
バカラ美術館と、バカラのグラスで食事を頂くクリスタルルーム
ずっと前から行きたかったバカラ美術館と併設されているレストラン「クリスタルルーム」に行って来ました。
(photo : www.baccarat.fr)
美術館は芸術家のパトロンだったマリー=ロール・ド・ノアイユ子爵夫人(1902-1970)が暮らした邸宅を改修した建物で、当時の優雅な暮らしを感じることができるのも魅力です。階段を上がったところがバー、そのすぐ横がバカラの食器でサーヴィスしてくれる「クリスタルルーム」です。
バーカウンターもクリスタルでできていてキラキラ!お酒を注ぐグラスは自由に選ぶことができます。アペリティフにアルクールのフルートでルイ・ロデレールのロゼシャンパンをいただきました。アルクールは1841年に造られたバカラを代表するグラスで、厚みがあり丈夫なのでカクテルやパーティーによく使用されるそうで、薄いグラスのような唇に心地よい口当たりはないけれど、ずっしりとした重みと重厚感があります。
そこにいるだけでワクワクするクリスタルルームは、NYのソーホーをイメージして壁の一部の塗りを剥がし、レンガが剥き出しになっています。天井から吊り下がる重厚なシャンデリアや大理石の暖炉とは対照的なカラフルな椅子とバカラのグラスがポップで素敵!壁の一部はバーカウンターと同じくガラスのカーペットのようになっていて、ディナータイムは毎晩違う色のライトを当てるそうです。個室もあり、和紙作家の堀木エリ子氏とバカラがコラボレーションして制作したシャンデリアが吊られています。
メニューを見つつ、グジェール(塩味のシュー)が美味しくてシャンパンをお代わり。バカラのグラスは優雅な気持ちにしてくれますね♡ お昼だったので日替わりのランチメニューにデザートを付けました。
前菜はシャンピニオンのヴェルート。クリームが乗ったスープ皿にスープを注いでくれます。サーヴィスのお兄さんがワインを詳しく説明してくれたのに、彼のおすすめのサンセールはシャンピニオンに合わない気がしてシャルドネを選んでしまいましたが、嫌な顔ひとつせずとてもに感じが良い方でした。
メインは鴨のコンフィのアシ・パルマンティエ。鴨のコンフィを使ったアシ・パルマンティエは料理学校で作ったとき、脂でギトギトの鴨の上にさらにバターと生クリームでベタベタのマッシュポテトを乗せたため、試食後は胃もたれして以来口にしたことはありませんでしたが、久々に食べたクリスタルルームのアシ・パルマンティエは量も丁度よく重くなくて美味しかったです。ワインはお兄さんがオススメのピノ・ノワールを美しいマッセナのグラスに注いでくれました。
デザートはまたもお兄さんオススメのミラベルのスフレ、ではなくフランボワーズとホワイトチョコレートのムースを(^_^;)
バカラはミラベルの産地のロレーヌ地方で産まれたので、レストランのスペシャリティーもミラベルのスフレなんですが、ミラベルが苦手なのですみません・・・。
食後は展示の見学。特別に美術館の方が説明してくださることになり、ひとつひとつのグラスについて作り方や由来などを解説していただいたおかげで大変有意義な見学になりました。
特に8人の署名人が愛用したグラスや食器が展示されている最初の部屋には感激しました。ひとつめは緑色の美しい繊細なグラスが美しいグレース・ケリーとレーニン大公がオーダーしたモナコ公国の紋章付きのグラス。ふたつ目はRF(République Française)と刻まれた白ワイン用だけがピンク色のグラスが可愛いエリゼ宮のグラス「ジュヴィジー」。3つ目はジョセフィーヌ・ベーカーが結婚したときにオーダーした薄く口当たりの良いグラスと四角いガラス皿。4つ目はシャネルが顧客のための食事会を開くときにオーダーしたガラス皿とグラス。6つ目はサルバドール・ダリが愛用したモダンアートなグラス「ナルシス」。7つ目はステム(脚の部分)がなくプレートが四角いコクトーが愛用したグラス。最後はこの館の主人マリー=ロール・ド・ノアイユ子爵夫人が愛用していたシンプルで洗練されたグラス。
エリゼ宮を見学したときの写真です。エリゼ宮で使用されているカットが美しい「ジュヴィジー」
サルバドール・ダリが愛用した「ナルシス」(photo : www.baccarat.fr)
グラスが人柄が表していて面白いです。ダリのナルシスやコクトーのステムがないグラスは個性的。大好きで伝記を繰り返し読んでいるマリリン・モンローやジョセフィーヌ・ベーカーが、プライベートで使用していたのがシンプルな吹きガラスのグラスだったことが意外でもあり興味深くもありました。恵まれない生い立ちから一転し華やかなショービジネスの世界で成功を手にした彼女達ですが、案外派手な世界に染まらずに暮らしていたのではないでしょうか。尤もマリリン・モンローではなく、インテリなアーサー・ミラーがグラスを選んだのかもしれませんが。
壁のクリスタルの時計もマリリン・モンローとアーサー・ミラーがオーダーし、実際に彼らの家の壁に掛けられていたものです。
(photo : www.baccarat.fr)
別の部屋には膨大な細かい作業と時間が掛かるため現在は作られていないというカラーグラスの作品や、日本の皇室のために作られた菊花紋章が彫られたグラスなどが展示されています。下の階は家具やアクセサリーのショールームになっていて、最近は家具の制作にも力を注いでいるそうで脚がキラキラと輝くガラスでできているソファーやベットが展示してあります。ちなみにバーのカウンターも購入できるんだとか。
美術館の方が情熱的に詳しく説明してくださりすごく嬉しかったです。最後にショールームでバカラのグラスでエスプレッソを飲みながら、どこが一番興味深く感じたか訊かれたので、8人の人柄や人生が表れたグラスについて感じたことをお話ししたら「あなた、詳しいわねぇ」と驚かれました。伝記を読む趣味が思わぬところで役に立ったようです(笑)
レストランも美術館の方もとても親切で食事も美味しく、素晴らしい時間を過ごすことができました(^o^)
家に帰って真っ先にしたのが、空になったレミーマルタン13世のクリスタルボトルの埃を払うこと。美術館の方に「絶対に捨てちゃダメですよ!」と言われて、磨いて棚に飾りました。
Musée Baccarat : 11 Place des Etats-Unis 75116 Paris
http://www.baccarat.fr
https://www.cristalroom.com
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