セルジュ・ゲンズブールが暮らした家、ついに一般公開開始。

Paris 2023.10.03

パリ7区のヴェルヌイユ通り5番地ビス。セルジュ・ゲンズブールが1969年から亡くなるまで暮らした場所だ。塀にあふれる落書きで番地を知る必要なしに、家は見つけられる。彼の生前、外の呼び鈴を好奇心で押した人は少なくないという。中から彼が顔を出すのでは?という淡い淡い期待を抱いて……。1991年3月に彼が亡くなって以来閉ざされていたが、娘シャルロット・ゲンズブールの意思により9月20日から一般公開(有料・要予約)されている。これと同時にミュージアム(有料・要予約)、カフェバー、書店・ブティックも家の向かい側にオープンした。

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ヴェルヌイユ通り5番地ビスで塀の右上から頭を覗かせているのが寝室。家そのものは意外とこぢんまりした広さだ。©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

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この家に生まれたシャルロット・ゲンズブール。着ているのはサンローラン・パル・アンソニー・ヴァカレロ。©Jean-Baptiste Mondino, 2023

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メゾン・ゲンズブール

1991年にセルジュ・ゲンズブールが亡くなり、そこで時間が止まった家。そのままの状態に保たれた2フロアを、オーディオガイドから流れるシャルロット・ゲンズブールによる解説(英語、フランス語)を聞きながら見学するのだ。

この家に生まれ、母ジェーン・バーキンが彼と離婚するまでの間をシャルロットはこの家で暮らし、その後は週末にここに戻って……。「コレクターの家であり、孤独な人の家。父は孤独は好んでいなかったけれど」。こんなふうに彼女が消え入りそうな声で静かに語る家、そして父、そして家族の懐かしい思い出とエピソード。見学中、写真撮影は禁じられているので訪問者は彼女の語りに耳を澄ませ、目の前の空間やオブジェに目を集中させることになる。部屋から部屋の移動にはピアノ曲が流れ、最後は彼女の声にショパンの曲が重なり、30分の訪問が感動的に終了する。

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左: 1985年に撮影されたセルジュ・ゲンズブール。 右: 見学の始まり。鉄門扉を開け、右手の扉から入るとリビングルームが目の前に登場する。photos:(左)©Tony Frank、(右)©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

1階はキッチンとリビングルームが占めている。見学者はこのリビングルームにまず最初に案内され、次には反対側からも。ひとつのスペースでありながら、最初に目にするリビングルームは玄関からすぐで彼が仕事関係者などを招き入れたパブリックなスペースであり、家の奥から見るリビングルームはシャルロットが語るピアノの思い出を聞きながらの見学となり、プライベートな面が強い。バーカウンターの上の灰皿には、喫いかけのジタン!

キッチンの奥に見える扉は、離婚したジェーンがシャルロットを連れて家を出た時に完全に閉じられてしまったと語られる。その扉の先は賃貸していた子ども部屋だったそうだ。貸主の都合かゲンズブールの希望だったのか……。キッチンには誕生年1928年のシャトーブリアンなどゲンズブールにとって思い出の年のワインのボトル、付けっ放しだったというテレビ……。ジーンズだけをはき裸足の父がカフェを飲む姿を語り、このキッチンで父とふたり話すことなくテレビを見て、といった思い出がオーディオガイドから流れる。

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リビングルーム。これは彼が亡くなった年に撮影された写真だが、いまも変わらぬ状態だ。ゲンズブールがこの家を見初めたのはブリジット・バルドーと一緒の時代のこと。購入できた時はジェーン・バーキンがパートナーだった。© Pierre Terrasson, 1991

2階にはわずかなアイテムで構成されたワードローブ、ファックスを備えた仕事部屋、かつてジェーンの部屋だったという人形の部屋、広いバスルーム、そして通りに面した寝室。仕事部屋はシャルロットも時間を過ごせた場所だ。家族揃って美術館や映画館にゆくことがなかったけれど、ここですべてを学んだと彼女は振り返る。バスルームではゲンズブールが浴槽よりビデで身体を洗うことを好んだエピソード、母と義姉ケイトと3人の入浴の思い出。2階で最後の訪問となるのが、ゲンズブールが亡くなっているのを彼女が発見した彼の寝室だ。この特別な部屋について、シャルロットがどんなことを語るのか……。これはぜひ実際に家を訪問して自分の耳で確認してみよう。

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2階の仕事部屋と廊下。どちらも1991年の撮影だ。© Pierre Terrasson, 1991

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ゲンズブール・ミュージアム、カフェ・レストラン、書店・ブティック

