CHICHI PARIS ~パリに住むエステティシャンのblog~

33年の歴史に幕を閉じる老舗レストラン「ル・ペール・クロード」

パートナーがエリックと電話を話した後で言いました。「Le père claude(ル・ペール・クロード)が今月末で閉店するんだよ。だから日曜日にエリックが僕らをランチに招待したいって」Le père claudeはフランス人なら一度は聞いたことがある、15区のラ・モット=ピケ=グルネル駅の側にある庶民的な料理を良心的な値段で出すレストランです。フランス人なら目がないリ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺)、ブーダン・ノワール(豚の内臓や血の腸詰め)、ロニョン・ド・ヴォー(仔牛の肝臓)のような内臓料理が名物で、シラク大統領の大好物がここのテット・ド・ヴォー(仔牛の頭の皮や脳みその煮込み)であり、足繁く通うためル・ペール・クロードが ”シラク大統領の食堂” と呼ばれていたのはあまりにも有名です。

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日曜日ル・ペール・クロードに着いて、エリックと挨拶のビズ。ビスは頬っぺたを重ねてチュッチュッと音を出すフランス人の挨拶ですが、コロナでとんとご無沙汰だったので新鮮に感じます。前菜にテリーヌやハムの盛り合わせを頼んで雑談していたら、「ジョワイユーアニヴェーセー!(お誕生日おめでとう)」と運ばれてきたのが、シャンパンと大きな花束!添えられたメッセージカードにはエリックからの言葉温まるメッセージが書かれていました。驚く私にパートナーが顔を近づけてきて「昨日が君の誕生日だってエリックに言っておいたんだよ。エリックのことだからきっと何かしてくれると思ってね〜」と囁いた。まぁ、なんて厚かましい・・(汗)

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エリックはル・ペール・クロードのパトロンでありシェフでもあるクロードの親友であると同時に、一時期は仕事のパートナーでもあり、そして何より1988年のオープン以来の顧客でエリックにとってもル・ペール・クロードはなくてはならない食堂なのだ。クラシックカーの愛好家なのでたまにこんな車で乗り付けてくる(写真上)。熱いハートを持ち、閉店が決まってからは毎日ここで食事をしているという優しさが溢れるムッシューです。

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壁に飾れた写真は33年の歴史の物語。先日亡くなったジャン・ポール=ベルモンドが通っていたこともよく知られています。必ずしも高級料理店や流行りのフュージョン料理の方が美味しいとは限らない。セレブも庶民もフランス人が最後に食べたいと願う料理、ほっとする味は舌が慣れたフランスの家庭の味なのでしょう。

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さて、私が注文したのは地鶏のローストに旬のジロール茸のソテー。レストランに入るとすぐ目に入る、いつもクロードが料理をしている鉄板の奥でくるくる回るロースターで焼かれた地鶏は、皮がパリッと中はしっとりとしてすっごく美味しい。大好物のジロール茸は、香りと歯ごたえがあって口に入れるとすぐに質の良さが分かります。

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そして3人で分けようとカエルのもも肉のソテーも追加。フランスではカエルは魚屋で売られていますが、冷凍のカエルを使用しているレストランも多いとか。もちろんこれはボルドー産のフレッシュなカエル。味は鶏肉に似て淡白ですがシャキシャキした食感です。

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私にはカエル料理は馴染みがないし細い骨も多くてそれほど好きではないけれど、フランス人でカエルに目がない人が多く、あっという間にこんな状態に↓ニンニクとパセルが効いていて、一度食べ出したら”やめられない とまらない"のがカエルなのだそうです。

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この日は誕生日のランチをしているテーブルが他にも2つあり、さっきから「ジョワイユーザーニヴェーセー〜♪」とハッピーバースデーソングと共に花火を刺したケーキや花束を持ったウエイターが厨房とテーブルを行き交い、その度に店の客もウエイターも皆んなで歌って和気あいあいとした雰囲気でした。そして、料理がひと段落したクロードは、食事に来ていた写真週刊誌「パリマッチ」の記者達に挨拶していました。

