サンジェルマンのブルーベリー、巻き寿司をパリ的に解釈した人気店。
Paris 2025.01.08
握り寿司がすっかり日常食化しているパリ。魚とご飯のシンプルな組み合わせもいいけれど、あれこれ盛り込まれている巻き寿司が好みという声をよく耳にする。サンジェルマンの小さな道にある巻き寿司の人気店「Blueberry(ブルーベリー)」はこの夏に新しいシェフを迎えて、新たなメニューでさらに味がグレードアップ。定休日なしなので日曜も営業し、昼夜毎日盛況だ。
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ブルーベリーにはパリジェンヌが食べたい和食がいっぱい揃っている。小皿料理が並ぶのはメニューの"居酒屋"コーナーだ。Izakayaという日本語もパリでは最近定着。というのも、日本を旅して居酒屋というカジュアルでいろいろシェアして食べられる店が自分たちの好きなタイプ、と知ったからだろう。スターシェフのヤニック・アレノが7区のボー・パッサージュに最近開いた店も「Izakaya Dassai」だ。
店内に入るやいなや、小道にネオンが光る東京の夜にタイムスリップ! そんなイメージでインテリアが作られたというブルーベリー。察せられるように内装も店名もウォン・カーウァイの2008年の映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』がインスピレーション源である。え、彼は日本人じゃないなどと無粋な指摘はせず、フランス人の目に映るエキゾチックで詩情あふれるアジアの世界がここにあると思えば納得だろう。
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ブルーベリーは同じ通りにある香港スタイルの蒸し物専門「Steam Bar」やマビヨン通りのイタリアンレストラン「Marcello」と同じDining Roomsグループのレストランだ。この3軒を総括するエグゼクティブ・シェフに就任したのはフローラ・ミクラで、彼女は自身のレストランも経営する一方、料理コンサルタント業でも活躍している。フランスではアラン・パッサールをはじめ星付きシェフの店、海外での料理経験の持ち主だ。彼女の味覚についての感覚、幅広い料理知識が具体的に感じられる創作のひとつは、居酒屋メニューの中の「芸者ア・ラ・プータルグ」。日本人には疑問を感じさせる料理名ながら人気の一品だという。食べてみるとナルホド!となる。丸いクリスピークレープにマグロ、タラマ、カラスミが乗っているのだが、このクレープは日本人にはなじみの味......何かと言うと、餃子の皮を揚げたものなのだ。カリカリのこの食感は近頃フランスでもとても愛されている。ビストロでも星付きレストランでも最近は見つけられる"オンセン卵"も、良い例だ。シェフはこれに蕎麦湯とそのジュレを合わせ、棒状のそば粉のフォカッチャを添えた。カフェでウフ・ア・ラ・コックに黄身をすくい取るムイエットと呼ばれる細長いバゲットが添えられてくる、あの感じ。
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アラカルトのメニューは前述したシェアする前菜を並べた"居酒屋"に続いて、握り、刺身があり、そして、カリフォルニアロールという言葉を忘れさせるブルーベリー流の巻きが12種類。自家製のタレでマリネされたウナギの巻きにはエビフライが巻き込まれている。また魚のメーグルの巻きの中はアボカドや海老などとてもゴージャス。その名も「ギャッツビー」である。パリに和食店は数あれど、ミクラ・シェフがいてのメニューはブルーベリーならでは。巻きなら日本で食べられる!と味わわずに背を向けてしまうには惜しいレストランだ。
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黒ごまのティラミスや柚子味のチーズケーキなど、デザートにいたるまでおいしい和洋折衷だ。もちろんオリジナル7種のカクテルも梅酒、ワサビ、黒ゴマと、七味といった和の材料をシェイクしている。これらも試してみなくては! ランチタイムは巻き、握り、チラシなど6種類のメニュー(26~36ユーロ)で、いずれも味噌汁ではなく蕎麦湯ブイヨンがセットされている。これまたブルーベリー流なのだ。
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Blueberry
6, rue Sabot 75006 Paris
営)12:00~14:30、19:00~22:30(月〜木) 12:00~14:30、19:00~23:00(金) 12:00〜15:00、19:00~23:00(土)12:00〜15:00、19:00~22:30(日)
無休
https://www.blueberrymakibar.com/
editing: Mariko Omura