パリジェンヌが暮らす部屋 CASE #03 リュクスな素材で、パリシックな演出。
Paris 2023.02.12
色や装飾を巧みに取り込んだ空間づくりや、部屋の片隅や窓辺に置くオブジェにも愛らしいこだわりがある。そんなパリジェンヌたちの暮らしを彩るパリの日常に欠かせない素敵なものたちを紹介。それらが生まれる手仕事の工房を訪れるなど、ロマンティックな暮らしの背景にある、繊細で美しい物語を紐解いてみました。
デザイナー、 ジャーナリスト/アレクサンドラ・ゴロヴァノフ
ピエール・フレイやエルメスのクッションなど、オーセンティックなファブリックが大好き。
シンプルなデザインのカシミアセーターにブルーデニム、そしてバイカラーのバレエシューズ。飾り気のないアレクサンドラの着こなしは、まさにパリジェンヌスタイルだ。ひと目惚れして即購入した自宅について、「向かいの友人宅にランチに招かれて、その時にここが売りに出されているけれど興味ある?と聞かれて。この家のドアを開けた瞬間、自分の家だって確信し、すぐに『ウイ!』と答えました」と語る。
心まで豊かにしてくれる贅沢なファブリックを選ぶ
自分らしいアール・ドゥ・ヴィーヴルにこだわるフランス人は、自身のアイデアを駆使して、暮らしやすい空間にするために時間をかける。アレクサンドラの場合は、パリから離れたこの2拠点目の一軒家の改修に2年以上をかけ、生活スタイルに合わせて間取りまで変えた。
もともとあった梁や木製の柱を生かした内装。温かい色彩のファブリックで仕上げた椅子の上に積まれているのは、Maison Alexandra Golovanoffのカシミアセーター。
オットマン付きの一人掛けレザーチェアにエルメスのクッションを。読書スペースの近くに本を読む少年の絵が掛けられ、お茶目。
ピエール・フレイのクッションと、色調も合わせたエルメスの膝掛け。手前の置物は旅先で購入。
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リビングルームの主役は、集う人たち誰もがゆったりできる大きなソファ。商品の名前は「アレクサンドラ」だそう。
「建築家シャルル・ザナの作品が大好きで、パリのアパルトマンに置くソファを以前オーダーしました。その後、私がオーダーしたそのソファが商品化されたんです。こちらの家に置いたほうがいいように思えて運んできました」
旅から持ち帰った置物が空間に温かみを添える
いたるところに花を飾り、旅先から持ち帰ったオブジェを配するアレクサンドラのセンス。壁にある絵画はオークションで購入したもの。
模様替えは大好き、と言う彼女は、「インテリアに絶対的な決まりごとなんてない」と断言するものの、存在感の大きなソファの色はフランス窓から見える庭の木々とのマッチを熟慮した。
「インテリアは、その家の空間が物語る歴史や、環境を出発点に考えるべきもの。それに、家の中と窓から見える景色はリンクしているべきです。家具や小物は、建物の外壁の色合い、周囲の自然や光に合わせて選びました。それが、この家の全体の調和をもたらしているのでしょう」
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キッチンは機能性を重視してクリーンな印象に仕上げる
アンティーク商の家に生まれたアレクサンドラは、クリニャンクールの蚤の市の中にあるポール・ベールやセルペットに赴いたり、オークション会場に足を運んだり、セレンシー、デザインマーケット、イーベイ、プロアンティックなど、アンティークを扱うサイトをよく検索する。時には思いがけない掘り出し物と巡り合う。自身の名前が付けられた前出のソファも、70年代のテーブルとよくなじんでいる。
うつわにもお宝のヴィンテージがたくさん。
麦の穂モチーフのテーブルクロスとナプキンはWAWW La Table×Aurélie Bidermannのもの。絵皿やカトラリーのクラシカルな雰囲気とほどよく調和。
玄関から廊下を抜けたところにあり、来客スペースにもなっているキッチンにも、大きなアンティークの木製テーブルを置いた。カトラリー、キャンドルスタンドも、巧みにアンティークを使う。それらは、モダンで機能的な設備が整った調理スペースとモダンなミックスマッチを醸し出す。
木とガラスをコーディネートすると、優しく、軽やかな雰囲気に仕上がる
「おいしい料理をきちんと作るには、キッチンは機能的でないと。クリーンにまとめたいのです」
木とガラスを組み合わせた優しい雰囲気のテーブルと、ハイスペックな調理スペース。外光の取り入れ方まで計算されているからこそ、料理しやすく、だんらんも楽しめる空間が成立した。
1968年に美術学校の生徒たちが描いたというポスターを壁に飾った、もうひとつのダイニングスペース。
外の光が取り入れられるダイニングにミッドセンチュリーデザインの椅子を配して。装飾的なガラスとシンプルなガラス、両方を使って食卓を演出する。キーワードは透明感だ。
田舎の景色が描かれたピッチャー、花、ガラス。機能的な調理スペースを背景にしながら、温かなだんらんが想像できるダイニングテーブル。