前日も沢山食べて飲んでいたので、デザートはパスしてエスプレッソを飲んでいたら、再び聞こえて来たのが「ジョワイユーザーニヴェーセー」「ジョワイユーザーニヴェーセー シホ〜♪」ん?!そして、花火をテープで貼り付けたカルヴァドスの大瓶とシャンパンを持って近づいてくるクロード。わーーーーー、嬉しい〜!!!てっきり最初の花束で終わりだと思っていたら、2度目のサプライズ。店にいた人皆んなが歌ってくれて感激しました!

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「デザート食べないの?おーい、りんごのタルト持ってきて!」とウェイターに言って、クロードも私達のテーブルに合流してシャンパンで再び乾杯。13歳から見習いとして働き始め、ポール・ボキューズのレストランで料理人として働き、1988年に独立してル・ペール・クロードを開いてからは、週7日毎日厨房へ立ち、夜中の2時3時まで働いて翌朝9時には店に出る日々を過ごしてきたこと。食材はランジス市場へ必ず行き、目で確かめて仕入れること。シンプルな料理だから手を抜かないこと。思い出話をしながら「女房の顔をまともに見たことがないよ」と笑って言うけれども、33年もの長い間、舌が肥えたパリジャンや要人達に愛される店を切り盛りしてきた努力や情熱は想像を絶する。「今の若い料理人でこんな生活をしたい人はいないよ。時代が変わった」と言う言葉には重みがありました。

が、それにしてもだー!!食べ終わった途端にウェイターのカルロスが「はーい、どうぞ!」と目の前に新しく置くりんごのタルトと、飲み干した途端に注がれるシャンパン。まるで椀子そばのように、エンドレスで続くタルトとシャンパンに酔いが回って体も頭もフワフワしてきた頃・・・。

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「じゃ、夜のサービスの前の夕飯食べるから、あっちのテーブルへ移動しよう。一緒に食べて行きなよ」

もうお腹がはちきれそう。そして、再び新しいシャンパンの栓が抜かれて、カルロスも一緒にテーブルについての食事タイム。エリックとパートナーも、さっき食べたばかりなのにチキンローストにぱくついている。どんな胃袋しているんだ?

10月末にクロードが引退して店がクローズした後は、この店の営業権を買ったイタリア料理店に変わり従業員達は引き続き新しい店で働くそうです。ここで長年働いてきたカルロスは、職場の環境がガラリと変わってしまうしレストラン業は家族と一緒に過ごす時間を取ることが難しいので、そのうち転職を考えたいと話していました。働き者のパトロンには働き者の従業員がついてくる。彼にとってクロードの店は安心して働ける大好きな職場だったそうです。

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最近長年続いた老舗が相次いで閉店しています。不況やコロナの影響が大きいのは言うまでもありませんが、そこに加えて世代交代の時期に差し掛かっているのでしょう。近々エリックが知り合いを集めて食事会を開くので、ル・ペール・クロードでの名残惜しい最後の食事を堪能したいと思います。

Capture_d_e_cran_2020-12-06_a_17_02_19.jpgのサムネイル画像

https://www.lepereclaude.paris

Adresse : 51 Avenue de la Motte-Picquet, 75015 Paris

chichi

立神詩帆 / Shiho Tatsugami
2002年渡仏。エコール・フランソワーズモリスで学び、エステティック・コスメティックCAP国家資格を取得。2011年からパリ7区でエステサロンCHICHI(シシィ)を自営。All About のフランス流美容ガイドとして、パリジェンヌから学ぶ美容情報やライフスタイルに関するコラムを掲載中。
好きなものは、フランスの食文化、1日の終わりのアペリティフ、アルゼンチンタンゴ、旅。

www.chichiparis.com
https://allabout.co.jp/gm/gp/1693/
Instagram: @chichi_paris7

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