オペラ座の近く、炭火焼きに舌鼓を打つネオ・ブラッスリー「シメール」。
Paris 2023.03.08
オペラ・ガルニエ前の広場近くには、複数の大通りが走っている。観光客も多い地区ゆえに、こうした通りに面したレストランはあまり味に期待できないと避けがちでは? でも昨年10月、広場から徒歩5分程度のキャトル・セプタンブル通り22番地にオープンした「Chimère(シメール)」は、そのおいしさゆえに繰り返し行きたくなる店だ。ランチも楽しめるが、ディナータイムは18時に開店し、翌1時30分まで営業。食後もドリンクでのんびりと過ごせるバー・レストランである。
通りのほかの店の外観がカジュアルなのに対し、シメールはイノックスを用いたデザイン系でシック。店内も70年代の映画のイメージで作られ、モノクロームで洒落ていて。思いがけない場所に潜む、しゃれた美食の店である。
店舗デザインはNecchi Architectureが担当。界隈では珍しい70年代調の扉の奥に、シックで大人の世界が広がる。リチャード・ギア主演の映画『アメリカン・ジゴロ』がデザインのインスピレーション源だそうだ。photos:(左)Leo Kharfan、(右)Ludic Balay
レストラン中央に鎮座するバー・カウンター。ここでオリジナルカクテルや料理とナチュールワインを味わうのもおしゃれな感じ。photos:Leo Kharfan
オーナー・シェフのセドリック・サン=マルクがブラッスリー料理をソース、スパイスを縦横無尽に操ってフュージョンな出来上がりを楽しんでいるメニューがおもしろい。シャルキュトリー&チーズ、スモールディッシュ、メインディッシュ、肉の炭火焼き、デザートという項目別。野菜、魚、肉がバランスよく組み入れられているので、誰もが自分好みの料理を選べる。素材の持つ味を重視する時代に注目を浴びている調理法が炭火焼き(ア・ラ・ブレーズ)である。ずばり“ブレーズ”という名のレストランも8区にオープンしているほどだ。シメールではメニューで肉の炭火焼き2種を提案するだけではなく、たとえばスモールディッシュのポロネギやメインディッシュの魚なども炭火焼きだったりする。
左: シェフのセドリック・サン=マルクは公証人からの転職シェフ。料理は独学だそうだ。それゆえか、自由な発想で料理にひねりを利かせている。 右: シメールの料理の大きな特徴は炭火焼き。photos:Leo Kharfan
炭火焼き肉は時期によるが豚肩肉、羊のコートレット、チキンなど2種から選べる。牛肉は「Ferme de Clavisy」、豚肉は「Le Noir de Bigorre」からの厳選だ。羊のコートレットやサーロインステーキはアルゼンチンでおなじみの酸味の強いチミチュリ・ソースとともにサービスされる。photo : Leo Kharfan
ランチタイムには日替わりメインが用意される(15〜20ユーロ)。メインディッシュより。左: カボチャのロースト(18ユーロ)。インド風のマカーニ・ソースとフェタチーズで。 右: 魚介類は「Terroirs d'Avenir」から。シェフはXO醬を魚料理に使うこともある。photos:Leo Kharfan
もちろん調理法が炭火焼きではない料理もシメールでは満足感が高い。「Riz à lencre(イカスミ・ライス)」はイタリアのグリーンソースである“グレモラ”がミックスされ、イカはあぶり焼きである。イカスミのリゾットとは異なる、なかなか不思議な味わいである。スモールディッシュのヒラタケは甘辛な味付けが、どこか和食のようでお箸ならぬフォークが進む! シメールでの口福はデザートまで続く。たとえばクレーム・ブリュレ。大流行りした後、定着したデザートだ。いろいろなレストランで試して、ときにがっかりしたこともあるのでは? ここでは、上のカラメルは固すぎず、厚すぎず。そしてその下は柔らかさ加減が絶妙でクリーミーである。もっともレストランがいちばん人気と薦めるのは、バジルとパッションフルーツのチーズケーキだ。そのお味は……食べてのお楽しみ!
左: シェアして味わうスモールディッシュは6種。9ユーロ〜。パンは「Thierry Breton」から。 右: シャルキュトリー&チーズには、カマンベールのフライも。photos:Leo Kharfan
デザートから。左:バジルとパッションフルーツのチーズケーキ(10ユーロ)。 右: ガヴォットとプラリネを添えたムース・オ・ショコラ(9ユーロ)。photos:Leo Kharfan
22, rue du 4 septembre
75002 Paris
営)ランチ 12:00〜14:00 L.O(月~金) 12:00〜14:30 L.O(土、日)
ディナー 18:00〜22:00 L.O(日〜金) 18:00〜22:30 L.O(土)
無休
https://chimere-4septembre.fr
@chimere_4septembre
editing: Mariko Omura