CHICHI PARIS ~パリに住むエステティシャンのblog~

お宝発掘は難しい?!ヴォージュ広場のブロカント

ヴォージュ広場のブロカントに行ってきました。8月末にバカンスから戻ってきたら街路樹には枯れ葉が舞い落ちて、秋の気配が近づいていると思っていたら、9月に入った途端に夏の暑さがぶり返して、空は高いのに気温は夏のように汗ばむ陽気でした。

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この日は半分以上がシルバー製品の出店で、今回のブロカントは当たりだったとすっかり嬉しくなりました。パリに住み始めたときに、クリストフルのブティックで「スパトゥール」というシリーズを12人分衝動買いして、その後も少しずつ買い足してずっと大切に使ってきたのだけれど、間違って捨ててしまったり引越しの際に紛失したりして1本欠け、2本欠け・・・と今では25本位欠けている。不足している物や、持っていないサーヴィス用のスプーンやフォークなどが見つかればぜひ買いたい。

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何でもかんでも買っていたのではキリがないのがブロカント。でも、他の物に目移りしてしまうのもブロカント。まずは色んな店をまわって下見からスタート。

ティーポットの注ぎ口に差し込む昔ながらの茶漉を見ていたら、背後からパートナーの声が。「今どきそんな物は使わないでしょ」「ホテルのアフタヌーンティーで使ってたよ」「ふん。ホテルでアフタヌーンティーしているのはツーリストか外国人だけ。普通のイギリス人ですらもうアフタヌーンティーなんてしない」ムム。可愛いから見てるだけなのにそんな言い方しなくても・・・。

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その後も、手に取るもの全てを片っ端から「本当に今それが必要か?」と訊いてくる。骨つき肉を切り分けるときに骨に差し込んで固定するネジ付きの道具を見つけて「復活祭の子羊用に使えるね」と言うと「それは肉を切り分けるサーヴィス係が使う物だ。座っている人は使わない」と冷たい答え。

前から欲しいと思っていた、テーブルに落ちたパン屑を掃除するためのダストパンを手に取ったら「料理の皿を変えるときに サーヴィス係が使うんだよ。自らパン屑を掃除して、皿を変えて料理をよそって、それから食べ始める人なんて見たことない。サーヴィス係がいない我が家には無用の長物だね」とバッサリ。

サーヴィス用の大皿を安くしておくと言われて飛びついたら「それはビュッフェ用。取り分ける人もいないのに、狭い家でビュッフェでもするつもり?」あのね〜(怒)いちいちサーヴィス係だの使用人だのうるさいよ!!「あなたが我が家のサーヴィス係をすればいいんじゃないの?!」と、段々と険悪ムードに。

それならばと、食事の途中にナイフを置くカトラリーレストを見ていたら「それも現代では使わない代物だ」「でもソースが付いたナイフでクロスが汚れないし便利じゃない?」「使ってるレストラン見たことある?」「ない・・・」「ほらね。食事中はカトラリーはお皿に置くし、料理が変わるたびにカトラリーとお皿は変えるんだから、クロスに汚れたカトラリーを置く瞬間はない」と、普段の食事は前菜とメインを同じナイフとフォークで食べているくせにうんちくを傾ける。実はカトラリーレストを持っていたのに、"1年間使わなかったものは不必要"の法則に従って捨ててしまって後悔しているのだ。「いつも安易に買って安易に捨てて、無駄遣いばっかりしているからお金が貯まらないんだよ」ムカー!

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ふと、鳥の柄のナプキンホルダーとお揃い同じ柄のエッグスタンドに目が引き寄せられました。1個10ユーロ。すると彼がおもむろに手に取って、それから親指と人差し指でカツンと弾いて一言。「 軽い。シルバーメッキがものすごく薄い」