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人を招いて集う場所ではなく、自分自身の時間を愉しむ場所が3つある。考えごとをする書斎、寝室、バスルームだ。
寝室には大きな梁があって天井も高く、イタリア製のシャンデリアを吊るしている。ベッドサイドテーブルに置いたユーカリの香りのキャンドルは定番。愛するブルターニュ地方の野原をイメージして、アレクサンドラが製品化したものだ。すぐ隣のバスルームでは、猫足バスタブに浸かりながら、庭を眺められるという贅沢な癒やしの時間を堪能しているそう。バスルームの床にはアンティークのラグを敷き、書架用のはしごをシャンプー&コンディショナー、ボディソープなどのビューティアイテムを置くラックとして活用している。「バスルームは利便性だけを重視するのではなく、寛いで過ごすための部屋だと考えているから」とアレクサンドラ。
バスルームもひとつの部屋と考えるアレクサンドラらしく、棚の使い方も個性的。
ガラス、メタル、木の質感。クラシックとモダンのスタイル。相反するものが同居しているのに、心地よさを追求した寝室。
モダンなメタル製のランプ、ガラス製の花瓶やキャンドルホルダー。窓から望む景色を眺めながら、新しいアール・ドゥ・ヴィーヴルの提案を考える。
特注の家具を置くことで、暮らしが楽になる
2階の壁は特注の本棚で覆いつくされていて、60年代のドイツのヴィンテージソファに座ってのんびり読書が習慣。
「この部屋はこもるのにぴったり。木製のデスクで仕事の案を練るのも、気分転換になります」
その仕事の案を練るというデスクにもキャンドルや花瓶が飾ってある。「ガラスは重厚な木の質感と合わせると、軽やかさをもたらしてくれるから」と言う彼女は、空間の仕立てが発想を豊かにしてくれると本能的に感じている。
プロジェクターを置いて上映室も兼ねている書斎。書架は特注のもの。ボックスを重ねたような造りで、すべて同サイズなところも使い勝手がいい。クッションはグッチ、ブランケットはエルメスのもの。
自身のカシミアニットブランドを持ち、インテリア&デザイン関連のジャーナリストでもある。ここで紹介するウール・エ・ロワール県の家での暮らしをまとめた本が、2023年にPresses de La Cité社から出版予定。
www.alexandragolovanoff.com
*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋
色や装飾を巧みに取り込んだ空間づくりや、部屋の片隅や窓辺に置くオブジェにも愛らしいこだわりがある。そんなパリジェンヌたちの暮らしを彩るパリの日常に欠かせない素敵なものたちを紹介。それらが生まれる手仕事の工房を訪れるなど、ロマンティックな暮らしの背景にある、繊細で美しい物語を紐解いてみました。
デザイナー、 ジャーナリスト/アレクサンドラ・ゴロヴァノフ
ピエール・フレイやエルメスのクッションなど、オーセンティックなファブリックが大好き。
シンプルなデザインのカシミアセーターにブルーデニム、そしてバイカラーのバレエシューズ。飾り気のないアレクサンドラの着こなしは、まさにパリジェンヌスタイルだ。ひと目惚れして即購入した自宅について、「向かいの友人宅にランチに招かれて、その時にここが売りに出されているけれど興味ある?と聞かれて。この家のドアを開けた瞬間、自分の家だって確信し、すぐに『ウイ!』と答えました」と語る。
心まで豊かにしてくれる贅沢なファブリックを選ぶ
自分らしいアール・ドゥ・ヴィーヴルにこだわるフランス人は、自身のアイデアを駆使して、暮らしやすい空間にするために時間をかける。アレクサンドラの場合は、パリから離れたこの2拠点目の一軒家の改修に2年以上をかけ、生活スタイルに合わせて間取りまで変えた。
もともとあった梁や木製の柱を生かした内装。温かい色彩のファブリックで仕上げた椅子の上に積まれているのは、Maison Alexandra Golovanoffのカシミアセーター。
オットマン付きの一人掛けレザーチェアにエルメスのクッションを。読書スペースの近くに本を読む少年の絵が掛けられ、お茶目。
ピエール・フレイのクッションと、色調も合わせたエルメスの膝掛け。手前の置物は旅先で購入。
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リビングルームの主役は、集う人たち誰もがゆったりできる大きなソファ。商品の名前は「アレクサンドラ」だそう。
「建築家シャルル・ザナの作品が大好きで、パリのアパルトマンに置くソファを以前オーダーしました。その後、私がオーダーしたそのソファが商品化されたんです。こちらの家に置いたほうがいいように思えて運んできました」
旅から持ち帰った置物が空間に温かみを添える
いたるところに花を飾り、旅先から持ち帰ったオブジェを配するアレクサンドラのセンス。壁にある絵画はオークションで購入したもの。
