自然が繊細に輝くミラ・ステラのジュエリー。新作はハウチワノキ。
Paris 2025.08.23
昨年5月からアーツ&サイエンスの青山店で取り扱いのあるパリ発のジュエリーブランドMira Stella(ミラ・ステラ)。9月半ばには京都店での販売も始まる。パリでは6区のサン・シュルピス教会のすぐ近くにブティックがある。デザインしているのは、ブランドを創設したソフィー・ブイエ=デュマだ。
左:サンジェルマン市場のすぐ近くにあるMira Stellaのブティック。 右:人気のコードブレスレット。
ミラ・ステラは、ソフィーがフランス北部のオート・ノルマンディー地方で造園を始め、植物との触れ合いに喜びを感じたことがきっかけとなって生まれた。ジュエリーに使われるゴールドは、全てピンクゴールド。彼女の庭があるのはその昔印象派たちが柔らかく美しい光を求めて絵を描きにやってきた土地で、その光を表現する色として選んだ色だという。庭が大きなインスピレーション源となり、彼女の心をときめかすフォルム、そして歴史を持つ花や植物がジュエリーのモチーフとなっている。これまでに彼女が永遠の命を与えたのはアジサイの花びら、亜麻のさや、シーケールの種、ハマアカザの種......慎ましく上品なジュエリーばかりである。
左:ソフィーが最初にジュエリーにした植物は、8700万年の歴史を持つあじさい。バリエーションはリング、その他花弁1枚のペンダントトップ、ピアス、ネックレスなど。 右:亜麻のさやのペンダント。木とゴールドの組み合わせタイプもある。
コバンソウとそのペンダントトップ。
左:シーケールの種のネックレス。シーケールの種は防水で海を渡って他国にたどり着いて根を張る。こうした物語がソフィーの心を動かされるのだ。 右:ぷっくりと丸みのあるフォルムが女性的な浜あかざ(オラチ)。
6月、新作が発表された。6500万年前からこの世に存在する植物に属し、200万年の歴史を持つハウチワノキ(Dodonaea viscosa)の立体的なイヤリングである。原産地はオーストラリアの植物だけれど長い歴史の中で風に運ばれ......。ある時、ご主人が中近東から持ち帰ったその種をノルマンディーの庭に撒いたところ、うまく育ったそうだ。このことから旅への賛歌として、彼女はハウチワノキの種を包む薄く繊細なさやのフォルムのジュエリーをクリエイトした。このさやは軽くて、ふっくらと立体的。それが空高くプロペラのように舞って、風に乗って遠方へと運ばれてゆくのである。
最新作はハウチワノキ。タネを含む鞘は軽く、エレガント、そして飛んでどこへでも移動してゆくことがソフィーの創造性をかき立てた。
ハウチワノキとイヤリング。
ミラ・ステラではソフィーがジュエリーにどうだろうかと心ひかれた植物を庭で観察。そして選び出したその植物の最も美しいフォルムをロストワックス法を用いてゴールドのジュエリーに鋳造している。それゆえにソフィーが「自分は自然をコピーしているだけ」と謙遜するのだが、もちろんクリエイションには彼女の自然への敬意と愛、そしてデザイナーとしての感性が込められているのだ。このハウチワノキのイヤリングも同様。ちなみに彼女はクリストフル創業ファミリーの6代目で、かつて英国王室ご用達の陶磁器ブランドでアーティスティック・ディレクターを務め、またエルメスやポール・スミスのためにオブジェのデザインも手がけている。
さてこの新作と同時に、オークの樹皮がモチーフのリングに幅の広いタイプが生まれ、メンズ用サイズも登場した。こちらも18カラットのピンクゴールドである。これでミラ・ステラでエンゲエージメント・リングを見つけることができるようになったのだ。
宝飾の歴史において自然はジュエラーたちの大いなるインスピレーション源だけれど、ソフィーが自然に向ける視線と自然をジュエリーとして永遠の時間を与える方法はユニーク。彼女の感受性を語る控えめな輝きのジュエリーは、自然の歴史と生命へのオマージュである。
オークバーク・リング。サイズは50〜58(写真右:左)、50〜63(写真右:右)。
2, rue Guisarde
75006 Paris
営)14:30~19:00(月)、11:00~19:00時(火~土)
休)日、8月3日~25日
https://mira-stella.com/
@mirastella_jewellery
★Google Map
editing: Mariko Omura