シルバーのカトラリーといっても、メッキを施したシルバーコーティングと銀の含有率が高いスターリングシルバーでは全く価値が違う。もちろんスターリングシルバーはシルバーコーティングの何倍も値が張る。エルキュイやクリストフルのような有名ブランドでも必ずこの2種類があり、殆どの人が持っているのはシルバーコーティングだと思う。ノーブランドだと、メッキがさらに薄いので軽いしすぐに禿げたり変色するのは当然だけど10ユーロに品質を求めてもねぇ?ちょっと人混みの中で離れた隙に、サッと買って「買っちゃった!」と言ったら「 ・・・あのね、動物の柄のナプキンリングやエッグホルダーは、赤ん坊のバテム(洗礼式)用で、大人が使う物じゃないんだよ」と何処までも全否定の姿勢を崩さない頑固な彼なのでした。

ブロカントってもっと和気藹々と掘り出し物を見つけて楽しむものだと思ってたけど、バッサバッサとしらみつぶしにケチを付けてくる人が一緒だとものすごく疲れる・・・。

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道草をしたけれど気を取り直して、本来の目的のクリストフルの店に戻ると、ブロカントではあまり見かけないチーズナイフがシリーズ毎に揃っている。90〜100ユーロのところを80ユーロにまけてくれると言うので、迷うことなく「これください!」と店のムッシューに差し出した瞬間に彼から鋭い待ったが掛かった。もういい加減にしてよ〜。すると「正規の値段で80ユーロ位だから、ちっとも安くない」と冷静な一言。へ?そうなの? ムッシューの顔が曖昧な表情になっていくのを見て、ちょっと待ってとクリストフルのHPを確認したら本当に82ユーロでした!

危うく騙されるところだったのかしら。もしかしたら、パリのブロカントはこれが普通なのかな? 何はともあれ、おかげで中古品を正規の値段で買わないで済んで、辟易していた「無駄な物は買うな。目利きじゃないんだから本店で新品を買え」という彼の意見と彼の態度に対するイライラがやや鎮まったのでした。

***

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帰る途中に、セーヌ川沿いに並ぶ本屋で彼が立ち止まりました。視線の先には過去のミシュランガイドが。「 ◯◯年(彼の生まれた年)のはありますか?」と店のムッシューに訊いている。「いらっしゃい!1冊50ユーロです」

えーー!ここで買うの?以前テレビ番組で、セーヌ川沿いの店で売られているフランス人画家が描いた風のパリの風景画やポスターの殆どが中国で描かれたものか、中国の会社が作成したコピー商品だと知って以来、セーヌ川沿いに並んでる本やポスターを売っている店はツーリストをぼったくる店だと思い込んでいた(^_^;)

驚いている私に「◯◯年(私の生まれた年)も下さい」「私のはいらないよ。3年しか違わないから内容殆ど同じだし、掲載されている店はもう閉店しているだろうし」と断っているにもかかわらず、さっさと私の生まれた年の本も購入。2冊で100ユーロ。ちなみに下の写真のミシュランマンの足もとに置いてあるのが1900年の初版の複製で、オリジナルは最近2万6千ユーロ(約334万円)で落札されたそうです。1900年前後の建物なんてフランスには沢山あるんだから、屋根裏部屋や地下室を探せば初版の1冊や2冊出てきそうに思うけれども今ではとても貴重なんだとか。

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10ユーロや80ユーロのカトラリーに目くじらを立てて反対したくせに、中古のミニュランガイドに100ユーロとは。「それこそ無駄使いじゃないの?」と言う私に対して「これは価値があるよ。そういえばギ・サヴォワのレストランには初版から全巻揃ってた」だって。ギ・サヴォワはこの店の目と鼻の先だし、足りなかったらすぐに買えるもんね(笑)人の価値観って本当にそれぞれ違うもんなんだなぁと感じた一日でした。

chichi

立神詩帆 / Shiho Tatsugami
2002年渡仏。エコール・フランソワーズモリスで学び、エステティック・コスメティックCAP国家資格を取得。2011年からパリ7区でエステサロンCHICHI(シシィ)を自営。All About のフランス流美容ガイドとして、パリジェンヌから学ぶ美容情報やライフスタイルに関するコラムを掲載中。
好きなものは、フランスの食文化、1日の終わりのアペリティフ、アルゼンチンタンゴ、旅。

www.chichiparis.com
https://allabout.co.jp/gm/gp/1693/
Instagram: @chichi_paris7

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