カルナヴァレ美術館の『パリのアニエス・ヴァルダ あちらこちら』展。
Paris 2025.04.22
6年前に90歳で亡くなったアニエス・ヴァルダ(1928~2019年)。現在、カルナヴァレ美術館で開催されている『パリのアニエス・ヴァルダ あちらこちら』展では、彼女にまつわるパリをコンパクトかつ印象に残る会場構成で紹介している。パリ市内や地下鉄駅などに貼られた展覧会のポスターに用いられているのは、28歳の時の彼女のセルフポートレート。レンズに向けられた彼女の強い視線とトレードマークとなるマッシュルームカットに導かれて、カルナヴァレ美術館へと足が向いてしまう。

『5時から7時までのクレオ』で日本でも名を知られる映画監督であり、晩年はビジュアルアーティストとして活動した彼女だが、この展覧会は写真家という最初の職業を発見する機会でもある。構成するのは、未発表の写真を多数含む130点のプリント、パリで主に撮影された映画の抜粋などだ。そして愛猫ニニの彫刻も!




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アニエス・ヴァルダの名前にパリ14区ダゲール通りが結びつくという人もいるのではないだろうか。ダゲールという写真技術を発明したルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが暮らしいたことからの通り名で、1951年に彼女はこの86番地にやってきた。通りに面した扉に続く中庭の奥に、小さな一軒家と複数のアトリエが隠されている場所だ。彼女はここで暮らし、そして仕事をしていた。初の個展を彼女が1954年に開催したのも、この家でのことだった。なお、この中庭はジャック・ドゥミ監督とシェアすることになり、1962年に彼とアニエスは結婚する。展覧会では、その中庭に愛車を駐車するのに苦労する自身のビデオが流され、写真機や小道具が置かれたアトリエの上階の写真スタジオも再現されて......気がつくと、すっかり彼女の世界に入り込んでいる気がしてくる。


リヴォリ通りから始まり、パリ市内の様々な場所を歩く主人公を追って撮影した映画『5時から7時までのクレオ』については、日本での公開時のポスターまで展示され、スペースが多く割かれている。また「トラッキング・イン・ザ・シティ」の部屋では、彼女が監督した『5時から7時までのクレオ』を含め、彼女が撮影した9本の映画の抜粋が上映(11分31秒)され、隣に展示されているパリ地図に撮影場所が示されるという趣向だ。



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最後のコーナーは、「アニエスによるアニエス」。21世紀に入ってから新顔としてコンテンポラリーアート界に迎えられた彼女は、2018年に日本でも公開されたが写真家・アーティストのJRとドキュメンタリー『顔たち、ところどころ』を制作している。その中から彼とのほのぼのするような光景も展示。ヌーヴェル・ヴァーグ界唯一の女性監督だった彼女が、80代になっても鋭い観察眼を失うことなくクリエーションを続けていた姿が感動的だ。


『Le Paris d'Agnes Varda de-ci, de-la』展
開催中~8月24日
Musée Carnavalet - Histoire de Paris
23, rue Madame de Sévigné
75003 Paris
開)10:00~18:00
休)月
料)15ユーロ
https://www.carnavalet.paris.fr
@museecarnavalet
editing: Mariko Omura