カレー丼! パリっ子たちはレピュブリックのじんちゃん横丁に通う。
Paris 2024.12.05
円安の時期を利用して日本を旅するパリジェンヌが後を絶たない時代である。スーパーで買った三角おにぎりを頬張りながら歩くパリジェンヌや、週に一度はウーバーイーツでお寿司の配達というパリジェンヌ......彼女たちの日常に和食はすっかり浸透している。フランス料理を食べる日本人がいるように、日本食を食べるフランス人がいてもおかしくないのだけれど、10年前には想像もつかなかった現在の和食ブーム。その勢いには驚かされるばかり。
そんなパリで、12区とちょっと中心部から離れているものの和食ファンを集めて続けているのがじんちゃん食堂である。11月後半、この1号店に続き、弟分のような店がオープンした。その名は、じんちゃん横丁だ。レピュブリック広場から徒歩で6~7分の場所にあり、店の前に立つや日本にテレポートされたような気分がする。暖簾をくぐり、ガラっと扉を引いて......というイメージで店内に入ろう。そこに広がるのは70~80年代の日本。レトロタッチだったり電飾付きだったりという居酒屋の看板が掲げられ、壁を飾るのは日本びいきのグラフィックデザイナーPaihemeによるレトロなストリートアートのフレスコ画や"昭和"が香るポスター類だ。床石も鋪道風で横丁にいるような雰囲気が店内に作り上げられている。
メニューはじんちゃん食堂と違い、こちらのメインは丼オンリー。それも、じんちゃん食堂の賄い飯で人気の品であるカレー丼がメインである。鳥の唐揚げのカレー丼、チキンカツのカレー丼、きのこのカレー丼、そしてちょっと驚きのモンドール・カレー丼の4種だ。フランスの冬の風物詩たるチーズのモンドールとカレーという意外な組み合わせは、しっかりお腹を満たしたい時の強い味方となりそう。居酒屋風に分け合って食べる前菜は唐揚げ、しいたけバター醤油、サーモンの南蛮漬け、ポテトサラダなど12種。パリジェンヌたちは前菜をたくさんオーダーし、丼も分け合ってと、和気あいあいの時間を過ごすという。この明るく楽しい大衆的な雰囲気こそ、オーナーのミヨ&アルバン・カカス夫妻が12区のじんちゃん食堂の開店以来パリっ子たちに提案したいことなのだという。彼らが店名に授けたのは生まれて間もなかった長男の名前である。いまその"じんちゃん"は6歳になり、彼の名前がついた店は2軒になったのだ。
素材のクオリティについてのふたりのこだわりは、じんちゃん食堂と変わらない。お米は新潟のコシヒカリを使用するなど、95%が日本からの輸入素材だそうだ。もっとも鶏肉はブルターニュ産、というようにフランス産の良い素材があれば、はるばる冷凍品を取り寄せる事はしていない。良質で味の良い材料を用い、全てが手作りの店である。もちろん、デザートも。日本からの素材で作られるどら焼き小豆バター、黒ゴマアイスクリームなどのためにお腹を空けておくのがいいだろう。また、ノンアルコール派でなくても、ここではレモネードならぬユズナードをぜひ一杯! グラスを口につけようとする瞬間、鼻をくすぐる柚子の香りがこれまた日本! ちなみに、柚子はフランス人シェフたちも積極的に食材として取り入れている柑橘類のひとつである。
Jinchan Yokocho
41, rue du Faubourg du Temple 75010 Paris
営)12:00~14:30、19:00~22:30
無休
https://www.jinchan.fr/
editing: Mariko Omura