<手仕事をめぐる現代の冒険!> MHT×マリー・クリストフ、夢のジュエリー・コラボレーション。

Paris 2023.06.12

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ローズクオーツ、アクアマリン、エメラルドの鳩のイヤリング。

ワイヤーアーティストのマリー・クリストフが友人のジュエリーデザイナー、マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックからの誘いかけで、インドのジャイプールに向かったのは今年の1月。そして、3月にふたりは再びジャイプールのアトリエで作業を進めて、合計14点のコラボレーション・ジュエリーをクリエイトした。ゴールドのスレッドでマリーがフォルムを作り、それにマリーエレーヌが選んだ石をあしらう、という共同作業で創作されたジュエリーはすべて一点もので、5月24日から6月6日にニューヨークのギャラリー・ブティック「Creel and Gow」で展示発表された。マリーもマリーエレーヌも満足の仕上がりというジュエリー。その愛らしさはご覧のとおりである。

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左: ジャイプールにて、マリー・クリストフ(写真左)とマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック。 右: ふたりの友情からコラボレーション・ジュエリー・コレクションが誕生した。photos:Courtesy of Marie Christophe

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このコラボレーションはワイヤーとガラスビーズを用いてマリーが作ったジュエリーを見たマリーエレーヌに閃いたアイデアが出発点だ。

「彼女がよく作るシャンデリアも私には巨大なジュエリーに思えるくらいで、彼女から小さな作品をプレゼントされると私はブローチとして身に着けていたの。彼女の仕事って見ただけでは気付かないけど、私のように手仕事に関わる人間の目には膨大な仕事量が込められていることがよくわかるの。彼女からワイヤーのジュエリーをプレゼントされた時、これをプレシャスな素材で作ったら彼女の仕事の持つアーティスティックな価値に別の価値をプラスすることができるわ、って思ったのね」

マリーとマリーエレーヌの出会いは20年前に遡る。まだマリーがパリに暮らしている時代で、夫と休暇でジャイプールに滞在した時に共通の友人が紹介してくれたのだ。その時に、まるで昔からの知り合いのように親しみを感じたふたり。その後マリーエレーヌのファミリーが所有するシャトーのあるフランス南西部ジェルスから遠くない土地にマリーが引っ越し、マリーエレーヌがパリから来るたびに行き来する仲となった。そんなわけでジャイプールに滞在中、マリーエレーヌは人に会うたびに“ジェルスのお隣さんよ”と紹介。これはマリーを笑わせ、そのマリーの笑いをマリーエレーヌは楽しんだそうだ。

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トカゲ、亀、カブトムシのブローチ。マリー・クリストフは立体的な昆虫のフォルムをデッサンなしで直接ゴールドスレッドで作り上げる。それはマリーエレーヌのアトリエの職人たちを驚かせたそうだ。

「マリーは陽気でユーモアいっぱい。良い意味の軽さをもたらしてくれるの。これって彼女の大きなクオリティね。パリとは違ってジェルスの田園にはゆったりとした時間の流れがあって、ふたりしてリラックスして過ごすのよ。私も彼女も自然が大好き。だからふたりが興奮するショッピングというのは、ファッションなどではなく、植木屋さんで花の種や苗を探すことなの」とマリーエレーヌが語れば、マリーは「もともと私はマリーエレーヌのジュエリーの大ファン。同じセンシビリティがあって、お互い明るい色が好きで……。私は彼女の落ち着き、穏やかさが大好きよ。私たちの間には意見の対立もなく、スムーズで自然な関係ね。とりわけの共通の話題は自然、庭仕事。お互いの庭の写真や栽培のアドバイスなどをやりとりしてる。私が植木や花の担当なら、私の夫は大がかりな庭仕事の担当。だから、彼はマリーエレーヌが新たに庭で何かを手がける時に必要な道具を教えたり……これって田舎暮らしの人間の会話ね」と言って笑う。

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左: オウムのイヤリングにはレインボー・ムーンストーン。 右: アクアマリンが揺れるクラゲのイヤリング。マリーらしい曲線がなんともユーモラスだ。

