
Vous connaissez "CRANACH"?
Luxembourg公園の前を通る度に気になっていた、この絵というか宣伝。
公園内に併設されているリュクサンブール美術館で開催中の"Cranach et son temps"展です。
最初にこの宣伝を見た時は、CRANACH(クラナッハ)って誰?
知りませんでした。
そして昨年、Vous connaissez "CRANACH"?「あなたは、クラナッハを知っていますか?」
そんな見出しの記事を何度か目にしました。
で、先月のフィガロ・ジャポン(パリ特集)の「パリのスクラップブック」を読んで思い出しました!
ドイツのルネッサンスの画家ルーカス・クラナッハ。
彼の名作と言われる「三美神」を持ち主が手放すことになり、ついた値段が400万€
ルーヴル美術館が購入に手を揚げたものの、100万€の資金不足。
そこで一般に寄付を募ったところ、わずか2ヵ月で100万€が集まり「三美神」はルーヴルへ。
それはこんな絵。

という訳で、ルーヴルが欲しがったこの画家の絵をもっと観てみようと行ってきました。
こちらの小じんまりした美術館は年初までしばらく閉鎖されてたので、訪れるのは久しぶり。
美術館のチケットは、こんな感じで展示作品のことが多く、どんなチケットが来るか毎回密かな楽しみ。
結構気に入った
ところで、Lucas Cranach とは、1472年にドイツで生まれた画家&版画家。
Kronach(クロノッハ)の村出身だからCranach(クラナッハ)という苗字がついたそう。
こちらは、自画像。
ウィッテンベルグでザクセン選帝候フリードリッヒ3世の宮廷画家になり、宗教画、史画、神話画など沢山描いたそう。
ずっと宮廷のお抱え画家だったので、経済的にも恵まれフリードリッヒの庇護の下に、描く作品は何でもアリな感があると解説に書いてありました。(たぶん)
活躍した時代が、ちょうどマルティン・ルターの宗教改革の頃。
ルターとは親しく、彼の肖像画はじめ彼の家族の肖像画も多く描いているし、
ルターの息子の名付け親にもなった、と。
ルターが福音書のドイツ語版を出版する際に、クラナッハが経済的な支援をしたり、宗教改革の活動の中で
クラナッハも多くの版画を手掛けて活動をサポートしたと知りました。
こちらは、ルターと奥さんの肖像画
という訳で展示は、フランス語、英語、ドイツ語でタイトルと説明がありました。
ルネッサンスの画家ということですが、ルネッサンスと言えばイタリア!
と、強く思い込んでいた私にはちょっと驚く絵が続きました。
14世紀にイタリアに始まったルネッサンスは、ヨーロッパ全土に広まった強烈な波。
古典を見なおして、更に人間を見なおす、そんな芸術復古の波の大きさはヨーロッパの美術館を
巡る度に強烈に感じていたんだけど、
今日目にしたクラナッハは、それらとは何か違う感じで。
「パリスの審判」は、こんな感じ。
ルネッサンスと言っても、北と南ではだいぶ違ったカタチになってしまったということらしい・・・。
同じ場面を描いても南ではより神秘的だったり、神々しい感じがするのに、クラナッハの描いたものは
人間ぽいというか、時にはアダムの顔が自分の顔に似てたり。
色は暗い訳ではないけど、やっぱりイタリアの華やかな青や赤とは違う印象。
更に印象的だったのは、女性の描き方。
洋服はもちろん、髪型、装飾品などがとても細かく描かれている。
肌質が綺麗で陶器みたい。
ドレスなどは、そのベルベットの柔らかい感じと光沢感がリアルで、
目の前にあるような印象を受ける絵もありました。
上の絵の影響らしく、ピカソがこんな絵を。
それから、同じ名前の息子も画家として成功していて今回一緒に展示されていました。
父の作品は、Lucas l'Ancien(先輩ルーカス=父)、
息子の作品は、Lucas le Jeune(若いルーカス=息子)
と記載されていました。
クラナッハという画家は豊かな教養を持ち、当時の権力者に気に入られ、市長になるなどした上に、
後継者(息子)にも恵まれ、本人も81歳まで長生き、というスゴイ人生だな・・・という感じ。
宗教改革なども含め、当時のザクセンの文化、社会、経済に大いに貢献した人のようです。
ルネッサンスの絵画について、また違った印象を受けるそんな展示でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<Info>
Musee du Luxembourg
19, rue de Vaugiard 75006
Cranach et son temps展は2011年5月23日まで
http://www.museeduluxembourg.fr/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ARCHIVE
MONTHLY