文化遺産の日⭐︎大統領官邸のエリゼ宮
19・20日の週末はパトリモワンヌ(文化遺産の日)でした。この日は普段は入れない政府関係の機関や施設が一般公開されたり、美術館が入場無料になります。例年と違うのは、新型コロナウイルス感染症の流行のために多くの施設が直前に公開中止になったこと、そして延期されたツール・ド・フランスの最終日がパトリモワンヌと同日の日曜日になったことです。
公開中止が囁かれていたエリゼ宮が一般公開することを発表したのはパトリモワンヌの5日前。予約制で例年に比べて入場できる人数を大幅に制限するということで、毎年待ち時間が数時間も当たり前というのが信じられないほど人が少なかったです。
見学者が最初に足を踏み入れるのはポンピドゥ大統領のサロン。ポンピドゥセンターの建設に力を注ぎ、現代アートに造詣が深かったポンピドゥ大統領のサロンに続くダイニングは、今年は絵とテーブルが見事にコーディーネートされていて、今回の見学した部屋の中で一番気に入りました。
伝統的な装飾の中に現代アートが組み合わされた部屋が多いのですが、”この部屋はルイ15世の公妾だったポンパドール夫人の化粧室として使われていました”などの説明書きを読むと、ベルばら世代の私としてはワクワクする!
「このオブジェいいなぁ」という単純な感想の私とは違って、ジュエリークリエイターの友人は「これは誰々の作品よ」と感激していました。同じように見学していてもアートの知識があるとエリゼ宮はもっと興味深い場所なんだろうな。以前見学したときに知人が連れて来たムッシューが「何だこれ。子供部屋の家具みたいだぜ」と馬鹿にした鳥のテーブルは、クロード・ラレン(Calude Lalanne)という自然や動物を模した作品で有名なアーティストの作品だと教えてもらいました。あのとき感じ悪い人だと思ったけれど、ぐふふ、己れの無教養を晒していたのねー(^m^)
一番人気はもちろん大統領執務室。前日に見学した友人が、マクロン大統領気分でポーズをとる凛々しい息子君の写真を送ってきてくれました(^o^)
シャンデリアを磨く係の者がいると聞いたことがあるけれど、ピカピカに磨きあげられたクリスタルガラスが眩しい。一体エリゼ宮にはシャンデリアがいくつあるんだろう?!シャンデリアもオブジェも埃ひとつないし、掃除のことを考えるだけでも気が遠くなる作業だ・・・。
見学の最後の部屋は、大統領の就任式や晩餐会が行われる豪華な大広間。宮殿の家具や内装の修復作業に携わる職人達の実演を見ることができたり、代々の大統領が着用した衣類、晩餐会のテーブルが展示されていました。
映画の中でしか見たことがないような時代を感じさせる外套や帽子。きちんと保管されているんですね。
毎年とても楽しみにしているテーブルの展示は、生演奏付きで空想で晩餐会の気分に♪そういえば、友人は各部屋にいる制服姿の軍の男性が素敵だと目を♡♡にしていたけれど、フランスの制服は色遣いがお洒落で着るだけでいい男度がグッと上がる感じです(笑)
シミが目立たないように濃い色のナプキンを使う我が家とは違い、テーブルクロスと同色の白や淡い色に繊細な刺繍が施されたナプキン。そして美しいセーブル焼きの陶磁器、バカラやサンルイのクリスタルガラスなどテーブルアート好きには堪らない世界です。セーブル焼きの陶磁器はセーヴル釜から借りているのだそうですが、その殆どの食器は1800年代から借りているというから驚きです。つまり以来割れずに使われ続けているというわけ。昨年の見学のとき、シルバーカトラリーや食器の保管専門のムッシューが、30年間勤務して割ったお皿は2枚だけと言っていたけれど、そんな希少価値の高いお皿を割ったらさぞかし生きた心地がしないだろうなぁ・・・。
手入れを重ねて今も現役で使い続けられているのは調理器具、テリーヌ型やお菓子の型も同様です。例えば手前の片手鍋は1845年、その横の野菜用ソテーパンは1865年と製造年が刻印されています。
最初はコロナウイルスを考慮して少し迷ったのですが、やっぱり来てよかった!エリゼ宮は大統領官邸でありながら美術館さながらに家具や絵画・アート作品、そして実演内容が工夫されていて、何度来ても新しい発見があります。フランスの政治と装飾美術の歴史、伝統を重んじるフランス文化を感じることができる一度は訪れる価値のある場所だと思います。
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