「フランス人の胃袋」ランジス市場をパリで体験
先月のことになりますが、週末にグラン・パレでランジス公益市場のイベントが開かれました。パリ郊外にある世界一大きな中央市場として有名なランジス市場を体験できるまたとないチャンス!食関係の知人達も出店していることもあり行ってきました。
数年前、料理学校に通っていたときに授業の一環として先生に引率されて真夜中に行きましたが、当然プロの取引が行われているので楽しめるという雰囲気ではなく、真冬でものすごく寒かったのだけを鮮明に覚えています(^^;;
でも今回は一般の人々にランジスの雰囲気を味わってもらうイベントなので、食品の販売だけでなく料理スタンドやコンフェランス、子供向けのイベント等も充実していて、グラン・パレの中に入るやいなや美味しそうな匂いが漂っていました。
まずはギオームに挨拶しようと、マダガスカルのスタンドへ。Mr. ギオーム・ゴメスはMOFの称号を持つ料理人で、エリゼ宮のグランシェフです。MOF通称 ”モフ”とは国家最優秀職人の称号のことで、3年に一度開催されるコンクールで選ばれます。あらゆる技術職にMOFがあり、実はエステティシャンにもMOFのコンクールがあるのですが、とりわけ料理の分野ではMOFを取ることがその後の人生を左右する重要な意味を占めるのです。MOFの料理人はトリコロールカラーの襟のコックコートを着ているので、見たことのある方も多いと思います。
なぜマダガスカルのスタンドに彼の写真があるかといえば、マダガスカルに設立されたホテル/料理専門学校に彼が関わっていて、スタンドや書籍の売り上げがマダガスカルに寄付されるからです。
遠くからでも目立つ人だかりと長蛇の列の向こうに大きな体のギオームを発見。すごい人気!彼は社交的なので、ひとりひとりと話しをしてサインだけでなくメッセージも書いてあげていて皆んな大喜びしていました。
私が料理するときしょっちゅう手に取るのが彼の本です。料理の工程が細かく写真付きで説明されていて、基本のフランス料理が失敗なく美味しく作れるだけでなく、出汁の取り方から肉や野菜の切り方、旬の食材、ナプキンの畳み方まで解説されていて、レシピ以外の予備知識も増える濃い内容です。
昨年新しい本が出版されたとき、サインと長いメッセージを書いてくれたため、汚すのが嫌で後でもう一冊買い足して、使用用と観賞用の2冊持っているほどのお気に入りです。
会場は、肉屋、魚屋、野菜、果物などのコーナーに分かれていて、食に関するMOFが大集合。肉屋のMOF、魚屋のMOF、青果のMOF等の店舗が出ていて全てではありませんが一部購入することができます。
今やすっかりフランスで「Wagyu」として定着した日本の和牛もクルクル回るガラスのショーケースに陳列されていて、珍しそうに大勢の人が写真を撮っていました。
鶏は、ランジスでは頭付き羽付き。
知人の魚屋MOFが自ら海から引き上げたというブルターニュのジラルド産の牡蠣。サイズはNo.3なので小粒ですが悶絶する美味しさ。
キノコのスタンドで、大好物の黒いキノコ、トランペット・デュ・ラ ・モー(Trompette de la mort)を沢山購入。日本語に訳すと「死者のトランペット」。火を通すと真っ黒になりますが、味が濃くてすごく美味しいのです。
エリンギにしめじ、えのき、椎茸もある!しかもえのきとしめじはワンパック1ユーロ。安い!フランス人は皆んな熱心に食べ方を質問していました。パリのアジアスーパーにも置いてありますが、香りが薄くて美味しくないので殆ど買うことはないのですが、青果MOFに勧められて半信半疑で買って大正解!自宅に戻って料理したら、香り高くてシャキシャキの食感でした。
最後は、普段はシャンパーニュ地方で青果店を営んでいる青果MOFのパトリスのスタンド。毎年復活祭のときに、何ケースもの野菜と果物をプレゼントしてくれる親切な人です。この日はりんごと洋ナシのみの出店。びっくりするほどの沢山の種類があり、どれを選んでよいか分からないと迷っていたらお勧めを詰めておくよと、ダンボールに一杯のりんごと洋ナシを詰めてくれました。
実は洋ナシはあまり好きではないのですが、彼のくれた洋ナシを一口かじって大ショック。洋ナシってこんなに美味しかったの??? MOF恐るべし。
農業国のフランスの食の豊かさを感じたイベントでした。さらにMOF称号者の凄さも実感。
グラン・パレは来年の12月から2023年3月までリノベーションの為に閉まるそうです。ランジスの方が、リノベーションの前か後にもう一度イベントを開きたいと仰っていたので、次回の開催を楽しみに待ちたいです。
ARCHIVE
MONTHLY