パリの市民投票、3回目のテーマは「緑化」。植物が増えて街が涼しくなる?
Paris 2025.04.26
市民投票の告知ポスター。
3月23日、パリで市民投票、Votationが行われた。2023年に電動キックボード禁止、24年にはSUV車の路上駐車料金の高額化の可否を問う投票が話題となったが、3回目の投票テーマは「市内の500の通りを新たに緑化し、歩行者専用とする」ことへの可否を問うもの。投票後の数字は緑化賛成65.96%。前回のSUV関連投票に続き、保守系富裕層の多い7、8、16区だけが反対派優勢という結果となった。市はこれから80の行政エリアそれぞれに5〜8本の通りを選定して緑化していく構え。たった4.06%の投票率で市民全体の意見と捉えることへの疑問は否めないが、市民がおおむね緑化に好意的なことは明らかなようだ。
パリ市長アンヌ・イダルゴは、大気汚染対策及び地球温暖化によるヒートアイランド現象への対策として、車減少と緑化政策を同時に進めてきた。20年以来、緑化された道は200を数える。街路樹の間の舗装を壊して土を入れ、植え込みを作る。あるいは小学校前の通りを歩行者専用として植物を導入するなどの措置により、一方通行や侵入禁止が増えて車の流れは随分と変わった。また24年11月から市内の中心部にあたる1〜4区が車両の通り抜け禁止地区になり、該当エリアに目的地がある車両以外は通れなくなった。今年9月からはモンマルトルの丘が歩行者優先地区となり、入れるのはエリア内に目的地を持つ車だけ。しかも制限速度時速6km走行が義務付けられる。通れない場所が多く、渋滞が深刻な市内を車移動するのはもはや壮大な時間とエネルギー、お金の無駄遣いになっている。
学校前の道では、歩行者専用にして植え込みに植物を入れるプロジェクトが進行している。©Joséphine Brueder/Ville de Paris
15区のVilla Mはウェルビーイングをテーマにした複合施設。メタル構造に薬草や果樹などを植えた垂直庭園の中にホテル、レストラン、ワークスペースやジムが入る。©Joséphine Brueder/Ville de Paris
広場や、建物の壁面、屋上の緑化も進んだ。モンパルナス駅の裏手にあるカタローニュ広場がアーバンフォレストに生まれ変わったのは昨年のこと。約470本が植樹され、1980年代建築に囲まれた石造りの広場が変貌した。市によれば、緑化によって広場の温度は4度下がるという。アーバンフォレスト計画は現在、パリ市庁舎前広場でも進行中。90の樹木と2万の植物を植えるという計画はこの夏完成予定だ。
アーバンフォレスト第1号は石造りの広場から変貌したカタローニュ広場。パリ市庁舎前広場や10区のコロネルファビアン広場でも同様の工事が行われた。©Guillaume Bontemps/Ville de Paris
壁一面を植物が覆う13区の集合住宅。©Joséphine Brueder/Ville de Paris
2014年以来市長を務めてきたイダルゴは、26年の市長選に再出馬しない意向を表明すると同時に、任期終了までの1年で緑化を加速すると宣言している。石造りの街から車が減少し緑が増えることで、年々暑さを増すパリの夏が、少しでも過ごしやすくなることを祈るばかりだ。
*「フィガロジャポン」2025年6月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)