作品も生き方も前衛的。驚きのナディア・レジェ展をマイヨール美術館で。
Paris 2025.02.20
7区のマイヨール美術館の前を通ると、大きな女性の顔が描かれた赤が印象的な看板に驚かされる。描かれているのはNadia Léger(ナディア・レジェ/1904~1982年)。画家フェルナン・レジェの妻で、画家として多数の作品を残している女性だ。
マイヨール美術館が3月23日まで開催している『ナディア・レジェ、前衛の女性』展で、あまり世間に知られていない彼女の仕事を発見することができる。帝政ロシア時代のベラルーシに生まれ、1920年代に世界中の多くの芸術家たち同様パリにやってきた彼女。パリでは画家というだけでなく、レジスタンスの闘志であり、共産党員としての活動も行っていた。


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これほどの画家がなぜ知られていなかったのか、と不思議に思わせる展覧会である。彼女は結婚後はナディア・レジェと作品にサインをするようになったが、それ以前は旧姓のナディア・ホドシエヴィッチ、ヴァンダ・ボダジェヴィッチ・グラボススカなど複数の名前で絵にサインしていた。時代ゆえに著名な夫の影に隠されていた、と思われがちだが彼女の場合はそれだけが理由というわけでもないようだ。
彼女の作品の大半が個人所蔵ということもある。それだけに3フロアを使って150点以上の作品(1919年から1973年にかけて制作されたもの)を時代順に展示するこの展覧会は、貴重な回顧展なのだ。彼女の作品を見て、ポップアートの先駆者?と思う人も少なくない。



肖像画の部屋の後、「スモレンスク、ワルシャワ、パリ/前衛との出会い」、そして「フェルナン・レジェ、灯台の明かり/"巨匠"との対話」と続く。写真内、右の壁の手前はナディア・レジェ作、その左隣はフェルナン・レジェ作。photography: Mariko Omura

会場にはナディアが被写体の写真も展示されている。これは1937年にロベール・ドアノーがモンパルナスのカフェRond Pointで撮影したナディア。photography: Mariko Omura

左:フェルナン・レジェ作『無題(ナディア)』(1953年)。右:ナディア・レジェ作『自画像(レジスタンス宣言)』(1953年)。photography: (左)©collection particulière photographe Pierre-Yves Dhinault/Sabam、(右)IMAV éditions ©Sabam

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展覧会では1924年から1955年までフェルナン・レジェが主催し、ニコラ・ド・スタールやハンス・アルトゥングなども含む350名のアーティストが学んだアトリエについてのコーナーも設けられている。
ここはモダニティの研究所たる現代美術のアカデミーで彼女も最初は生徒として、次いでレジェのアシスタントとして、彼の不在時には生徒の指導にあたったのだ。ちなみに彼女がレジェと結婚したのは、最初の夫と別れた1952年である。


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内容豊かな展覧会だ。ナディア・レジェの作品、その激動の人生を知ることができる良い機会である。こんな女性、こんなアーティストがいたのか!と発見しに行ってみよう。

『Nadia Léger. Une femme d'avant-garde』展
Musée Maillot
61, rue de Grenelle 75007 Paris
会期:開催中~3月23日
開)10:30~18:30(月、火、木〜日) 10:30〜20:00(水)
無休
editing: Mariko Omura