11区の1ツ星オートンヌで、フランス素材の味覚の旅を。
Paris 2024.10.28
和食ブームのパリ。ラーメンもカツカレーも、パリっ子たちの日常の食事としてすっかり定着している感がある。そんなパリにおけるフランス料理の現状はというと、ルバンタン地方の料理になじみのスパイス、そして柚子や大根など日本の食材が幅を利かせた21世紀フュージョンフレンチばかり。おーい、パリなのだから、フランス的なおいしいフレンチがいいのだけれど......どこに行ったら食べられる?
その回答は11区リシャール・ルノワール通りに2017年の秋に開店し、2019年にミシュラン1ツ星を獲得した「Automne(オートンヌ)」である。秋重信行シェフは名前が物語るように日本人。でも、彼はいまフランス人シェフたちが使いたがる味噌、紫蘇、海苔といった和素材を合わせ使いすることなく、フランスの食材を調理して現代的なフレンチガストロノミーを提案するのだ。その裏に秘められているのは的確な火加減を始め、日本人らしい正確さと繊細さ。そして抜群の塩加減。これがオートンヌの料理を格別なものに仕上げている。
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秋重シェフのキャリアをおさらいしてみよう。料理学校に行かず、彼は日本でキャリアをスタート。3カ所のフランス料理のレストランで包丁研ぎから始め、いちスタッフから徐々にキッチンにおけるピラミッドを上がっていったのだ。2006年、28歳の時に渡仏し、リヨンでフランス語を学びながらビストロ「L'Etage」で2年半働いた。次いでヴィエンヌの2ツ星「La Pyramide」へ。シェフのパトリック・アンリルゥとともにキッチンで2年を過ごすのだ。その後、夏はサン・トロペで、冬は高級スキー場のクルシュヴェルにて......。2013年、アルザス地方のコルマールにある「L'Atelier du Peintre」へと。ここで2年働いた後、パリの「Biondini」でシェフを務め......そしていよいよオートンヌの開店である。いまから7年前のことだ。
シェフが選ぶのは季節の新鮮で上質な素材ばかり。それらを奇をてらうことなく、味と食感のハーモニーを追求した創作料理を生み出す。素材の持ち味を最大限に引き出す料理は、結果としてシンプル。でもどのクリエイションにも奥深い味覚と驚きが潜んでいる。海と陸の恵みを組み合わせるのが巧みで、たとえば赤マグロとリ・ド・ヴォーが同じお皿に乗って調和をなしている、というように。また、「セップ茸とジビエのビスク」のように、甲殻類でビスクを作るようにジビエの骨も用いて濃厚なソースに仕立てるという技が生きたひと皿も。
料理がおいしいので、自然と楽しい食事となる。この楽しさをより一層のものにするのが、ソムリエのユリス・イヴローズによるワインのマリアージュだ。彼は2019年からシェフとタンデムを組んでいる。日頃あまりワインを飲まないという人もオートンヌではワインを合わせ、新しい食の旅を試してみよう。
夏が終わり、これから秋冬のおいしい食材が市場にあふれるフランス。オートンヌに食事に行くには、とても良い季節の到来だ。そして秋を味わうと、春夏も味わってみたくなるだろう。オートンヌ(秋)といっても、四季を味わいに行きたいガストロノミー・レストランだ。ランチメニュー(水〜金)はアミューズ・ブーシュ+前菜+メイン(選択あり)+デザート+ミニャルディーズで75ユーロ。ディナーは2種のメニュー・デクーヴェルト(110ユーロ/5皿、145ユーロ/7皿)。
Automne
11, rue Richard Lenoir 75011 Paris
01 40 09 03 70
営)12:00~14:30、19:30~22:30
休)月、火
https://www.automne-akishige.com/
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editing: Mariko Omura