紙細工のボックスやランプシェードにも、手刷りのドミノペーパーが使われている。

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インスピレーション源は、蚤の市やオークションで発掘する18〜19世紀の玩具や雑貨、装飾品。棚には古の木版のコレクションが並ぶ。

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古い薬瓶に入った顔料も、色調のインスピレーション源になる。

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金属製の原版に丹念にインクをのせ、あらかじめ水に潜らせた紙をその上に。作業台の前には印刷された紙が何枚も乾かされていた。

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大きな窓から光が入る作業台では、色付け作業が行われている。

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ドミノペーパーのデザインは、いまでは70種類ほどに。このデザインはNo1とナンバリングされた初期の作品で、18世紀中頃のデザインを復刻したもの。

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ポショワールの手法で色付け。「子どもを抱くマドンナ」にブルーをのせたところ。型紙をそっと外して。

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アトリエ(12, rue St Sabin 75011 tel:33-(0)1-77-17-13-11)の中央にある印刷機。原版に紙をのせてセットし、大きな取っ手を回して一往復。

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印刷された紙。ムラがないかチェックして、乾かしたら色付けへ。

*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋

photography: Julie Ansiau, Ruth Ribeaucourt editing : Masae Takata (Paris Office)

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