アルザスの5ツ星ホテル、ヴィラ・ルネ・ラリックに泊まり、洗練のアールドゥヴィーヴルを体験する。

Paris 2025.01.02

ドイツとの国境に近いアルザス地方、ファミリアルなエスプリとラリックのエクセレンスが共存する素晴らしいルレ・エ・シャトーの5ツ星ホテル、ヴィラ・ルネ・ラリックがある。ラリックの創業者ルネ・ラリック(1860~1945年)は工房(マニュファクチュール)をヴィンゲン=シュル=モデールに建築した際、この地に滞在時の一家の住まいを工房から数分の場所に建築させた。1920年のことで、木骨壁の地元スタイルとブルーの鎧扉と三角屋根が印象的な館である。ルネ亡き後は、息子のマルク、さらにその娘のマリ=クロードがこの家を大切に守っていた。このラリック家の歴史と思い出が詰まった家が、ラリックを2008年に買収したシルヴィオ・デンツ(現ラリックグループ会長)により2015年にヴィラ・ルネ・ラリックというホテルに変身したのだ。併設されているポール・ストラドネールがシェフを務めるレストランはミシュラン2ツ星である。いまと昔、ラリックの世界に浸れる特別な滞在をおいしく体験できるホテル。近くにはルネ・ラリック美術館もある。革新のジュエラーと呼ばれた彼が創作したアールヌーヴォーの希少な宝飾品、230点以上の香水ボトル、ガラス工芸......フランスの装飾芸術が凝縮された美術館。春になったら出かけてみてはどうだろうか?

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ヴィラ・ルネ・ラリックの建物は、1920年にルネ・ラリック一家のアルザスの家として建てられた。©Karine Faby

創業者ルネ・ラリックの邸宅で眠る

もともとはルネが家族と過ごした個人邸宅なので、ヴィラ・ルネ・ラリックはこぢんまりとしたヒューマンサイズ。3フロアに21.5平米から66.5平米広さのスイートが6室あるだけだ。各部屋はラリックに所縁の深い6つの大きなテーマでまとめられている。ルネの孫娘マリー=クロードがクリエイトしたパンサーにオマージュを捧げる「ゼイラ」、ルネが愛したパウダリーな色調がインテリアの特徴となっている「ローズ」、ミッドナイトブルーの家具にクリスタルの鱗が映える「ドラゴン」、ベージュとアイボリーの落ち着いた色でまとめられた「ダリア」、メゾンおなじみのツバメがテーマでルネ・ラリックの肖像が描かれた「イロンデル」、そして1935年に創業者がデザインした女性の面型にテーマをとったデュプレックススイートの「マスク・ド・ファム」だ。

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ツバメをテーマにしたスイート「イロンデル」。©hirmance-production
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デュプレックス・スイート「マスク・ド・ファム」。©Karine Faby
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淡いピンクでまとめられたスイート「ローズ」。©Karine Faby
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スイート「ドラゴン」のバルコニー。庭が一望できる。©hdreto-guntli
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スイート「ドラゴン」のバスルーム。窓の下には野菜畑の眺めが。©hdreto-guntli

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ラリックのテーブルウエアやホームデコレーションはブティックで手にとってその美しさを愛でることができるので我々にはなじみ深い。またシャンデリアやランプなども目にする機会が少なくないけれど、ヴィラに宿泊することはラリックの幅広いインテリアデザインの可能性に触れられる最高の機会でもあるのだ。ベッドの両脇のランプ、サロンのテーブル、バスルームのドアノブや蛇口......など、客室内ではクリスタルがもたらす輝きとヴェール越しのセンシュアルで深みある輝きの遊びを心ゆくまで堪能できる。客室内のDon't disturbのボタンを押すと廊下の扉の脇に明かりが灯る小さなパネルまで、ぶとうモチーフのクリスタル!

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左: スイート「ドラゴン」。クローゼットの扉にはめ込まれた浮き彫りのドラゴンが見事だ。 右: 各スイートのベッドの両サイドには必ずクリスタルのランプが置かれている。photography: Mariko Omura
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左: バスルームのドアノブや洗面所の水道の蛇口にも、ラリックの工房の仕事を愛でられる。 右: クリスタル・ドリームへと誘うルームキー。photography: Mariko Omura

ヴィラの内部でいたるところで、ラッカーがアールデコ調を生み出す家具に組み合わせされて深い透明感が際立つクリスタルの詩情に心を奪われる。夕方ワイングラスとともに過ごすラウンジでゆっくりと腰掛ける肘掛け椅子をはじめ、朝食のテーブルの脚や椅子......。

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ルネ・ラリックと妻アリスの写真を飾ったラウンジ。天井のシャンデリアは、プラタナスがモチーフの「シャンゼリゼ」。オリジナル家具の肘掛け椅子にはカーマスコットを思い出させる馬の頭、テーブルの四隅にはマスク・ド・ファムがあしらわれている。photography: Mariko Omura
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ラウンジの一角。©hdgilles-pernet
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ラウンジの奥の個室との境には、花の浮き彫りが連なるクリスタルの引き戸が。クローズされると中からの光に花が浮き上がるさまが優美だ。photography: Mariko Omura
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左: バー。ラリックのデザインスタジオが腕を発揮したオリジナルのカウンターと椅子。 右: ラリック特製のカラフェにおさめられた酒類が棚を輝かせている。photography: Mariko Omura

階段、廊下をラリック家のファミリー写真が飾りヴィラ内にはアットホームな雰囲気が漂う。宿泊客はラリック家のゲスト、そんな気分にさせられる。たとえば朝食にしてもビュッフェではなく、テーブルごとに希望を聞いてのサービスである。ホスピタリティがさまざまなシーンで感じられ、滞在はより心地よく、より贅沢なものとなるのだ。

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ホテル内、エレベーターもあるけれどこのクラシックな階段を上下すると個人宅に招かれた気分が味わえる。壁に飾られているのは、ルネの時代に撮影されたヴィラの写真だ。photogrraphy: Mariko Omura

Villa René Lalique
18, rue Bellevue 67290 Wingen-sur-Moder
https://villarenelalique.com/fr/
@villarenelalique
(冬季休業 12月22日〜24日、12月30日〜1月21日)

editing: Mariko Omura

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