
燃えてしまったシャンゼリゼ通りの老舗カフェ・フーケッツ
昨日シャンゼリゼのジムに行く途中、あまりの酷さに目を疑いました。18回目に突入した16日の土曜日のジレジョーヌ(黄色のベスト運動の参加者)のデモは、一部のジレジョーヌとカッスール(壊し屋)と呼ばれる黄色のベストを着てデモの参加者に紛れて破壊したり盗みを働く人達の過激さがエスカレートして、世界一美しかったシャンゼリゼ通りは見るも無残な姿に変貌してしまいました。
キオスクは燃やされて真っ黒。
日本でもおなじみのバックのロンシャンにも火が点けられました。
銀行は標的の的。ATMを壊して現金を盗もうとするので、デモの行われるエリアのATMは使用できないようになっています。
マカロンで有名なラデュレは、破壊された部分に板を貼り営業を続けています。
アパルトマンの入り口。住民はさぞかし怖かったことでしょう。
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はっきり言って私も多くのフランス人もジレジョーヌ にうんざりしています。当初燃料費値上げで始まったデモですが、これだけ人や商店に迷惑をかけて街を壊して、彼らの本来の目的と随分ずれてきています。ジレジョーヌのデモ以来、政府機関が多く集まりジレジョーヌののデモの通り道になる7区にあるうちのサロンもその余波を受けています。16日は交通機関の閉鎖やデモに巻き込まれることを心配したお客さまがキャンセル。3人来て下さったけれど、一人はサロンから歩いて15分のアンヴァリッドにお住まいですが、メトロも道も閉鎖されていて随分遠回りして1時間かけて来てくださいました。2人目はサロンのすぐ近くにお住まいなので問題がなかったけれど、3人目はセーヌ川を渡ったパッシーの自宅からいつも通り自転車で来ようとしたら道が閉鎖されていて橋を渡れず、家まで引き返してタクシーを呼んだけれど道の閉鎖でタクシーが来れず、結局また別のタクシーを呼んで1時間半遅れで来てくださいました。
今回のデモで大きな話題になったのが、裕福層の顧客が多く歴史ある老舗カフェレストラン「フーケッツ」が燃やされたことです。ジレジョーヌは自分達はやっていないと言うけれど、カッスール(壊し屋)に便乗して店を壊したり火を点けて高級ブランド品を盗むジレジョーヌもいました。ここまでやる必要は全く無い。むしろ自分達でフランスのイメージを悪くして経済が悪化し失業者が増えたら自分達の首を閉めることになるのに・・。
photo : Franceinfo
ビニールで覆われて営業休止に。
フーケッツといえば通るたびに思い出すのがフランス人のお客さまのマダムH。言語矯正士の彼女はフーケッツがあるジョルジュサンク通りに住み(フーケッツはシャンゼリゼ通りとジョルジュサンク通りの角にあります)、彼女のクリニックも同じ通りにあります。香港で働いていた息子が台湾人の女性と婚約したとき、婚約者は3ヶ月間ひとりでパリのマダムHの家に滞在しシャンゼリゼの語学学校に通うことになりました。そして毎日フーケッツのテラスでランチをしていたマダムHと婚約者。マダムHは自分はクリニックに急いで戻らなきゃいけないけど、婚約者には昼休みが終わるまでコーヒーでも飲んでゆっくりしてね、といつも彼女を残して先に店を出るようにしていたそうです。
その理由とは、美しくて若い彼女が息子と結婚する前に色々なフランス人男性に口説かれたり、お話する機会を持ってもらいたかったから(爆)! フーケッツは映画関係者も多く、お金持ちの男性が女性に声をかけることで有名です。逆に目に留めてもらうために、美しく着飾った若い女性がテラスの前を行ったり来たりしているのを見かけることもあります。「フーケッツの常連客なら客層が良く紳士的で変なことはしないだろうし、これから先息子だけのものになるんだからそれまでに思い切り楽しまなきゃ」と微笑むマダムH。息子がパリにいないのをいいことに将来のお嫁さんにせっせとナンパされなさいなんて、日本人のお姑さんが聞いたら卒倒しそうなアイデアだけど(笑)。パリのムッシュー達から愛の洗礼を受けたおかげか(?)、息子夫婦はとっても仲が良くマダムHには今3人の可愛い孫がいます。
そんなマダムHとお嫁さんの思い出のフーケッツが、こんなふうになってしまい心が痛みます。
Photo : PressFrom
さて、シャンゼリゼ破壊の知らせを聞いて、金曜日から出かけていたスキーバカンスを早々に切り上げてエリゼ宮に戻ってきたマクロン大統領。さすがに今回は大統領支持派の国民からも避難され、ますますブルジョワ大統領の印象を強めてしまう結果に・・・。
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