彼女たち13人の素敵な暮らしを紹介。 アーレムデザイナー、緑やオブジェが飾られた最上階のアパルトマン。
Paris 2024.05.01
アイウエアデザイナーが住む静謐な美的空間は、彼女が作るプロダクト同様に、機能的で穏やか。パリの空を感じながら心地よい風に癒やされる。
Ahlem Manai Platt
アーレム・マナイ・プラット/アーレムデザイナー兼オーナー
長い間ロサンゼルスで暮らしていたアーレム・マナイ・プラットが、故郷パリに戻ってきたのは2021年のこと。生まれ育った7区のエッフェル塔近くを歩いていた時、閑静な住宅街の一角にある古いアパルトマンを見つけたのがきっかけだったという。
「見上げたら緑が生い茂る上階のテラスが目に飛び込んできて、都会のオアシスのようなアパルトマンにひと目惚れ! 最上階が空いていると聞いて、コロナ禍で内見も叶わなかったけれど、すぐにサインしたの(笑)」
アーレムがひと目惚れした開放的なテラスは、多くの植物であふれている。
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クラシックな造りだったため、間取りから変えたいと8カ月かけてリノベーション。20年の付き合いである建築家の友人に相談しながら、アーレムとパートナーが内装を手がけた。なかでも1カ月かけて改装したという壁には、アーレムらしい細やかな美意識が宿っている。壁や柱の角を取って丸みを帯びた形状に仕上げ、漆喰の色ムラでニュアンスを演出した。エントランスやキッチンなど、静謐なのに温もりを感じさせる壁面は、そこに飾られるアート作品を引き立てている。
パリのデザイナーチーム、ピエール・オーギュスタン・ローズの有機的なソファやチェアがリビングの主役。愛犬アトラスものんびりと横たわる。
長い大理石のキッチンカウンター上にも、アート作品を飾って。奥の大きな窓からはエッフェル塔の先端が見える。
「ダイニングや仕事部屋の絵画は、アーティストのリチャード・ザイノンが自身で持ってきてくれたもの。暖炉周りに飾っているのは陶芸作家の野口寛斉の作品で、日本で彼の家を訪れたこともあるくらいお気に入り」
エントランスに飾られた、ダン・リースのアート。
野口寛斉の陶器を暖炉上に飾って。
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アーレムの研ぎ澄まされた感性で収集された、さまざまなアートやオブジェ。作風が混在しているのにミニマルで洗練された空間に仕上がっているのは、直線を生かしながら色彩の配置を追求しているから。また、アイウエアの収納棚など機能的に工夫を凝らした家具をオリジナルで手がけるほど、細部までこだわり尽くしている。アーレムの洗練された美意識は、空間から彼女がデザインするプロダクトまで、すべてに貫かれているのだ。
イームズのアームチェアやリチャード・ザイノンのアートを飾った仕事部屋。
キャリーケース型で持ち運び可能な棚に今季のアーレムのアイテムを並べている。
パリ生まれ、ミュウミュウやアクネステュディオズを経て、2014年にロサンゼルスでアイウエアブランド、アーレムを立ち上げる。フランスのオヨナの職人による手作業で生み出される洗練されたアイウエアが人気で、現在はアメリカに3店舗を構え、昨春パリに旗艦店をオープン。日本ではグローブスペックスで展開。www.ahlemeyewear.com
*「フィガロジャポン」2024年2月号より抜粋
photography: Mari Shimmura text: Momoko Suzuki