ボン・マルシェに復活したアトリエ・ポモーヌで、アール・ドゥ・ターブルを楽しむ。

Paris 2024.09.11

10月13日までパリ装飾美術館で開催されている『デパートの誕生1852~1925』。タイトルにある1852年とは、世界で初めてデパートが誕生した年である。そのデパートとはパリ左岸のボン・マルシェのことで、右岸にいまもあるデパートがオープンしたのはその後のことだ。この展覧会ではふたつの部屋を設けて、第一次世界大戦後、パリの複数のデパートに設けられたアートワークショップを紹介している。戦後の日常生活に美しいアール・ドゥ・ヴィーヴルを!と各デパートがデザイナーが率いるアトリエによる家具やテーブルウェアなど、オリジナルの品々を製造して提案していたのだ。1925年の「現代装飾美術産業美術国際博覧会(アール・デコ展)」では、これらのアート・ワークショップがパビリオンを構える隆盛ぶり。そのひとつがボン・マルシェのアートワークショップ、POMONE(ポモーヌ)だった。

1956年ごろまで続いたアトリエ・ポモーヌが生まれたのは1923年。最初はアール・デコ期の巨匠デコレーターであるポール・ファレがアトリエのヘッドを務めた。1925年のアール・デコ展のパヴィリヨンの内装を手掛けたのも彼だ。5年後にルネ・プルーに引き継がれ、最後にアトリエを率いたのはアルベール・ゲノーである。    

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『デパートの誕生1852~1925』展の洒落た会場案内図。1852年は、左岸に世界初のデパートであるル・ボン・マルシェの誕生年だ。photography: Mariko Omura
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展覧会場でPomoneを紹介するコーナー。置き時計やカーペットなど、1925年ごろのアール・デコ調の商品を知ることができる。会場で流されている1925年のアール・デコ展におけるポモーヌ館内部を撮影した貴重な映像は必見だ。photography: Mariko Omura

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約100年後の2024年秋、ボン・マルシェはジュリー・リショをデザイナーに迎えてアトリエ・ポモーヌを復活させた。初回コレクションのテーマは「2024年における食卓とは?」で、ジュリーは11のブランドや職人たちとコラボレーション。現代の都会人が求めるアール・ドゥ・ターブルのための機能を備えた美しい品々がメゾン館2階のコーナーで販売されている。その中にはベルナルド、ジャカール・フランセ、ジアンなどボン・マルシェのメゾン館でおなじみの名前もあれば、吹きガラスで有名な南仏のビオット、テール・メレと呼ばれるテクニックを用いる陶芸家フロランス・ジロなどとのコラボレーションも。11のメゾンのそれぞれが誇るサヴォワール・フェールとポモーヌならではの現代人の食事時間を美しくするデザインが込められた品々。商品にはアトリエ・ポモーヌのイニシャルAとPをあしらったロゴが、必ずどこかに入れられているそうだ。

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フランスのデザイン界が注目するフランコ・スイスのデザイナー、ジュリー・リショ。
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La Grande Epicerieの上階を占めるメゾンフロアに生まれたアトリエ・ポモーヌの売り場。

デザインに際してジュリーが大切にするポモーヌのDNAは、その探索的な面と自由。作り手がこれまで手掛けたことのないものを彼女は提案し、コンフォートゾーンから一歩踏み出させる挑戦をさせ、こうしてサヴォワールフェールを未来へと継承させるのだ。それゆえにジャカール・フランセのリネンやジアンの食器など、見慣れたブランドの品にもフレッシュな魅力を見いだすことができる。

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Dozorme × Pomoneの2人用12本セット(161,50ユーロ)。柄の部分にゴールドのポイントが星座のように散りばめられている。創業1902年から刃物を製造しているDozormeのモットーは、「勇気と挑戦の精神がないところに伝統は表現できない」。アトリエ・ポモーヌの精神と見事に共鳴する。
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Florence Gorod × Pomoneのエッグスタンド(各35ユーロ)。テール・メレの色の美しさが目を奪う小さなオブジェを、卵だけに独占させるのは惜しい。身近な場所に置いて眺めていたい品だ。右はエッグ・スタンドの裏側。アトリエ・ポモーヌのロゴが見える。photography Mariko Omura
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Brüt × Pomoneのカットボード(上95ユーロ、下75ユーロ)。この上でソーセージやチーズなどをカットし、そのままアペリティフのテーブルへ。
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Gien × Pomoneのお皿4枚セット。少しクリームがかった白をベースに、一枚ずつ異なる青い小花が中央に描かれている。お皿の下のナプキンは、 Le Jacquard Français × Pomone。有名なふたつのメゾンだが、オリジナルに比べるとより現代的でシンプルだ。
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Ravel × Pomone。庭用の大きな陶製鉢で有名なアトリエとのコラボレーションだ。左は中央に水切り用の穴があき、キッチンと食卓で活用できるプレート(245ユーロ)。右のサラダボール(120ユーロ)は3箇所の注ぎ口が、サーバーストップの役割も果たす。
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Biot × Pomonのモチーフ入りの水差し(145ユーロ)と水用グラス(4個セット49ユーロ)。右後ろはSydonios x Pomoneのワイングラス(2個セット110ユーロ)

Le Bon Marché Rive Gauche
24, rue de Sèvres 75007 Paris
営)10:00〜19:45(月〜土)、11:00~19:45(日)
休)なし
https://www.lebonmarche.com/

editing: Mariko Omura

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