ヴェルサイユ宮殿、ミス ディオールの香りとエヴァ・ジョスパンの作品。

Paris 2024.08.02

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オランジュリー内にエヴァ・ジョスパンによる3.50x107メートルの作品『Chambre de soie』(2021-24)。©️Didier Saulnier

『エヴァ・ジョスパン ヴェルサイユ』と題された展覧会が、ヴェルサイユ宮殿で9月29日まで開催されている。会場となっているオランジュリーはオレンジやレモンといった柑橘類やオリーブなどあたたかい土地で育つ植物を冬場に納める温室の役割を果たす建物。植物が木製のボックスに入れられているのは移動用で、夏場は建物の外の庭へ出され太陽を浴びるのだ。その時期にこのスペースを活用しての展覧会である。日頃訪れるのが難しい場所でもあるので、この機会にぜひ。

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マンサールが建築したオランジュリー。 photography: Mariko Omura

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オランジュリーの外の花壇で夏の太陽を浴びる柑橘類。photography: Mariko Omura

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ここで展示されているエヴァ・ジョスパンの作品は『Chambre de soie(シルクの部屋)』。このタイトルに、ディオールの2021/22の秋冬オートクチュールでショー会場の3方の壁を飾った作品を思い出す人もいるだろう。森や岩、架空の建物など幻想的な風景画がインドのムンバイにあるチャーナキア工房とその学校の生徒たちによって刺繍された高さ3.5メートル、長さが90メートルの作品だった。オランジュリーの壁に直線的に展示されているのは長さが107メートル。ふたつのパネルによって長くなった部分はこの展覧会のためにヴェルサイユをテーマに新たに制作されたものである。天井の高さ13メートルという建築物に気圧されない、壮大な刺繍のパノラマだ。

自然、散策、妄想が込められた建築物に心惹かれるエヴァ。彼女がこのふたつのパネルに描いたのは"忘れられたヴェルサイユ"である。インスピレーション源はテティスの洞窟の版画だった。これはルイ14世の時代に庭の中に家のような形で建築された人工洞窟で、城の北翼の建築に際して壊されてしまったのだ。ちなみにその洞窟の中で守られていた3群の彫刻は18世紀に画家で造園家ユベール・ロベールによるアポロンの浴場の植え込みに移されて、いまも見ることができる。オランジュリーを出たら、見に行ってみるのもいいだろう。

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『エヴァ・ジョスパン ヴェルサイユ』展のために新たに制作されたパート。photography: Mariko Omura

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"忘れられたヴェルサイユ"の一部。会場では時間をかけて細部まで見られる。photography: Mariko Omura

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2021年7月にディオールのクチュールコレクションのショー会場で発表された作品『Chambre de Soie(シャンブル・ドゥ・ソワ)』はヴァージニア・ウルフの著作『自分だけの部屋(Une Chambre à Soi)』(1929年)に掛けた命名だ。女性が経済的そして精神的に独立するためには、鍵のかかる自分だけの部屋と年収500ポンドが必要だとこの中で著者はフェミニズム宣言をした。絹、コットン、ジュートが刺繍の素材に用いられている。photography: Mariko Omura

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エヴァ・ジョスパン。彼女はローマのコロンナ宮殿にある「刺繍の間」から発想を得て『シルクの部屋』を制作した。彼女がインクで紙に描く緻密なデッサンが刺繍に。

展覧会のメセナはディオール。オランジュリーでのプレス発表に際して、ミス ディオール ミニ トランク バイ エヴァ・ジョスパン(限定エディション)がエントランスで展示された。ミス ディオールのパルファンを納める小さなトランクには、インドのチャナキア工房が幾千もの花を刺繍されている。彼女は最近ではアスティエ・ドゥ・ヴィラットともコラボレーションを行い、マグカップやお皿などを含むコレクションEvaを発表。旬のアーティストである。パリのGalleria Continua(ガレリア・コンティニュア/87, rue du Temple 75003)では9月14日まで、エヴァ・ジョスパンの『Tromper l'oeil』展を開催中だ。

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ミス ディオール ミニ トランク バイ エヴァ・ジョスパンは世界で150個だけという贅沢な限定エディション。photography: Mariko Omura

『Eva Jospin Versaille』展
会期:開催中~2024年9月29日
Orangerie du château de Versailles
営)9:00~18:00
休)月
料)パスポート(32ユーロ/ヴェルサイユ宮殿+庭園+トリアノン)に含まれる。
https://en.chateauversailles.fr/

editing: Mariko Omura

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