パリ・オペラ座の新作『PIT』、衣装はアライアのP・ミュリエがデザイン。

Paris 2023.03.31

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『PIT』初日のカーテンコールより。パリ・オペラ座バレエ団のコンテンポラリー作品に欠かせないダンサーたちが配役されていた。左から、マキシム・トマ、アレクサンドル・ガース、アクセル・イボ、アワ・ジョワネ、ロレーヌ・レヴィ、タケル・コスト、イヴォン・ドゥモル、ミカエル・ラフォン、キャロリーヌ・オスモン、(バイオリニストのペッテリ・イーヴォネン)、ルー・マルコー=ドゥルアール、テオ・ジベール、ジャック・ガツォット、ユーゴ・ヴィリオティ、ジュリエット・イレール、ジュリアン・ギュイマール、クレマンス・グロス、マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ、アントナン・モニエ。

3月17日から3月30日までパリ・オペラ座で踊られたコンテンポラリー作品の『PIT』。オハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踏団に所属していたボビー・ジーン・スミスとオール・シュライバーによるパリ・オペラ座のための初めての創作だ。タイトルは溝、穴、窪地などを意味すると聞くと、ああ、オケピと略称されるオーケストラ・ピットのピットか!と気付かされ、公演に際してその“オケピ”からステージにハシゴがかけられているのを見ると、ここで何かが起きるだろうかと勝手に予測をしてしまう。タネを明かせば、これはバイオリニストのためのハシゴ。この作品の音楽は途中セレスト・オラムの作曲も挿入されつつ、ジャン・シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47」の生演奏というわけで、バイオリニストがステージに上がるためだったのだ。

全体がダークカラーで、低い台がスポーツのリンクのように設けられているだけのシンプルさ。ダンスはこのリンク上にとどまらず、その周囲でも繰り広げられる。「PIT」という言葉に連想されるさまざまな要素が盛り込まれた作品には、バトルのようなデュオもあれば、激しいソロも……パリ・オペラ座でこうしたコンテンポラリー作品が踊られると、この手はシャトレ座あるいはシャイヨー劇場での舞台で踊られるタイプの作品では?と、指摘するバレエファンが少なくないが、ひとつ大きな決定的な違いがある。それは創作にかけられる費用だ。その中でも観客の目にわかりやすいのは舞台装置やコスチュームではないだろうか。

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中央、ロレーヌ・レヴィのロングドレスはレーシーニットが素材だ。photo:Yonathan Kellerman/ Opéra national de Paris

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マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ(右)の透け感を生かした白のドレスはレッドカーペットにも通用しそうな優美さ。左のタケル・コストはクリスタル・パイトの『Body and Soul』でおおいに名を上げ、いまやコンテンポラリー作品の創作に不可欠なダンサーのひとりである。photo:Yonathan Kemmerman/Opéra national de Paris

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『PIT』のコスチュームを創作者から任されたのは2年前アライアのクリエイティブ・ディレクターに就任し、今年1月に4回目のコレクションを発表したピーター・ミュリエである。配役されているのは女性7名、男性12名のコール・ド・バレエのダンサーたちで、コスチュームの色のメインは白と黒。女性はロングあるいはミニ丈のボディラインに沿ったフェミニニティあふれる、それでいて動きやすいドレスである。“格”が感じられるドレスばかり。途中、女性ダンサーのひとりが40年代のハリウッド女優を彷彿させる赤いドレスで登場するが、後ろを向くとウエストから下が逆Uの字型にカットされて裸のお尻と脚がむき出しなので、これには会場からクスリと笑い声も。男性はシャツかニットにパンツとこちらも基本的にとてもシンプルな衣装である。ピーターがかつてラフ・シモンズのメゾンで、メンズコレクションを任されていたことを彼らの衣装に思い出す人もいることだろう。「バイオリン協奏曲」が第3章に入ると、配役されているダンサー全員によるエネルギッシュな群舞がステージ上で展開する。モノクロームの舞台装置の中、コスチュームの効果もあいまって圧巻のシーンだ。

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左: ルー・マルコー=ドゥルアール。驚くべき身体能力を発揮する彼のどんな動きにもコスチュームはフィット! 右: ミカエル・ラフォン(左)とジャック・ガツォット。photos:Yonathan Kelleman/ Opéra national de Paris

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マリオンに押さえつけられているのはクレマンス・グロス。細い肢体にきれいに沿うブラックドレスは、スカート後方の長いスリットで動きやすさが得られている。photo:Yonathan Kellerman/ Opéra national de Paris

ダンサーたちの自由な動きにインスパイアされてデザインされたという衣装はしなやかな甲冑のようで、中にはアライアのアイコニックな素材が用いられているそうだ。コスチュームの製作にはアライアのメゾンのサヴォワールフェールが活用され、そのおかげでダンサーたちの身体のフォームやラインに沿う仕上がり。激しい動きにも乱れを見せないコスチュームはアライアのアトリエで縫製されたという。公演初日、オペラ・ガルニエの席を大勢のアライア関係者が埋めていたが、その中にはピーター・ミュリエはもちろんのこと、アトリエのプティ・マンらしき女性たちの姿も見られた。ミュリエ、そして彼女たちにも拍手を!

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リハーサルより。動きやすい稽古着で創作された振り付けだが、それに見事に対応するコスチュームをピーター・ミュリエがクリエイトしたのだ。photos:Yonathan Kellerman/ Opéra national de Paris

editing: Mariko Omura

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