富豪も画家もクチュリエも愛でたルイ・フーケのコンフィズリー。
Paris 2023.10.26
ルイ・フーケのイニシャルをLFを組み合わせたシックなロゴが新しいブランド・アイデンティティー。
チョコレート、キャラメル、パート・ド・フリュイ……これらコンフィズリーは創業を1852年に遡るメゾン「Louis Fouquet(ルイ・フーケ)」でおなじみの味だ。そのルイ・フーケがモンテーニュ大通り6番地に新しいアイデンティティーでブティックを開いた。なお、シャンゼリゼ大通りとジョルジュ・サンク通りのコーナーに赤いテントを張り出しているカフェ・ブラッスリーはフーケッツであって、フーケではない。これからお話するフーケとは無縁であると覚えておこう。
左: チョコレートのボンボンは約50種。どれも上品な味わいでひとつ、またひとつ……。 右: フレッシュな果物の果汁が凝縮されたパート・ド・フリュイ。
フランスの甘いもの好きがその名を聞いただけで、目を輝かせるフーケ。その物語はルイ・フーケがパリに1852年にブティックを設けたことから始まる。場所はラフィット通り36番地である。いまはオフィス通りだけれど、第二帝政期にあっては並びのペルティエ通りにオペラ座があり、その界隈には銀行家など裕福な新興ブルジョワたちが多く暮らしていた。19世紀後半になれば印象派の作品を扱う画廊などが増え始め……クロード・モネは自分で見つけたのか、画商に贈られたのがきっかけかフーケのスミレ味のボンボンに目がなかったそうだ。新しいブティックの壁には藤田嗣治、クリスチャン・ディオール、ガートルード・スタインなどフーケファンの写真が飾られている。成功の秘訣はハイクオリティの素材と手間暇かける独自の製法。そのサヴォワールフェールは創業から現在も受け継がれ、製造アトリエではプラリネ用の銅製の大鍋がいまなお活躍中。卓越した職人技を永続させている企業に与えられるEntreprise Patrimoine Vivant認証を得ている。
モンテーニュ通りの新しいブティック。左: フーケファンのセレブリティの写真が壁を飾る。1928年にフランソワ・プルミエ通りにもブティックがオープン。周囲のクチュールメゾンは顧客のためにフーケのコンフィズリーを欠かさなかったそうだ。 右: クリスタルの容器を乗せた丸テーブルが中央に置かれ、まるで小さな宝石店に入ったような高級感漂うブティック。photos:Mariko Omura
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20世紀初頭にオーナーがミマール家に変わり、名称が歴史の途中でL.フーケからフーケに変わったけれど、今年2023年、創業者のフルネームであるLouis Fouquetをブランド名とし、掲げる。そして1928年に作られたイニシャルLFのロゴにインスパイアされた新しいロゴがパッケージに蘇った。また創業以来エンブレムとなっているヘーゼルナッツを手にするリス(アンジェ地方でフーケはリスを意味する)のErnest(エルネスト)にも、スポットが当たることになった。ノエルコレクションは「森とリス」という冬物語で、エルネストが主人公である。モンテーニュ通りのブティックに入れば、パート・ド・フリュイやチョコレートなどのパッケージ上の愛らしいリスの姿に目を奪われる。ナッツ類でびっしり覆われたチョコレートタブレットも裏を見ると、あ、リスが2匹! 洗練された味と可愛いパッケージ……これからはお土産探しに迷わない!
まるで布製のような箱の手触りが贅沢感を醸し出すパッケージング。リスのエルネストの姿とともにルイ・フーケの名前と味を記憶する人も少なくない。ブティックの販売員の胸元にもリスのブローチ! photos:Mariko Omura
ノエルコレクション「森とリス」から。サパン・タブレット(16ユーロ)もおなじみ丸ボックスに詰めたチョコレート(34ユーロと58ユーロ)も、パッケージは雪の森に遊ぶリスだ。
editing: Mariko Omura