1800年創業のショコラトリー、ドゥボーヴ&ガレの本店へ。
Paris 2023.12.28
1800年に創設されたショコラトリーの「Debauve & Gallais(ドゥボーヴ・エ・ガレ)」。この夏以降、日本で買えなくなったのを残念に思っている人も多いのではないだろうか? フランスの国家財産的存在であるメゾン。最近、半円のフォルムのパリの本店内は素材など創業当時の高級感を蘇らせ、また紋章もパッケージングも刷新された。あらためてその歴史をおさらいしてみよう。
左: 基調となるダークブルーの色は変わらず。パッケージングが一新された。 右: マリー・アントワネットの肖像画とメゾンの名物ピストルのブルーのボックス。photo:(右)Mariko Omura
ルイ16世付きの薬剤師のシュルピス・ドゥボーヴが創業したショコラトリーである。7区のサン・ドミニックで歴史を始め、1819年に、貴族が多く暮らすフォーブル・サン・ジェルマンのサン・ペール通りにブティックを開く。それからいまにいたるまで、同じ場所で営業を続けている。かつてのナポレオン1世の建築家が設計した店内は1984年に歴史的建造物に指定されていて、当時の柱や家具がいまも昔のままに。"ドゥボーヴ ・エ・ガレ"となるのは1823年に薬剤師の甥ジャン=バティスト・オーギュスト・ガレが事業に参加してからのことだ。皇帝に愛され、1814年の王政復古後はルイ18世、シャルル10世、ルイ・フィリップの王室御用達のショコラトリーとして名を馳せた。王家の紋章である百合の花がチョコレートに描かれているのは、それゆえである。
1819年から同じ場所で営業を続けているドゥボーヴ・エ・ガレ。
アーカイブの写真。いまもほとんど店内の様子は変わらず、19世紀初頭にタイムスリップ!
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なんといっても有名なのはピストル・ドゥ・マリー・アントワネット。頭痛持ちのマリー・アントワネットが薬の味にムカつきを覚えると薬剤師のドゥボーヴに訴えたことから、その物語は始まる。王妃はウィーンでおなじみの飲むチョコレートを愛し、またチョコートが健康に良いこともあり、ドゥボーヴは薬をカカオバターとミックスして金貨の形の固形にまとめたのだ。チョコレートは飲むものとされていた時代に、こうして齧るチョコレートが誕生したのだ。
現在ブティックに並ぶピストルの味は9つ。オレンジの花の味はリラックス効果があり睡眠の質を上げる、ヴェルヴェーヌ味は消化を助ける、バニラ、カフェ......ドゥボーヴによるとそれぞれ健康上の利点がある味だそうだ。ピストルの上には王妃のジュエリーコレクションからインスパイアされた9種のモチーフが刻み込まれている。ピストルは1枚から購入でき、また詰め合わせは、自分好みの味を選んで詰めてもらうこともできる。最近そのパッケージングが新しいバージョンに。空色のボックスにストライプのリボンがかかっている。リボンはヴィジェ・ル・ブランが1783年に描いた肖像画の中で、マリー・アントワネットが胸元に飾っているリボンからのインスピレーションだ。
ピストル・ドゥ・マリー・アントワネット。サン・ペール通りの本店では1枚ずつ販売している。ブルーのボックス入りは25ユーロ〜。
タブレットはさまざまな産地のカカオ、しかも高いパーセンテージである。ジャン=バティスト・オーギュスト・ガレは1820年に帆船でベネズエラまでカカオを求めて出向いていき、パリに戻った折にはカカオ産地についての書を著している。彼はまたミルクの水分を抜く方法の特許も申請するなど、チョコレートの歴史に貢献した。いま販売されているのは産地がペルー、ベネズエラ、コンゴなどのタブレットで味は15種。封筒状のパッケージに包まれていて、黄色、紺色、グリーンなど中身によって色が異なる。どれもとても綺麗なので、味もさることながら、パッケージで迷いそうだ。なお食べ急ぐあまり、タブレットの表面に描かれたモチーフを見逃した!ということのないように。
タブレットは14.50ユーロ。ミニサイズもある。4枚セットは26ユーロで販売している。
ボンボン。本店ではひとつずつ好みの味を選べる。オンラインショップではできないことだ。photo:(上)Mariko Omura
半円形のお店の中、カーブに沿ってケースに並ぶチョコレート。ボンボンもトリュフもおいしそうに誘いかけてくる。ナポレオン1世のために創作されたという、キャラメライズされたアーモンドをブラックチョコレートでコーティングしたクロックアモンドも気になる。メゾンのモットーは詩人ホラティウスの言葉で「健康によく、おいしい」。これを口実に、たくさん買ってしまいそう。
Debeauve et Gallet
30, rue des Saints-Pères
75007 Paris
営)9:30〜19:30(月〜金) 10:30〜19:30(土) 11:00~18:00(日)
無休
www.debauve-et-gallais.fr
@debauveetgallais
editing: Mariko Omura