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コラボレーションのジュエリー。それはマリーが通常はオブジェのフォルムを作るのに用いるワイヤーの代わりにゴールドのスレッドを用いてジュエリーの骨格を作り、マリーエレーヌが石を選ぶという作業でクリエイトされた。マリーエレーヌはいつも自分が使う22カラットだと柔らかすぎるので、マリーがジャイプールのアトリエに来る前に20カラットのゴールドスレッドを準備しておいたという。使い慣れた2本のペンチを持参して、アトリエで作業に臨んだマリー。

「ゴールドスレッドはワイヤーよりソフトなので扱いがずっと楽だった。太さは私が使うワイヤーの中でいちばん細いものと同じ。もっとも私が自分のアトリエで作業する時にはワイヤーの切り落としがたくさん散らばるのだけれど、さすがにゴールドでそんな仕事のやり方はできないので、必要な長さだけを……というように気を付けたわ。ジュエリーは小さいので、日頃作ってる大きな作品と違って身体的にもとても快適だった。最初に行った時は、デッサンなしでダイレクトにゴールドでジュエリーのフォルムを作って……。ゴールドスレッドを試すのに、作り慣れてる鳥のフォルムで始めたの。2回目の時はワイヤーで作ったたくさんのプロトタイプを持って行ったのよ。動物、小さな鳥かごやシャンデリアとか。テーマがあるのがいいということで、マリーエレーヌも自分もブランドで動物のチャームなどを作ってることから、ごく自然に“生き物”で、と意見が一致。彼女、一点ものなのだからと、とても美しい石を選んだのよ」

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左: アクアマリンとグリーントルマリンの孔雀。 右: ピンクトルマリンのハミングバード。

鳩、ハミングバードといった鳥、クラゲやタツノオトシゴなど海の生物、トカゲ、カブトムシ、亀……合計14点のジュエリーは、どれもとてもカラフルで繊細な詩情にあふれている。動物たちを彩るジュエリーは、ムーンストーンやトルマリンといったマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックのジュエリーではおなじみの石ばかりではない。鳩のイヤリングにあしらわれたのは彫りが施されたエメラルドだ。

「確かに私がこうした石を使うのは珍しいことね。50年代の古い石よ。昔一度使ったことがあるのだけど、エメラルドの葉って魅惑的だと思うの。それにこの鳩のイヤリングにとてもよく合っているでしょ。子犬のブローチに使ったのは小さなパール。そこにゴールドのポイントというテクニックが好きなのだけど、私のブランドのジュエリーにはふさわしくないので……。ルネッサンス期のジュエリーに羊のジュエリーがあるでしょ。それのちょっとした遊びバージョンをこの犬で作ってみることにしたの。こうしたコラボレーションのおもしろさって、自分の仕事ではできないことが可能なことね。モードは自由な表現の場のはずだけれど、最近はファイナンスの場となっていると思うの。雑誌を見てると、自由がないので悲しくなるわ。このコラボレーションは私と彼女にとって自分たちが楽しむ、ということがもともとのアイデア。そこから陽気さと微笑みをもたらすジュエリーが生まれたのよ。流行でもお金儲けでもなく、これは私たちふたりの夢が進めたコラボレーション。まったくマーケティングに無縁の品なのだけど、これらジュエリーに心を動かされる人は必ずいると思うわ」

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左: ピンクとグリーントルマリンのフクロウ。 右: 子犬のブローチ。コラボレーション・ジュエリーは合計14点あり、価格は9,000〜25,000ユーロ。

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ニューヨークのギャラリー・ブティック「Creel and Gow」ではマリー・クリストフのワイヤー彫刻展が以前から予定されていたそうで、コラボレーション・ジュエリーは『Travel to Jaipur』と題された展覧会の一部として紹介された。今回ジュエリーのテーマを決めたのは、2回目のコラボレーションを視野に入れてのことからだという。次はどんなテーマのジュエリーだろうか、いつ見ることができるのか。興味をそそられる。

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ニューヨークでの『Travel to Jaipur』の展示より。マリーのジャイプールの滞在の思い出から生まれた鳥の一輪挿しや、象のキャンドルスタンドなどが展示販売された。@mariechristophe

editing: Mariko Omura

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