メゾンの訪問者がオーディオガイドを見学前に受け取るのは、家の斜め向かいの14番地の受付にて。ここは書店・ブティックの入り口でもある。ゲンズブール・ミュージアムの入り口はその左隣にあり、自宅訪問を終えた人はこちらへ。ミュージアムに入ると自宅の延長のような印象を受けるのは、セルジュが好んで自宅に敷いていた牡丹と睡蓮のモチーフのカーペットがここにも続いているゆえだろう。地上階は8つの時代に分かれてゲンズブールの仕事と人生を紹介している。8つの時代区分の1は1928〜1954年で絵画から音楽へと関心が移った若い日々。2は「1954~1957年。Arthur CircusからPoinçonneur des Lillasまで」。3は「1958〜1964。La recette de l’amour fou からCouleur cafeまで」。4は「1965〜1968 Poupée de cire からInitials B.Bまで」。5は「1968〜1971。Je t’aime  moi non plusからMelodyまで」。6は「1972〜1978年。La Décadanse からSea Sex and Sunまで」。7は「1979〜1983年。Aux armes et caeteraまで」。8は「1984年〜1991年。Sorry AngelからMon légionnaireまで」。最初から時代を追うのもいいが、歌のタイトルにピンとくるところから展示品を見はじめるのもいいだろう、地下は特設展会場となっている。オープニング企画は『Je t’aime……moi non plus』だ。おなじみの1969年に発表され、放送禁止スキャンダルを巻き起こした話題曲。その世界にここでどっぷりと!!

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左: ゲンズブールの横顔をかたどったネオンがミュージアムの入り口の目印。 右: 地下では特別展の開催中。photos:©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

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8つの時代に分け、それぞれ公私ミックスの品々を展示。ゲンズブールの遺品でミュージアムの所蔵品となった25,000点からのセレクションだ。photos:(左)©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023 (右) Mariko Omura

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展示の奥。彼がヴェルヌイユ通りの画廊で気に入って購入し、アルバム『くたばれキャベツ野郎』のインスピレーション源ともなったクロード・ラランヌの彫刻『キャベツ頭の男』が。ミュージアムの廊下の絨毯は、自宅と同じ『pavots』。19世紀のデッサンをもとに1950年代にCodimat Collectionが制作したもので、いまもオーダーが可能だそうだ。photo:Mariko Omura

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ゲンズブールのマリオネット。©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

出口のサインをたどって上がると、そこはカフェ&ピアノバーの「Le Gainsbarre(ル・ゲンズバール)」だ。ここはミュージアム見学をしなくても、通りの入り口からアクセスがある。音楽界でのキャリアの始めがピアノ伴奏者だったことにインスパイアされ、ここは20時からはピアノバーとなる。インテリアは素材をはじめ、彼が自宅で展開した美意識をここに再現。メニューの内容は英国のティールームやホテルのルームサービスがイメージとなっている。フィンガーサンドイッチ、ロブスターロール、トリュフ・クロック・ムッシュといった軽食だ。夜はカクテルのお楽しみ。彼が愛したオテル・ラファエルの英国バーやオテル・リッツのヘミングウェイ・バーの雰囲気にここで浸ろう。

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ゲンズブールが隣に座っていそう、あるいはピアノを弾いているのが彼だった……そんな感じのバーで、カクテルを一杯! photos:©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

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ホテルのルームサービス風という粋なメニュー。生野菜、フィンガーサンドイッチ、ル・パリジャン(ハムとバターのバゲットサンド)など。夜は牡蠣やグラブラックス・サーモンなどをお酒とともに。photos:©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

通りから入る書店&ブティック。予約なしで誰もが彼の世界をシェアできる場だ。イヴ・サンローランのストライプのジャケット、レペットの白いジジ、それにジーンズや彼のワードローブからインスパイアされたファッションアイテムが販売されている。自宅訪問の予約は年内はすでにいっぱいで、ミュージアム訪問はまだ可能性があるかもしれない。せめてここで買い物をし、奥のゲンズバールでカクテルを飲んで……。

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コンセプトストア的に扱うアイテムの分野は広い。レコード、書籍、ボンボン、写真……アイコニックなサンローランのストライプジャケットも販売。photos:©Alexis Raimbault pour la Maison Gainsbourg, 2023

Musée de la maison Gainsbourg
14, rue du Verneuil
75007 Paris
開)9:30~20:00(火、木、土、日) 9:30〜22:30(水、金)
休)月
料:25ユーロ(メゾン+ミュージアム)、12ユーロ(ミュージアム)
www.maisongainsbourg.com

editing: Mariko Omura

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