Hot from PARIS いまパリで起きているコト パリオリンピックを控え、セーヌ川で問題発生?
Paris 2023.11.19
パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。
オリンピック・パラリンピックの開会まで1年を切った。昨冬、抽選で始まったチケット販売も、7月から専用サイトでの通常販売が開始。開会式のファーストリハーサルやテストイベントも行われ、パリではオリンピックへの関心が急上昇。なにしろアンヴァリッド、トロカデロ、エッフェル塔周辺と、会場には中心地の名所旧跡がずらり。会期中の市内の混雑を心配し、むしろ自宅を人に貸してパリ脱出を計画する人もいる。
会場の中でも主役級の存在は、史上初の野外開会式の舞台となるセーヌ川。さまざまなスペクタクルが繰り広げられるセーヌ川を、1万5,000人のアスリートを乗せた船団がそろって航行する。ノートルダムやルーヴルを経てエッフェル塔までの6kmc、観覧席のチケットは最高額2,700ユーロに上る。競技では、トライアスロンやマラソンスイミングの舞台となり、スタートはアレクサンドルⅢ世橋を背景にセーヌ川に飛び込む演出だ。
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ところが、8月に開催されたテストイベントで思わぬ問題が浮上した。オープンウォータースイミングの大会が水質悪化で中止となったのに続き、男女混合とパラトライアスロンの水泳がキャンセル、ランとバイクのみのデュアスロンに変更されたのだ。大会組織委員会会長のトニー・エスタンゲは、「心配は不要。セーヌ川の水質は毎月改善されている」とし、セーヌ川での水泳競技に変更はないと語ったが、不安は拭いきれない。
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さらにもうひとつ、オリンピックとセーヌ川の関係に影を落とすのは古本などを売る屋台、ブキニストの存在。セーヌ川でのイベントと競技が続く大会期間中、安全対策のためパリ警察がブキニストたちを移転させる意向を発表すると、大きな反発を呼んだ。ただでさえ、コロナ禍の煽りや世代交代で数が減っているブキニストは、ユネスコの世界遺産でもあるパリの象徴。引っ越し費用やボックスの修理費をパリ市が負担すると申し出ても反発は収まらず、移転反対の署名運動は8月末の時点で13万人を超えている。
パリの歴史と文化遺産をアピールし、セーヌ川を前面に押し出そうというオリンピック・パラリンピック。セーヌ川と切り離せない存在であるブキニストをめぐる論争は、なんとも皮肉なエピソードだ。
●1ユーロ=約161円(2023年11月現在)
*「フィガロジャポン」2023年11月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)