ミュージアムで待つ発見の旅(2) 近代美術館でアンナ=エヴァ・ベルグマンの初大回顧展。
Paris 2023.05.27
戦後のヨーロッパのアートシーンで名を成したアンナ=エヴァ・ベルグマン(1909~87年)の、フランスにおける初の大回顧展がパリ市立近代美術館(MAM)で開催中だ。MAMは彼女の夫で20世紀を代表する抽象画家アンス・アルトゥング(1904~89年)の回顧展を2019年に行っている。
左: 展覧会場の入り口の写真。地質学に関心を抱いていたベルグマンは鉱物にも興味を示した。 右: 1946年に描かれた自画像。photos:Mariko Omura
MAMも含めて生前は世界各地で展覧会が開催されていた彼女。今回の回顧展にあたって、「独特な絵画言語を持つ彼女の作品の価値はジョージア・オキーフ、ソニア・ドローネーなどの女性アーティストたちのそれに匹敵すべきものであることを世間に知らしめる展覧会である」とMAMは語っている。アンナ=エヴァが夫と暮らし、仕事をした南仏アンティーブの家は彼らの遺言どおりアルトゥング - ベルグマン財団となり、昨年5月から冬を除いて一般公開されるようになった。ここでも彼女の作品を知ることができるけれど、作品に加え、財団からの提供の写真やデッサンなども含めて約200点近い展示のこのパリの回顧展で彼女の仕事を発見できる機会は逃せない。
左:『N°2-1953 Stèle avec lune』(1953年)。テンペラと金属箔。こちらは月。© Anna-Eva Bergman / Adagp, Paris, 2023 Photographie © Fondation Hartung-Bergma 右:『N°18-1956 Grand soleil』(1956年)。こちらは太陽。© Anna-Eva Bergman / Adagp, Paris, 2023 Photographie © Peter Mydske / Stortinget
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サブタイトル“A Journey Within”。内なる旅である。時代順の展開でイラストを生業としていた時期から展示は始まる。具象作品も初期は手がけていたが、1950年代には具象を放棄する決意をする。黄金比に興味を抱いた1946年頃から、この変化が彼女の中で芽生えていたのだ。彼女は出身地である北欧と、夫と多くの時間を過ごした地中海地方の風景を、シンプルを極めたフォルムで表現。抽象といえどシンボリック。それまでの絵画史のカテゴリーに当てはまらない特異なものだった。
左:『N°26-1962 Feu』(1962年) Fondation Hartung-Bergma © Anna-Eva Bergman / Adagp, Paris, 2023 Photographie © Claire Dorn 右: 『N°45-1971 Crête de montagne』(1971年) Musée d’Art Moderne de Paris© Anna-Eva Bergman / Adagp, Paris, 2023 Photographie © Laurent Chapellon – Key Graphic
テクニック面での彼女の特徴は金箔、銀箔、またアルミニウムや銅などの金属箔を使用したことだ。1940年代以降のことで、ノルウェーの教会で祭壇の後方に置かれていた中世の衝立がインスピレーション源である。また1950年代はテンペラ、1960年代にはビニールペイント、アクリルペイント……さらにはモデリングペーストというように、テクニックの追求に余念がなかった。自然のみならず宇宙起源論、天体、神話にも興味を持っていたという彼女。その世界をこの展覧会で発見しよう。
左: ノルウェー、パリ、アンティーブ。若い時代から1975年までの彼女を写真で紹介。 右: 小さなフォーマットの作品を集めて。photos:©︎ Pierre Antoine/MAM
左: 水中の小舟を描いた『GB 20-1957 Barque sous l’eau』(1957年)。Musée d’Art Moderne de Paris© Anna-Eva Bergman / Adagp, Paris, 2023 Photographie © Julien Vidal / Parisienne de Photographie 右: “透明な山”と題された『N°4-1967 Montagne transparente』(1967年)。Fondation Hartung-Bergman© Anna-Eva Bergman / Adagp, Paris, 2023 Photographie © Claire Dorn
展覧会最後の部屋は、1973年に夫妻でアンティーブに暮らし始めてから亡くなるまでの作品が主な展示だ。photo:Pierre Antoine/MAM
会期:開催中~7月16日
Musée d’art moderne de Paris
11, avenue Président Wilson
75116 Paris
開)10:00~18:00(火、水、金〜日) 10:00〜21:30(木)
休)月
料:15ユーロ
www.mam.paris.fr
editing: Mariko Omura