オペラ座ダンサーも被写体に。マシュー・ブルックスの写真集。
Paris 2024.12.01
11月13日の夕方、オペラ・ガルニエのブティックに果てしない行列が。エトワールのユーゴ・マルシャンと写真家マシュー・ブルックスによるダンスについてのトークショーが行われたのだ。行列はその後のサイン会に並ぶ人たちで、彼らは皆、購入したての本を抱えていた。
セレブリティの美しいモノクロームのポートレートでも知られるブルックス。パリ・オペラ座バレエ団員も含めたダンサーたちを撮影した写真集『Les Danseurs』を発表したのは2015年で、この時のサイン会が行われたのはコレットだった。この秋、その続編とも言える新たなる写真集『Expression of Freedom Through the World of Dance』が発売されたのだ。
タイトルとなっている『自由の表現』。それをブルックスはダンスの世界に求め、この10年間に彼が撮り下ろした世界有数のカンパニーを代表するダンサーたちを、この1冊に収めている。日本でもおなじみのロベルト・ボッレやフリーデマン・フォーゲル、パリ・オペラ座からはユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、ギヨーム・ディオップ、アントワーヌ・キルシェール、オニール八菜など。マリ=アニエス・ジロ、オーレリー・デュポン、アリス・ルナヴァンといった引退したダンサーも。撮影場所はダンスカンパニーが所在するパリ、ミラノ、ニューヨーク、ブラジルなどに加え、日常の仕事環境を離れ、たとえばユーゴ・マルシャンとアクセル・イボの撮影は南アフリカ出身のブルックスが知るケープタウンの"秘密の場所"で敢行された。バレエダンサーが被写体のメインだが、東京では歌舞伎の世界にも彼は潜入している。
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序文を書いたのはナイジェリア生まれの詩人・小説家のベン・オクリ卿だ。「ダンサーの身体ほど、魂が露わになることはない。私たちすべての人に代わって姿を現し、彼らの様態は我々を映し出すのだ。単にダンサーであるという以上に、彼らは存在という永遠のドラマにおいて瞬間となっている。こうしたダンサーたちの写真に、言葉では表現できない何かを感じ取るはずだ。そうしたことが可能な写真、奇妙で大きな感動を引き起こす写真には魔法のような力がある」と彼は寄せている。ダンスファン、ダンサーファンにとってコレクターアイテムとなる写真集と言えそうだ。
editing: Mariko Omura