リサイクルだけではダメ!? クリスマスツリーは時代とともにどう変わる?
Paris 2024.12.22
デパートのショーウィンドーを皮切りに、ブティックや商店街にデコレーションが登場し、パリの街にクリスマス気分が漂い始めるのは11月半ば頃。11月最後の週末からはスーパーや花屋の店先にモミの木がずらりと並び、購入した木を担いで子どもたちと家路に向かうパパの姿が目につくようになる。2021年の統計では、フランスでは660万本のクリスマスツリーが購入され、その89%が自然のモミの木だったそう。自然のものなので香り高く、部屋に広がるその香りもまた、フランス人にとってはクリスマスの思い出のひとつ。だがこの年末の風物詩にも変化が表れている。
以前は1月に入ると道端にモミの木が捨てられていたものだが、いまでは使用済みツリーは専用の回収ステーションに持っていくのが当たり前になった。パリ市が回収を始めたのは07年のことだが、当初の回収場はたった65カ所。それが23年末には176カ所にまで増加し、回収された11万本以上のモミの木はウッドチップとして再利用されている。
だが、リサイクルだけではよしとしないのがエコロジスト。ヨーロッパエコロジー・緑の党のボルドー市長が「広場に死んだモミの木は飾らない」と発言したのは20年9月のこと。毎年の費用だけでなく、問題は「緑化のコンセプトに反するから」。以来、ボルドー市の広場には、アーティストに依頼したリサイクルガラス製のツリーが登場している。
「年末年始の伝統を壊すな」とツリー維持派が署名を集め、栽培だから森林破壊には当たらないという意見も多く、当時大きな論議を呼んだ「死んだ木」発言。だが、これまで誰も疑問に思わなかったクリスマスツリー=切ったモミの木という常識に波紋を投げかけたことは事実だろう。環境に敏感な人たちは、別のかたちを探し始めている。プラスチック製は問題外という人が注目するのは、鉢植えタイプ。自宅で栽培できないパリジャンのために、クリスマス期間が終わったら返却できるシステムもある。何もかも購入するのでなく、必要な時だけレンタル。伝統のクリスマスツリーも、エコロジーやシェアリングの意識の変化と無縁ではいられないようだ。
*「フィガロジャポン」2025年2月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)