リシュリュー通り、ジュリアン・セバッグのミショーで行列。
Paris 2023.01.31
行列のできる店で食事をする! テーブルに着く前、並んでいる間に興奮させられる。仲間と一緒なら、盛り上がりはさらに大きく……。パリの1区リシュリュー通りに行ってみよう。ランチタイムを目指して12時前後に人が並び始めるのは12番地の「こだわりラーメン」、リシュリュー通りにぶつかるヴィレド通り1番地のうどん屋「国虎」、そして昨年11月9日にオープンした「Micho(ミショー)」だ。
左: 毎日届く人気のパン屋「Mamiche」特製のハラーパンを使ったサンドイッチ。 右: イートインは左の扉から。テイクアウトは右の窓口で。photos:Mariko Omura
ここは野菜料理界のスターで料理は独学というジュリアン・セバッグの店で、ごく親しい人たちでの間の彼の愛称を店名にした。ランチタイムはハラーパンのサンドイッチの店である。ハラーパンというのは、ユダヤ教徒が安息日や祝祭日に食べるイースト発酵の卵の入った柔らかなパンだ。オープン初日、サンドイッチはあっという間に売り切れの人気に。というのもミショーのサンドイッチは2021年春にパリ市内のレストランがクローズしている時に、ジュリアンが “Loveを送りたい!”とレストラン「La Fontaine Gailon」のキッチンでテイクアウトと配達用に作って販売をしたところ、成功をおさめたというファンにはおなじみの味なのだ。ちなみに、このハラーパンのサンドイッチは、その前年に彼と食関連の仲間たちが新型コロナの患者の対応で休む間もなく働く病院の看護師たちに配ったのが始まりだったそうだ。夜はシェアして食べる料理とヴァン・ナチュールのプチビストロという顔を持つ。
なおサンドイッチ用のハラーパンは9区と10区に店を構え、行列のできるパン屋として有名な「Mamiche(マミッシュ)」による特製である。とろ火で煮込んだビーフを挟んだ「Stew」(15.5ユーロ)、ローストチキンとゆで卵を挟んだ「Roast」(15ユーロ)、きのこのオムレツを挟んだ「Havita」(12ユーロ)のセバッグによる3種のサンドイッチがメニューに並び、毎週ゲストによる味がプラスされる。どのサンドイッチも野菜がたっぷりで、フィリングはパンからはみ出さんばかりのおデブさんだ。1本のサンドイッチはふたつに分けてサービスされるので、もしふたりで行くのなら2種を頼んでシェアするのがいい。
左: ジュリアンが愛のサンドイッチと呼ぶハラーパンのサンドイッチ。 右: ランチタイムのメニューにはサンドイッチ、サイド、デザートが。
夜はプチビストロに変身するミショー。その一端はランチタイムのサイドとして味わえる。サイドの「イエロー」(5.5ユーロ)はニンニク味のジャガイモ、「オレンジ」(6.5ユーロ)は味噌&ペストソースのカラフル・ニンジン、「パープル」(6.5ユーロ)はラディッキオにヤギチーズのクリームだ。
ミショーの人気の一端を担うのは、 スウィンギング・ロンドン×アメリカのダイナーというヴィンテージタッチが生きたインテリアだろう。天井はヴィクトリアン調、床は50’sとさまざまな時代が昔からミショーが存在していたような印象を作り上げている。インテリアを任されたのはGundry+Duckerだ。というのもジュリアンがロンドンでとりわけ気に入っているレストランの「Voodoo Ray's」と「The Barbary」、また魚屋「Fishshop」を手がけたのが偶然にもすべて彼らの仕事だったことからだ。彼らにとってこれがパリの初仕事となった。店内の棚には昔懐かしいラジオが置かれ、シェフのディスク・コレクションからビートルズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどが並んで……。
店内、ブリティッシュグリーンがいたるところに。英国のデザインスタジオGundry+DuckerがパリのStudio E-Cと内装をコラボレーション。
editing: Mariko Omura