
パリのモロッコ料理
前ブログのアントワーヌの個展のオープニングパーティーが開かれたギャラリーは、東駅から近い10区のストラスブール=サンドニにあります。先日ジャン=リュック・ゴダール監督の映画『女は女である(Une femme est une femme)』を見たら、ストリップダンサーのアンナ・カリーナ演じる主人公が恋人と同棲しているアパルトマンがあるのがストラスブール=サンドニでした。つまり歓楽街で移民が多くちょっとごちゃごちゃした雰囲気なんですが、エスニック料理屋さんが集まっている界隈でもあります。
モロッコ産のワインを頼んで、前菜は鳩のバスティラ。甘塩っぱくスパイシーな鳩肉のミートパイでシナモンや粉砂糖がかかっています。オーダーのときSが「昨日のディネは3つ星レストラン〇〇でピジョン(鳩)を食べた」と言ったので、3つ星の鳩とここの鳩を比べる気かしらと懸念していたら、パクリと食べて「Super bon!(うまい!)」
バスティラを食べてこの店が気に入ったS。ラム肉や肉団子、メルゲーズなどが添えられた、この店のスペシャリティー「クスクス・ゼルダ」が運ばれてきた頃には上機嫌になりました。
20年以上前、クスクスという料理名を聞いたことすらなかった私は、愛読していた料理雑誌でクスクスのシレピを発見。外国の食材専門店でスムールとハリッサを買って来て、レシピ通りにボールに入れたスムールに熱湯をジャーと注ぎ、ひとかけらのバターを加えて、布巾をかけて10分間放置。スープはビーフブイヨンを溶いたお湯にトマトの水煮とセロリ、人参、ズッキーニ、ひよこ豆、鶏肉、ソーセージを入れて1時間ほどグツグツ煮込みました。そして、写真通りにシチュー皿にスムールをよそってスープをかけて、食べてびっくり。
「全然美味しくない!!!!」
レシピ通り作ったのに、スムールは固くぼそぼそ、スープは味の薄いトマト味、ソーセージは全く調和していなかった・・・。今思えば、メルゲーズの代わりにソーセージを使い、鶏肉もソーセージも一緒に煮込んで(本来はスープと煮込まない)クスクスを蒸す代わりに熱湯を注いでふやかしたりして美味しいわけがないのですが、そのくらい日本ではモロッコ料理が知られていなかったというお話。
その後パリに住みエステの学校に行き始めたら、モロッコ人やアルジェリア人のクラスメートのお母さんが作るクスクスやタジンをご馳走になる機会が何度もあり、奥の深い美味しさと日本でレシピで作ったクスクスの違いに心底驚いたのでした。
Zerda cafeのスムールはふっくら蒸されていて、スープもさらっとしているけれど濃厚な旨味があり、ここのクスクスなら毎日でも食べられると思うほど好き。Sは心配になる程何度もお代わりしてお腹が張って動くのが辛そうで、最後はミントティーすら喉を通りませんでした(笑)
*Zerda Café
15 Rue René Boulanger, 75010 Paris
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