
春の到来を祝うイースターの食卓
日本人が桜を見て春の訪れを感じるように、フランス人はパック(イースター、復活祭)の週末が近づいてくると春を感じます。そしてパックを祝う食卓に欠かせないのがジゴ・ダニョー(子羊のモモ肉)。キリスト教文化が根強いフランスでは、パックの翌日の月曜日に救済の象徴である子羊の肉を食べる習慣があり、アニョー・パスカル(Agneau Pascal)またはアニョー・ド・パック(Agneau de Pâques)と呼ばれています。
フランス人はパックの食事はノエルと同じくらい大事にしていて、料理好きのパートナーも近所のお肉屋さんではなくわざわざ遠くのお肉屋さんに頼むほどの気合いの入れよう。MOFと呼ばれる国家最優秀職人に選ばれた八百屋さんにアスパラガスを注文し、MOFの魚屋さんに牡蠣を注文。さらにMOFのシェフである友人から料理のアドバイスをしてもらい、3日前から夜中に子羊の首肉をコトコト煮てスープをとって準備していました。
さて、友人達が到着したらまずは食事前のアペリティフから。「 ジョワイユーズ・パック!(復活祭おめでとう)」とシャンパンで乾杯。シャンパンのお供は生牡蠣とArnaud Nicolasの新作ポークとフォアグラと林檎のパテオンクルート。アルノーさんも食肉加工のMOFで、ここのパテオンクルートは本当に美味しいです。
前菜は毎年同じ物を食べている気がするけれど、春の訪れといえば初物のホワイトアスパラガス!アペリティフで皆んながお喋りしている間、キッチンでかちゃかちゃと泡立て器で卵黄とバターをかき混ぜている音が聞こえていたオランデーズソースのイエローが春の訪れを感じさせてくれます。
パートナーがジゴ・ダニョーが運んでくると「おお〜」と歓声があがりました。アペリティフに出すように頼んだラディッシュがなかったと思っていたら子羊に添えてありました。〇〇(MOFのシェフ)に聞いたら、パックの子羊にはラディッシュを他の野菜と一緒に添えるべきだと言われたそう。ピンク色が加わるとぐっと華やかになって美味しそう!
他には、じゃがいものソテーと、フラジョレという小さな薄緑色の豆を子羊の首肉でとったスープで煮込んだもの。フラジョレは豆が成熟する前に摘み取るので、クリーミーで柔らかくてトロッとしていて成熟した豆よりも美味しいです。子羊とこのフラジョレの煮込みの組み合わせは昔ホテルプラザアテネのシェフが考案した料理だそうですが、脇役の割りには時間がかかるので特別なときだけ作ってくれるご馳走です。
母乳だけで育った子羊の肉は柔らかくてほんのりミルクの香りがすると言われるけれど、パックに食べる子羊は本当に大馳走だと思います。友人が持って来てくれたサン・テミリオンの赤ワインも美味しくて、ほっぺた落ちそう。
デザートも春満載。友人達セレクトのマレ区にある超人気サロン・ド・テBontempsのベリーのケーキとラルマンディエ・ベルニエのブロン・ド・ブロンのシャンパン。2回行って、2回ともケーキが売り切れていたので、ようやく念願叶って嬉しい。中に挟んであるサブレがすごく美味しいと思ったら、このお店はサブレで人気に火が点いたと聞いて納得。バターの風味たっぷりで、クリームに挟まっているのにサクサクです。シャンパンを飲みながら甘酸っぱいベリーを食べるのは、なんて至福のひとときなんだろう。
賑やかな食事は楽しいな。いつも連絡取り合っているので感じないけれど、彼らに最後に会ったのは去年の秋頃。コロナ以降、人に会う機会ががめっきり少なくなっていて、去年と一昨年のパックは家でふたりだけで過ごしました。2年ぶりに友人達とパックを祝って、ようやく元の生活に戻ったと実感しました。春到来!
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