オペラ・ガルニエの正面をアーティストJRの作品がすっぽり覆った!

Paris 2023.09.13

9月6日の朝、ガルニエ宮が突然モノクロームの廃墟に。屋根の上に燦然と輝いていたアポロン像の姿も遠くまで行かないと目に入らない。この衝撃!! パリ・オペラ座の招きで、アーティストのJR が外観の修復工事の現場に施したインスタレーションである。パリではルーヴル美術館、ローマでは市庁舎のパラッツォ・ファルネーゼなどで彼が仕掛けたように、白く光り輝く洞窟は見慣れたガルニエ宮の外観とはまったく異なるパースペクティブへと見るものを誘う。

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9月6日に開幕したパリ・オペラ座とJRのプロジェクト。Retour à la caverne。©JR

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第1幕『洞窟への回帰』

オペラよろしく2幕展開のインスタレーションで、工事現場の足場をそのサポートに活用している。第1幕となるインスタレーション「Retour à la Caverne(洞窟への回帰)」は9月25日まで。19世紀のロマン派の画家ユベール・ロベール風で、まるで壮大なオペラの舞台装置のよう。ビジュアルのインスピレーションは古代ギリシャに人間の知覚と世界の認識について哲学者プラトンが説いたイデア論「洞窟の寓話」に得たものだ。現実と非現実。19世紀の建築物ガルニエ宮、工事用の足場が洞窟を囲んでいる。

9月25日までの2週末(9月9日&10日、16日&17日)の夜9時15分から10時までの45分間は、この覆いの洞窟部分がスクリーンと化してプロジェクションが開催される。オペラ座で上演されたバレエやオペラを広場から無料で誰もが見ることができるのだ。演劇や舞踏は劇場が生まれる紀元前6世紀より以前は、洞窟で行われていたことが由来だ。9月9日の初日はJRが洞窟の一部に隠れている扉から登場し、このプロジェクトの解説からスタート。そして洞窟部分に、2005年にパリ郊外で起きた暴動事件をテーマに彼が2014年に製作した短編『Les Bosquets(レ・ボスケ)』が上映された後、今年5月にオペラ・バスティーユで踊られたモーリス・ベジャールの『火の鳥』が上映された。9時前からオペラ座広場はもちろん向かいの通りにも観光客も含めて大勢が集まり、大盛況。お向かいのホテルの客室が、この催しの最高の観客席となっていた。

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プログラムは9月9日がJRの『レ・ボスケ』、モーリス・ベジャールの『火の鳥』。9月10日はモーリス・ベジャールの『ボレロ』、オペラ『ホフマン物語』の抜粋、ダミアン・ジャレの『Brise-Lames』。9月16日はアンジュラン・プレルジョカージュの『ル・パルク』の抜粋、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの『Die Grosse Fuge』、オペラ『ラ・トラヴィアータ』の抜粋。9月17日はホフェッシュ・シェクターの『The Art of Not Looking Back』、オペラ『Les Indes Galantes』の抜粋。photo:Mariko Omura

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『レ・ボスケ』はパリ郊外のクリシー・モンフェルメイユで撮影された18分のビデオ。ニューヨーク・シティ・バレエ団のダンサーたち、ストリートダンス出身のリル・バックも出演。photos:Mariko Omura

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9月9日に映写された『火の鳥』(写真)を始め、今回この洞窟に映写されるバレエは『ル・パルク』以外はどれも短い作品なので全編を鑑賞できるのは幸運だ。なおこの『火の鳥』は日本では9月17日にNHK BSプルミエールシアターで放映される。photos:Mariko Omura

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第2幕『洞窟の中』

第2幕のインスタレーション「洞窟の中」は11月から。ガルニエ宮を覆うのは「Mano Habillis (器用な手)」というタイトルされた緞帳に変わる。その制作を託されたのはle19Mに入居するシャネルのメゾンダールのひとつ、刺繍のアトリエ モンテックスだ。これは参加型緞帳。9月15日から10月15日までパリ19区のle19M隣接の新しいスペース「la Parcelle」にてワークショップが合同で開催され、8歳以上なら誰でも無料で緞帳の刺繍装飾に参加が可能(要予約)である。参加者は刺繍の丸枠に手形を写し、そこにアトリエ モンテックスの職人などから教えを受けながら刺繍を施す。終了後それが撮影されて緞帳にプリントされるという仕組みだ。この1時間のセッションの後、参加者はJRの仕事で有名なスピード写真で撮影され、その写真のモノクロプリントと自分が刺繍した手形を持って帰ることができる。ガルニエ宮の正面に掛けられる緞帳の装飾にこうして参加できるって、なんだか楽しそう!

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左: 「Mano Habilis」はJRとle19Mによるプロジェクト。ガルニエ宮を覆う緞帳の刺繍に参加するには予約が必要だ(www.le19m.com/programmation) 右: JR © Grégoire Machavoine

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パリ19区のle19Mに隣接するla Parcelle(ラ・パルセル)は2024年にオープンするカルチャー・ガーデン。© Sophie Schiano di Lombo

editing: Mariko Omura

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