エリゼ宮の食卓
エリゼ宮の見学で豪奢な広間の他にもうひとつ楽しみにしていたのが食卓の様子。
ヨーロッパの食卓や食器が好きで日頃からエリゼ宮のテーブルや料理本を眺めているので、是非とも実物の食器やグラスを見たいと思っていたのでした。
深い青のセーヴルの磁器が美しい。こんな豪華な部屋で食事してみたいものです(^^) テーブルクロスやナプキンは手縫いだそうで、繊細な刺繍が施されています。
ロマンチックな食卓はピンク色の入ったバカラのワイングラスが素敵。お皿はセーブル焼き、カトラリーはクリストフルのマルリー。
シンプルな食卓は、グラスがリラック、食器がアヴィランド、カトラリーはクリストフルのリュバン。そしてキャンドルスタンドとフラワースタンドですが、これはラリックが1923年に特別に製作したもので現在ではラリックも保存していないので、なんとこのテーブルの4つのキャンドルスタンドとフラワースタンドだけで20万ユーロの価値があるそうです。もし壊したら大変なことになります・・・。
日本やアメリカではテーブルアートは学校やレッスンが沢山あり人気ですが、意外にもフランスではそういうレッスンはツーリスト向けレッスンを除いてはないようです。エリゼ宮もフラワーアーティストが花を飾りますが、テーブルアーティストという職の人はおらず、食器を選んだりセッティングや色の組み合わせを考えるのはエリゼ宮の食を担っている役職の方だそうです。その他、燭台係、カトラリー係、クロス係などそれぞれの専門があり、専門チームであの優美な食卓が作られているんですね。
そして、美しい食卓を飾る主役は料理。幸運にも見学コースには含まれていない厨房も特別に案内していただきました。
広ーい!!!!!
28人のキュイジニエと4人のパティシエがエリゼ宮全ての食事を作っていて、作らないのは毎年バゲットコンクールで優勝したパン屋が収めると決められているバゲットだけ。エリゼ宮の職員だけで約850人、彼らの食事はもちろん公式な食事会や晩餐会などを含めると大変な仕事量、食事量。年間9万食を作るというから驚きです。
ずらりと並んだ大小様々の銅製の調理器具に思わず大興奮!
良い道具は料理の質を上げてテクニックの下手さを隠してくれると思っているので、少しずつ銅鍋を買い揃えてうちには銅鍋が沢山あるのです。けれど結局は重くて手が痛くなるし手入れも面倒で使ってないと話すと、キュイジニエが鍋の柄の付け根を持つと重く感じないと親切に教えてくれました。
これらの銅製の調理器具は全てナポレオン3世の時代から使われているというから驚きです。ナポレオン3世が皇帝に即位したのが1852年ですから、なんと400年近くも使い続けていることになります!!もちろん定期的に内側の錫引きをやり直し、胴も錆びないよう毎日磨いているそうで、銅鍋を磨く専門の職人がいるそうです。鍋を磨くのってすごい重労働なのに、これだけの数を磨くなんて・・。
全ての調理器具やお菓子の型には作られた年が刻まれており、例えば写真のお菓子の型には王冠の刻印があり、1845年コンピエーヌ(Compiegne パリより30Km北の街)で作られたことが分かります。
ちょうどパティシエの方がコンクールで作るお菓子の試作をされていました。優勝するとフランス最高のパティシエ職人に認定されるとのこと。頑張れ!
エリゼ宮の見学は見応えたっぷりでした。室内のインテリアから厨房まで、そして40歳の若きマクロン大統領と24歳年上のブリジット夫人の風も含めて、古いものを残しながら新しいものを取り入れながら歴史を刻んでいるフランス共和国の姿の一端を感じました。
ARCHIVE
MONTHLY