<アールヌーヴォー再び その1> レコールで開催中のアールヌーヴォー・ジュエリー展。
Paris 2023.08.16
アールヌーヴォーのジュエリーの魅力をたっぷりと味わえる展覧会。左: ルネ・ラリック『シルフィード(空気の精)』(1900年頃) 中: ルイ・オーコック『女性とタコ』(1898年頃) 右: メゾン・ヴェヴェール/ウージェンヌ・グラサ『出現』(1900年) photos:(左)Tsuneharu Doi /Albion Art Institute、(中)Rossella Froissart 、(右)Mariko Omura
ヴァンドーム広場に近いダニエル・カサノヴァ通りにある「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」。開校と同時に宝飾品にまつわる入場無料の展覧会が企画され、現在は『アールヌーヴォーにみるジュエリーの変容、1880~1914年』展を開催中だ。9月30日まで続くこの展覧会を最後に、学校はモンマルトル大通りへと引っ越す。
展覧会は「夢のような自然」「開花」「抽象」の3章仕立てで、アールヌーヴォーのジュエリーの傑作を展示している。陶工やエナメル師などを含むフランスのアーティスト46名によるジュエリーを中心に、宝飾芸術が開花した19世紀末からアールデコ期までの約100点を展示しているので、アールヌーヴォー・ファンには見逃せない。この時期にジュエリーに使われるようになり進化したガラスやエナメルといった新しい素材についても語られている。展示されたジュエリーに込められたファンタジーに酔わされる展覧会だ。
用いられる石の高価さではなく制作者の創造性が優先されたのがアールヌーヴォーのジュエリー。ベリル、ペリドットといった色石、コーラルやアンバーなどオーガニック素材、ガラスなどが高級宝飾品に用いられることになった。また透明でカラフルな光をもたらすエナメルも、アールヌーヴォーのジュエリーには不可欠といえる素材となった。左はルネ・ラリック作のペンダント『冬景色』(1898年頃)。ゴールド、エナメル、パール、ガラスが使われている。右はジョルジュ・フーケ作のペンダント『海の妖精』(1900〜1905年頃)。ゴールド、エナメル、オパールのモザイク、ダイヤモンドが使われている。photos:(左)Mariko Omura、(右)Tsuneharu Doi /Albion Art Institute
ジュエリーの展示に合わせ、ベル・エポック期の雰囲気が会場に再現された。photos:Mariko Omura
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第1章「夢のような自然」
1880年にフランスを中心にヨーロッパに起きた象徴主義に、ジュエリー作家たちも創造の自由へと誘われた。神話や寓話などがインスピレーション源となり、ルネ・ラリックのブローチ『スフィンクス』やジョルジュ・フーケのドレスの前身頃に飾る装飾『海蛇』のように、怪物や交雑種の生き物たちが幻想の世界を輝かせたのだ。
左: ジョルジュ・フーケの胴着の前飾り『翼を持つウミヘビ』(1902年) 中: ルシアン・ファリーズのペンダントトップ『連なるドラゴン』(1885年頃) 右: ルネ・ラリックのブローチ『女性の横顔と蛇』(1903〜1905年) photos:(左・中)Tsuneharu Doi/Albion Art Institute、(右)Karine Faby/Musée Lalique
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第2章「開花」
植物学が進み、科学知識が発達した時代である。芸術家たちも生物に関心を抱くようになり、科学と芸術の出合いがあった。蝶の羽を広げる女性をルネ・ラリックがデザインしたように、変容という古代からのテーマがジュエリー界に戻り、こうした想像上の生き物を表現するべく、芸術家たちは動物のツノやエナメル、バロックパールといった素材に目を向けることになる。
左: ルネ・ラリックの4匹のトンボのブローチ(1903〜04年頃)。 中: ガストン・ショパールの蝉の櫛(1903年頃)。 右: Maison Boucheron / Lucien Hirtzのグリーンゴールドとエナメルのブローチ『森』(1910年)。 photos:(左)Musée des Beaux Arts de Quimper、(中)©Les Musée des Arts Décoratifs / Jean-Marie Delmoral、(右)Benjamin Chelly
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第3章「抽象」
自然をリアルに再現するのではなく、クリエイティビティを駆使した抽象的なジュエリーにアーティストたちが取り組み、自然に新しい解釈を加えた。アールヌーヴォーのジュエリーを語る時に欠かせないルネ・ラリックの作品は前の2章でも登場するが、この第3章で紹介されているブローチは作風が異なり驚くほどモダンなことに驚かされる。
左: モーリス・ロバン&Cie.のブローチ(1900年頃)。 中: ルネ・ラリックのブローチ(1910〜15年頃)。 右: E.コラン&Cie. の海藻ペンダント(1900年)。 photos:(左・右)Michael Tropea ©The Richard H. Driehaus Collection、(中)Karine Faby/ Musée Lalique
会期:~2023年9月30日
L’Ecole des Arts Joailliers
31, rue Daniel Casanova
75001 Paris
開)12:00~19:00(火、水、金、土) 12:00〜20:00(木)
休)日月
入場無料
www.lecolevancleefarpels.com
editing: Mariko Omura