
アルザス料理は美味しい。
パリで主流になりつつあるバターやクリームの量を減らした軽い料理とは対極に、厳しい冬を乗り切るために身体を温めお腹に溜まる煮込み料理がアルザス料理です。一皿の量もパリのレストランの2〜3倍はあろうかというほど量が多い。
ストラスブールに住んでいたことがあるパートナーはアルザスに友人が多く、皆んなよく食べよく飲む。そして体型も高身長でがっしりどっしり、縦にも横にも大きな人が多い。初めてアルザスの友人宅に招待されたとき、パリではまず見ない大きな人達に驚き、次に出て来た料理の量にさらに驚き、食事の途中で向かいに座っていたお父さんが突然バタンと後ろにひっくり返ったので「貧血?!もしかして脳梗塞?」と心配したら、なんと体重の重みで椅子の脚がポキンと折れたのだと分かったときは驚愕しました。そんな私を他所に、椅子を取り替えて何事もなかったかのように食事が続き、後から聞いたらこういうことはたまにあるというので衝撃を受けました。
そんな大きな人が多いアルザスの料理といえば、代表的なのがシュークルートです。発酵させた塩浸けキャベツとソーセージや塩漬け肉と蒸し煮にしたもので、ホースラディッユやマスタードを付けて頂きます。あまり発酵しすぎたキャベツよりも、まだシャキシャキ感が残るくらいの発酵が浅目のキャベツが好きで、今回アルザスで食べたシュークルートはキャベツの発酵具合が丁度良くて、パリのお肉屋さんで買うシュークルートよりもずっと美味しかったです。
そしてもうひとつ有名な料理が、アルザス特有の陶器にお肉と野菜を入れて、上からじゃがいもで覆い、長時間オーブンで火を入れる煮込み料理のベッケオフ。以前、前述の友人のお母さんが特大の鍋で大量に作ったベッケオフを食べて感激しましたが、シュークルートもベッケオフも冬に食べる料理で、アルザスではノエルの食卓もベッケオフで、大事なポイントは3種類の肉を入れることだそうです。
牛肉・孔牛肉、ラム肉が入ったベッケオフは、3種類のお肉の旨味が混ざった優しい味でした。
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カイゼルスベルグ村で2泊したホテル Le Chambard には2つのレストランがあり、ホテルの玄関に入るとレセプションの後ろが厨房になっていて、ピカピカに磨かれた清潔な厨房では、ピシッとアイロン掛けされたコック服を着たシェフや料理人がキビキビと働く様子をガラス越しに見ることができます。
ミシェラン2つ星のレストランLa Tablee d'Olivier Nastiではアルザスの食材が使われた洗練された料理を、カジュアルなレストランLa winstubでは素朴でアルザスの風土を感じる力強い料理を頂けます。特にカジュアルなLa winstubは、昔アルザスを訪れたときに気に入り、それ以来他の村に泊まっても必ずここで食事をするほど。今回も二日続けてランチを食べました。
前菜はトランペット・ド・ラ・モーという黒いキノコとジビエの鹿肉のテリーヌ。
これもアルザスならではの、カリカリに揚げ焼きしたジューシーな野生のカエルのもも肉。パリでは魚屋さんにカエルが売っているけれど、野生のカエルってなかなか見かけません。苦手な人も多いけれど、カエルに目がないというフランス人も多く、パリにもカエル専門のレストランがあります。付け合せはシュペッツレというアルザスの生パスタ。
ホテルの壁に沢山の剥製が飾ってあるように、アルザスは山に囲まれた盆地で狩猟が盛んな土地です。
思わず「きれい!」と声を上げた、ジビエの鹿肉とフォアグラとトリュフのパイ包み焼き。
そして、カイゼルスベルグで作られているドメーヌ・ヴァインバックのワイン。アルザスでもパリでも見かけたら絶対に買うし、レストランのワインリストに載っていたら必ず頼む素晴らしいワインです。
美味しい料理に美味しいワイン。もっと色々と食べたいのに量が食べられないのが悔しくて、もっと強靭な胃袋があれば・・と残念に思いつつ、パリに戻る頃には毎度のことながら顔がまん丸になっていました。太ってしまうのが必須な美食の土地です)^o^(
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