パリジェンヌが暮らす部屋 CASE #04 鮮やかな色合いのデザイン家具に囲まれたパリジェンヌの暮らし。

Paris 2023.02.13

色や装飾を巧みに取り込んだ空間づくりや、部屋の片隅や窓辺に置くオブジェにも愛らしいこだわりがある。そんなパリジェンヌたちの暮らしを彩るパリの日常に欠かせない素敵なものたちを紹介。それらが生まれる手仕事の工房を訪れるなど、ロマンティックな暮らしの背景にある、繊細で美しい物語を紐解いてみました。

装飾アーティスト/ソレーヌ・エロワ

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この部屋には3つのグリーンが共存。エメラルドグリーンの壁はマット感が強く、幅木は光沢のあるフォレストグリーン。天井はやや黄色がかった光沢のあるグリーンで、いずれもルスルス社の顔料を使用。右に置かれたピエール・ポランのパンプキンアームチェアや奥に置かれるランプシェードも白でまとめて、色彩のコントラストを演出。

鮮やかなグリーンに塗られた空間に、真っ白な家具が際立つ。色と色が互いを生かし合いながら、洗練された調和を醸し出す。装飾アーティストのソレーヌ・エロワが家族とともに暮らしているパリの瀟洒な一軒家。インテリアコーディネートのテーマはもちろん「色彩」。壁面デコレーションのスペシャリストだからこそ、空間の中で大きな面積を占める壁や天井の佇まいにこだわり、カラーや質感から生まれる背景を重視しながら、デザイン家具を絶妙なバランスで配置する。

グリーンとイエローとゴールド、互いを際立たせる強い色の組み合わせ

家の中を歩いていると、いくつもの「色」が迎えてくれる。サロンのグリーンに始まり、戸棚に塗られたクラインブルー、まるで床の間のようなアートオブジェを飾るスペースにはバーガンディ、娘の寝室はロマンティックなピンクといった具合に。ぶつかり合いそうに強い色彩が一軒の家に存在しているのに、それぞれ「色の持ち場」に落ち着いていて、その場所だけの世界観を創り、役割を担っている。置かれているアートオブジェや家具もソレーヌが選んだもの。ピエール・ポランのチェア、ムスターシュのスツール、パントンのチェストなどモダンなデザイン家具が置かれているのに、なぜシックな印象に収まるのだろう?

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明るいダイニングスペースは緑のリビングの真向かい。壁は、シクラメンの花のように繊細なペールピンクで、ルスルス社の白い塗料の上に着色を施し、まるで古代ローマの壁のように柔らかな色合いとなめらかさ、マット感を出した。

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クラインブルーに塗られた戸棚には、その色が透けて見えるようにガラスの食器を置く。ガラスにも、床に置いた植物を象ったオブジェにも、ゴールドを選んで瀟洒なアクセントにしている。

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伝統的手法で質感を工夫した、ガラスや鏡を効果的に使う

「18歳の時にローマでフレスコ画の素晴らしさに目覚めたのです。それから、パリの国立応用美術工芸学校(オリヴィエ・ド・セール)で学びました。クラシックなイタリアの室内装飾の奥深さに心酔していました」

クラシシズムに軸を置きながら、デザイン家具やオブジェでスパイスを加えるソレーヌのセンスは、伝統技術を学んだ経験によって培われていた。

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ギャラリー・ヴォクレールのためにソレーヌがデザインした壁紙「ルムー(渦)」を使用したキッチン。色とモチーフは、温室を描いた19世紀末の何枚かの古生地に着想を得たそう。

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扉のアールデコ調の文様がソレーヌの作品であるガラスに反射して絵画のような効果を生み出す。光とオブジェが織りなす美しい空間演出。

フレスコ画の手法を得意とするアトリエで、インテリアデザインから壁面装飾の注文までをこなしていたソレーヌ。現在進行中の壁面装飾のプロジェクトでも、ヨーロッパの伝統的な手法にこだわっているという。自宅も同様で、「ベースとなるのは伝統的な手法です。そのうえで過去と現在が融合したような、素朴なのに凝った風合いに仕上げます。塗装はざらざら感や光沢感などコントラストを効かせることも好き。ほとんどが未加工の素材に、あえてゴールドをぶつけてみるのもいいですね」。加えて、ミネラル感や、自然からインスピレーションを得た絵柄など、フレスコ画と共通している要素を、現代の家の造りに応用している点がとても知的だ。

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エントランスは深い赤。ソレーヌの原画をもとにゴールドの銅箔を使って手作業した「星座」と名付けられた壁紙が掛け軸のように飾られている。左の手前に置かれたスツールは、ムスターシュのボールド。

エントランスから続く空間の壁面に、フランスのインテリアデザイナー、ジャン=ミシェル・フランクへのオマージュを込めて、ソレーヌは櫛引きコテを使い、壁一面に模様を刻んだ。アールデコ調の洗練された幾何学模様の扉から光が差すこの明るい空間から、前ページのグリーンのサロンへと続いていく。ガラスや鏡など、光を受け止める素材で作られたオブジェもソレーヌが手がけたもの。「フラック(水たまり)」と名付けられた21金の箔加飾を施したガラス作品だ。光が溶け込むアートも、ソレーヌの家に独特な風合いを与える大切な要素である。

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ソレーヌの娘のフロールが自らセレクトした、グッチのツルが描かれた壁紙を一面に。残りの壁と戸棚の扉は同じ色合いの濃いピンクにペイント。天井や窓枠は白く塗って明るい印象に。レトロなオーディオの趣味はかえって現代っ子ぽい。

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Solène Eloy
2010年に壁面装飾を中心とするアトリエ・デュ・ミュールを設立。ドバイやニューヨークのカルティエのブティックの内装など、ハイメゾンの仕事を手がける。22年秋、パリ現代アートウィーク期間中にデザインした壁紙「スプラッシュ・イロトリドリ」が展示された。

*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋

photography: Gaëlle Le Boulicaut (Madame Figaro) text: Emmanuelle Eymery (Madame Figaro)

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