
驚きの連続!アラン・デュカスが手がけるレストラン「ル・ムーリス」
燃料税値上げへの反対から暴動へと加熱して歯止めがきかなくなった「黄色いベスト」のデモ。年が明けても続いていて、先週の土曜日もアンヴァリッドからエッフェル塔の近くにある私の働くサロン周辺にまでデモの人々が流れ込んできてショーウィンドーが割られたりしないかとヒヤヒヤしました。うちのような小さいな個人サロンや商店にとっては毎週土曜日が来るたびに、お客さまが問題なく来れるかしら、壊されたりしないかと心配で気分が落ち着きません。年明けから話し合いのためにマクロン大統領は地方を回っていますが、一日も早く解決して欲しいです。
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ちょっと沈み気味の日々のなか嬉しい招待が舞い込みました。ホテル・ムーリスのアラン・デュカス氏がプロデュースするレストラン「ル・ムーリス」の特別メニューのディナー。「ウイ!」と即答。
食事前のアペリティフは「Bar 228」でどうぞと案内され、早速「シャンパンは2009年のドン・ペリニョンはいかがですか?」こう訊かれて誰が「ノン」と言えるでしょうか?フォアグラやキャビアが運ばれてきて、なくなるとまた次々と持ってきてくれる。一緒にいたヴェロニックは「私は今夜は全部食べるわ!」ソフィーは「食事が食べられなくなるから遠慮しておく」。私はもちろん全部食べました。
皆んなで写真を撮ったとき他の女性たちから「あなただけ、なんだかきれいに写ってない?!」との声が。私は白のワンピース、他に3人いた女性達は全員黒のカクテルドレスだったのですが「白は光を反射して顔色が明るく写るから白い服を着てきた」と言うとすごく驚かれました。フランスの女性はあまりそういうことは計算しないみたいです(笑)
photo: dorchester collection
アペリティフの後、レストラン「ル・ムーリス」へ移動して食事。カトラリー好きの私としては、テーブルに並べられたピュイフォルカのカトラリーを見ただけで心が踊りました!日本ではシルバーカトラリーというと、クリストフルのシルバーコーティングされたカトラリーが有名ですし、純銀製のカトラリーを持っている人はなかなかいないと思います。私が家で使っているのもクリストフルのシルバーコーティングのカトラリーです。もちろんクリストフルも素敵ですが、いつかは揃えたい憧れがピュイフォルカ。職人が手彫りする繊細な模様が美しい”モンテリー”(写真のバターナイフがモンテリーです)を揃えるのが夢ですが、お値段もとびきり高価。というわけで、ピュイフォルカを使用しているレストランはほとんどありません。エリゼ宮を見学したときにテーブルセッティングも見ることができるので係の方に尋ねたら、クリストフル、エルキューイ、ピュイフォルカは全てのモデルが揃っていて、一番使用頻度が高いのがピュイフォルカだと教えてくれました。
さて、食事はシェフがその夜のために考案してくださったという9品のコースでメインはロブスターとサン・ピエールそれにジビエの鹿肉。それぞれの料理に合わせたシャンパンやワインを開けてくれるという豪華な内容でした。全て素晴らしい料理でしたが、特に3品出された前菜の2品の野菜料理に感激しました。
ヒマラヤの岩塩と一緒に蒸したミニサイズの野菜。蒸しただけなのに野菜の味がすごく濃い。
もう一品はまるでケーキのようにドーム型に形を整えた根セロリを蒸したもの。
食べてさらに驚き。蒸しただけなのに甘みがあり滑らかな舌触り。私が普段食べている根セロリと同じものとは思えない。一緒に蒸したときに出る蒸し汁も添えられていて、これも甘くて美味しい。一緒に根セロリの葉の緑色のソースをつけて食べます。一流のシェフの手にかかると蒸し野菜が滋味に富んだ素晴らしい料理に変わるんですね。こららの前菜に出された2004年のポメリーのキュヴェ・ルイーズのシャンパンも野菜とよく合っていました。
その他にも、2つの魚料理の間に出されたアラン・デュカス氏が日本で関心を持ったというカツオ出汁を使ったスープもユニークでした。コーヒーサイフォンの下のフラスコにカツオ出汁が入れられていて、点火して上に上がってくると、上のサイフォンに入れられたハーブと混ざって、ハーブの香りいっぱいのカツオのスープが出来上がるという仕組み。懐かしい味にほっこりしました。
一皿ごとに驚きの連続で、フランスの食文化の素晴らしさを感じる貴重な経験になりました。お酒に強いと自負している私ですが、やっぱりフランス人は強い!皆んな最後まで酔ったそぶりもなく食後酒までしっかり楽しんでいました。私はレストランの方に挨拶するまではちゃんとしていたものの、ホテルの外に出た途端に緊張が溶けたのかコートの腰紐をギュッと掴んでいてもらわないとフラフラとしてしまい、操り人形のように腰紐を掴まれたまま帰りの車に乗り込みました(^_^;)
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