模様替えは大好き、と言う彼女は、「インテリアに絶対的な決まりごとなんてない」と断言するものの、存在感の大きなソファの色はフランス窓から見える庭の木々とのマッチを熟慮した。
「インテリアは、その家の空間が物語る歴史や、環境を出発点に考えるべきもの。それに、家の中と窓から見える景色はリンクしているべきです。家具や小物は、建物の外壁の色合い、周囲の自然や光に合わせて選びました。それが、この家の全体の調和をもたらしているのでしょう」
---fadeinpager---
キッチンは機能性を重視してクリーンな印象に仕上げる
アンティーク商の家に生まれたアレクサンドラは、クリニャンクールの蚤の市の中にあるポール・ベールやセルペットに赴いたり、オークション会場に足を運んだり、セレンシー、デザインマーケット、イーベイ、プロアンティックなど、アンティークを扱うサイトをよく検索する。時には思いがけない掘り出し物と巡り合う。自身の名前が付けられた前出のソファも、70年代のテーブルとよくなじんでいる。
うつわにもお宝のヴィンテージがたくさん。
麦の穂モチーフのテーブルクロスとナプキンはWAWW La Table×Aurélie Bidermannのもの。絵皿やカトラリーのクラシカルな雰囲気とほどよく調和。
玄関から廊下を抜けたところにあり、来客スペースにもなっているキッチンにも、大きなアンティークの木製テーブルを置いた。カトラリー、キャンドルスタンドも、巧みにアンティークを使う。それらは、モダンで機能的な設備が整った調理スペースとモダンなミックスマッチを醸し出す。
木とガラスをコーディネートすると、優しく、軽やかな雰囲気に仕上がる
「おいしい料理をきちんと作るには、キッチンは機能的でないと。クリーンにまとめたいのです」
木とガラスを組み合わせた優しい雰囲気のテーブルと、ハイスペックな調理スペース。外光の取り入れ方まで計算されているからこそ、料理しやすく、だんらんも楽しめる空間が成立した。
1968年に美術学校の生徒たちが描いたというポスターを壁に飾った、もうひとつのダイニングスペース。
外の光が取り入れられるダイニングにミッドセンチュリーデザインの椅子を配して。装飾的なガラスとシンプルなガラス、両方を使って食卓を演出する。キーワードは透明感だ。
田舎の景色が描かれたピッチャー、花、ガラス。機能的な調理スペースを背景にしながら、温かなだんらんが想像できるダイニングテーブル。
---fadeinpager---
人を招いて集う場所ではなく、自分自身の時間を愉しむ場所が3つある。考えごとをする書斎、寝室、バスルームだ。
寝室には大きな梁があって天井も高く、イタリア製のシャンデリアを吊るしている。ベッドサイドテーブルに置いたユーカリの香りのキャンドルは定番。愛するブルターニュ地方の野原をイメージして、アレクサンドラが製品化したものだ。すぐ隣のバスルームでは、猫足バスタブに浸かりながら、庭を眺められるという贅沢な癒やしの時間を堪能しているそう。バスルームの床にはアンティークのラグを敷き、書架用のはしごをシャンプー&コンディショナー、ボディソープなどのビューティアイテムを置くラックとして活用している。「バスルームは利便性だけを重視するのではなく、寛いで過ごすための部屋だと考えているから」とアレクサンドラ。
バスルームもひとつの部屋と考えるアレクサンドラらしく、棚の使い方も個性的。
ガラス、メタル、木の質感。クラシックとモダンのスタイル。相反するものが同居しているのに、心地よさを追求した寝室。
モダンなメタル製のランプ、ガラス製の花瓶やキャンドルホルダー。窓から望む景色を眺めながら、新しいアール・ドゥ・ヴィーヴルの提案を考える。
特注の家具を置くことで、暮らしが楽になる
2階の壁は特注の本棚で覆いつくされていて、60年代のドイツのヴィンテージソファに座ってのんびり読書が習慣。
「この部屋はこもるのにぴったり。木製のデスクで仕事の案を練るのも、気分転換になります」
その仕事の案を練るというデスクにもキャンドルや花瓶が飾ってある。「ガラスは重厚な木の質感と合わせると、軽やかさをもたらしてくれるから」と言う彼女は、空間の仕立てが発想を豊かにしてくれると本能的に感じている。
プロジェクターを置いて上映室も兼ねている書斎。書架は特注のもの。ボックスを重ねたような造りで、すべて同サイズなところも使い勝手がいい。クッションはグッチ、ブランケットはエルメスのもの。
自身のカシミアニットブランドを持ち、インテリア&デザイン関連のジャーナリストでもある。ここで紹介するウール・エ・ロワール県の家での暮らしをまとめた本が、2023年にPresses de La Cité社から出版予定。
www.alexandragolovanoff.com
*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋
photography: Matias Indjic (Madame Figaro) text: Vanessa Zocchetti (Madame Figaro) styling: Pauline Ricard-André (Madame Figaro)