シネマテーク・フランセーズで観た「はなれ瞽女おりん」
パリで娯楽というとまず思い浮かぶのが映画です。フランスは日本に比べて娯楽施設が少ないからでしょうか。フランス人に週末の夜何をするか尋ねると、映画に行く、家で友達とフェット(パーティー)をする、が最も多い答えだそうです。映画館の数も多く、パリに住んでいると映画館が徒歩で行ける距離にあるので、週末の夜は長蛇の列ができています。
最近立て続けに、話題作のグリーンブック、女王陛下のお気に入り、ボヘミアン・ラプソディなど話題作やフランス映画を観た中で、一番心に響いたのがシネマテーク・フランセーズで観た「はなれ瞽女おりん」でした。原作は水上勉の同名小説。ずいぶん前に小説を読んで、機会があれば映画も観て観たいと思っていました。ベルシーのシネマテーク・フランセーズはフランス政府が映画の保存・修復・配給を目的として作った施設で、国年代を問わず興味深い作品に出会うことができます。
三味線を弾き唄いながら旅をする盲目の女芸人おりんとシベリア戦争の脱走兵として警察や憲兵隊に追われる平太郎との悲しい愛の物語。美しい自然をバックに、貧しさゆえに時代に翻弄されて愛し合う二人の想いが彷徨うのが切なくて、胸が痛くて、観るのがとても辛かったです。
岩下志麻が美しい・・・。
そして、原田芳雄のセクシーさといったら!!!!!
魅力ある人だと思って好きな俳優さんですが、若いとき(私が生まれるちょっと前の作品です)はすごかったんですね。びっくりしました。はっきり言ってフランス人男性なんか目じゃないです。ワイルドな容姿、ふんどし姿の肉体美、日本人でこんなに官能的な男性が存在したなんて・・と胸打たれて、なんとか二人に幸せになってほしいと切に思いながら物語にのめり込みました。
一緒に観たフランス人の友人は、日本の四季折々の自然の美しさに感激していました。けれど、二人がこんなにも過酷な運命を辿らなければならなかったのか、なぜ愛し合っているのに平太郎がおりんを抱こうとしないのか、そしてなぜおりんは瞽女になったのかが分からなくて、いまいちピンと来なかったようです。私も勉強不足だったので、家に帰ってから瞽女について調べてみました。そして、最後の瞽女と呼ばれている故小林ハルさんの映像を見てショックを受けました。こんな辛い人生の逆境に耐え、純真な心を保ち続けた女性がいたなんて・・・。
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ところで、岩下志麻さんは78歳になられた今も美しい容姿を保ち続けていらっしゃいますね。日本へ帰ったときにメナード化粧品のCMなどで見かけますがいつまでも変わらないです。
フランスではよく日本人に対して言う言葉があります。フランス人は30歳を超えたら年齢とともにシワができ、年々ゆっくりと見た目も衰えて行く。日本人は50歳位までシワがなくて年齢がわからないけれど、ある日突然キュッと林檎がしぼむように衰える・・・と。その真相は判りませんが、滲み出る内面と外面の両方が合わさって顔に年齢が表れます。私はエステティシャンなので毎日フランス人マダムのお顔を見て仕事をしていますが、若々しい方は必ず何か理由があり、高齢になればなるほど、前向きで明るい方、優しい方、親切な方の方が必ず美しい。
小林ハルの人生を物語る顔には深いシワに刻み込まれていますが、艶やかで内面の美しさが表れていました。私も岩下志麻さんを見習って、歳の重ね方を研究しなくてはと思います。
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